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マリアさま いしい しんじ(著/文) - リトルモア
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マリアさま (マリアサマ)

文芸
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発行:リトルモア
四六判
260ページ
定価 1,500円+税
ISBN
978-4-89815-510-3   COPY
ISBN 13
9784898155103   COPY
ISBN 10h
4-89815-510-3   COPY
ISBN 10
4898155103   COPY
出版者記号
89815   COPY
Cコード
C0093  
0:一般 0:単行本 93:日本文学、小説・物語
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2019年8月23日
最終更新日
2019年8月23日
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書評掲載情報

2019-11-02 朝日新聞  朝刊
評者: 都甲幸治(早稲田大学教授・アメリカ文学)
2019-10-20 東京新聞/中日新聞  朝刊
2019-10-13 毎日新聞  朝刊
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紹介

いしいしんじ
3年ぶりの小説集――
『マリアさま』

2000年~2018年のあいだ、様々な媒体で書きためられた短篇・掌篇より、
「新生」をテーマに、27篇、選りすぐりました。

- - -

森羅万象きらめく、
片隅で掬われた、って、
これは、そんなおはなし。

- - -

動かなくなったトビをぷいと吐きすて、私は再び身構えました。ばさばさとトビたちがはばたく気配がします。私は、もう見えない目でにらみつける。
――「犬のたましい」

本日は、祖父、晴臣をしのぶ会にお集まりいただき、まことにありがとうございます。孫の新子と申します。
――「とってください」

ごほり、ごほり、と濁った咳をティッシュペーパーでうけ、いいかい、と目線でたずね、こちらがうなずくとてのひらの上で紙をひらいてみせた。溶けたチョコレートのような粒々がそこにあった。「土だよ」
――「土」

「こんばん、西の山へいってみないか」横顔をむけたまませせらぎは黙っている。ゴトリ、ゴトリ、水車がまわり、だんだんとそれは、足もとの地面がゆっくり回転する音にきこえだした。せせらぎの手は砧を撫でつづけ、俺はふうと息をつき、川辺を離れた。
――「せせらぎ」

今日みたいにドライブがてら、「おそと」で音を拾って歩く姿を、わたしは物心ついたときから見なれている。十代半ばからは、京町家に泊まりにいった翌朝には、ほぼ決まってわたしを連れ、ケンチさんは「おそと」へでかけた。まるで、かたく閉じかけていたわたしの窓を、外いっぱいにひらくように。
――「自然と、聞こえてくる音」

虎は身を揺らせながら銀座通りを歩いている。歩行者天国ならぬ虎天国である。さすが銀座通りだ、と思う。
――「虎天国」

他、全27篇。「物語」の力、「物語」を読む時間を、大切に思える、一冊です。

著者プロフィール

いしい しんじ  (イシイ シンジ)  (著/文

いしいしんじ
1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。
2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、
16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。
そのほか『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『四とそれ以上の国』『海と山のピアノ』など著書多数。
趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

上記内容は本書刊行時のものです。