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江戸語資料としての後期咄本の研究 三原 裕子(著/文) - ひつじ書房
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江戸語資料としての後期咄本の研究 (エドゴシリョウトシテノコウキハナシボンノケンキュウ)

語学・辞事典
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発行:ひつじ書房
A5判
516ページ
定価 8,800円+税
ISBN
978-4-89476-959-5   COPY
ISBN 13
9784894769595   COPY
ISBN 10h
4-89476-959-X   COPY
ISBN 10
489476959X   COPY
出版者記号
89476   COPY
Cコード
C3080  
3:専門 0:単行本 80:語学総記
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年12月25日
書店発売日
登録日
2019年12月18日
最終更新日
2020年1月8日
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紹介

従来、後期咄本は江戸語資料としての価値を認められることが少なかった。しかし一方で、当時既に古臭さ・尊大さを想起させる「ござる」、婉曲な拒絶を表す「一昨日来い」等の様々な実例が見られ、市井の会話が得られる資料と言える。本書はこれらの実例から〈表記変化を促すもの〉〈類型化と使用層の変化〉等、表記・語彙・語法他の視点から、江戸語が上方語的要素を脱し、独自の発展を遂げた変化の要因を論じるものである。

目次

凡例
はじめに

序章  
1. はじめに 
2. 用語と時期区分 
2.1 「咄本」の定義 
2.2 江戸語の時期区分 
2.3 咄本の時期区分 
3. 本江戸と江戸語 
3.1 式亭三馬の「本江戸」・「江戸訛」 
3.2 先行研究の「本江戸」・「江戸語」 
4. 咄本の資料価値の検証と本書で対象資料としたことの意義 
4.1 先行研究における咄本の資料的価値 
4.2 本書における対象資料としての意義 


I 表記変化を促したもの 
第1章 仮名の用法 装飾性から効率性へ 
1. はじめに 
2. 調査の概要 
2.1 資料の選定 
2.2 調査の対象と方法 
3. 字体 
4. 考察 
4.1 促音、拗音における位置に用字の規則性が見られるもの 
4.2 /ha/ /wa/ /ba/ /pa/ を表すハ行の仮名の傾向  (資料1表3)~(資料1表6) 
4.3 /hi/ /i/を表すハ行の仮名の傾向(表は省略) 
4.4 /he/ /e/を表すハ行の仮名の傾向(資料1表7) 
5. まとめ 

第2章 漢字の用法 読み易さの工夫 
1. はじめに 調査の目的 
2. 調査方法と対象 
2.1 方法 
2.2 調査対象とした作品について 
3. 概況 
3.1 調査に出現した語数 
3.2 作品別の使用数 
4. 漢字使用からの分析 
4.1 Ⅰ期からⅢ期の漢字使用の推移 
4.2 作品内容と漢字使用 
4.3 スペース上の制約と漢字使用 
4.4 作品と一字当りの漢字使用回数 
5. 漢字表記語からの分析 
5.1 用の類の表記 
5.2 体の類と固有名の表記 
5.3 形式語の表記 
6. おわりに 

第3章 振り仮名の用法 読解補助の域を超えて 
1. はじめに 
2. 調査の方法と対象 
2.1 先行研究と調査の方法について 
2.2 対象とした作品について 
3. 振り仮名使用の量的な傾向 
3.1 語彙量と振り仮名付記語数 
3.2 作品別の振り仮名付記語数 
3.3 作品別の振り仮名付記字数 
4. 振り仮名の用法 
4.1 漢字の読みを助けるために用いられたもの 
4.2 漢字の読みを決定するために用いられたもの 
4.3 漢字の読みを示すとともに、語を注釈するために用いられたもの
4.4 熟字を訓読みするために用いられたもの 
4.5 話しことばを写すために用いられたもの 
5. おわりに 

Ⅱ 表記からわかること 
第4章 『鹿の巻筆』写本の資料性
 個人を想定する写本・大衆を想定する板本 
1. はじめに 
2. 対象とした資料について 
2.1 資料の概況 
2.2 調査の概況 
3. 観察と分析 
3.1 本文の異同 
3.2 内容の異同 
4. 両写本の頭注について 
5. おわりに 

第5章 語義意識の薄れと付加による表記の変化 「侍」「禿」「灯」 
1. はじめに 
1.1 目的 
1.2 「ま」「は」「ば」行の表記と語形との関係について 
1.3 先行研究について 
1.4 対象テキスト 後期咄本 
1.5 調査対象語 
1.6 「ま」行表記・「は」行表記・「ば」行表記の出現の状況 
2. 各語の表記と考察 
2.1 「ま」行表記が「は」行・「ば」行表記を上回るもの 
2.2 「む」「ぶ」両表記がほぼ同数であるもの 本義に対する記憶の薄れと変化 
2.3 「ば」行表記専用であるもの 機能効率の低さと移行の速度 
2.4 「は」行表記が多かったもの 類型的使用と使用範囲の狭まり 
3. おわりに 
4. 表B【侍】.表D【灯】.表E【禿】.表G【煙】 
5. 【テキスト資料 咄本略解題】 

第6章 /i/を表す仮名遣いと作家の位相の違い 早稲田大学中央図書館蔵本『笑話本集』をもとに 
1. はじめに 
1.1 目的 
1.2 方法と対象 
2. 概要 早大本笑話本集の/i/を表すことのある仮名の調査結果
2.1 考察 
2.2 仮名遣いの傾向性と作者の属性との関わり 
3. おわりに 

Ⅲ 語彙からわかること 
第7章 [相の類]の役割を担った[体の類] 「醜い」から「夏芝居の累といふもので」へ 
1. はじめに 
2. 調査の概要 
2.1 時期の分けかた 
2.2 作者の選択 
2.3 対象とした作品 
3. 分析 
3.1 調査に現れた語数 
3.2 語彙量と概観 
4. 考察 
4.1 各期における品詞分布の検討 
4.2 個別の作品からの検討 
4.3 作品全体に共通して使われる語からの考察 
5. まとめ 
6. おわりに 

第8章 時間の表現を越える「日にち」の語彙 「明後日 御出」 
1. はじめに 
1.1 江戸時代の資料から 『かたこと』『浪花聞書』『御國通辞』 
1.2 現代の資料から 『日本言語地図』 
2. 調査概要 
3. 全体の概況と考察 
3.1 全体の概況 
3.2 考察 
4. おわりに 

Ⅳ 上方語的要素を脱却していく語法 
第9章 ハ行四段動詞と形容詞のウ音便形 共通語へつながる江戸語のウ音便形 
1. はじめに 
2. 先行文献と調査方法 
2.1 『日本大文典』『日葡辞書』の記載 
2.2 先行研究 
2.3 調査方法 
3. 『浮世風呂』に現れたウ音便形の概況と考察 形容詞とハ行四段活用動詞 
3.1 形容詞連用形のウ音便形 
3.2 ハ行四段活用動詞のウ音便形 
3.3 『浮世風呂』における形容詞ウ音便形とハ行四段動詞の使用意識
4. 後期咄本に現れたウ音便形の概況と考察 形容詞とハ行四段活用動詞 
4.1 後期咄本に現れたウ音便形の概要 
4.2 形容詞のウ音便形 
4.3 ハ行四段活用動詞のウ音便形 
5. まとめ 
6. おわりに 

第10章 格助詞「へ」と「に」の使用 座敷芸人の「に」・寄席芸人の「へ」 
1. はじめに 
1.1 日本語教科書の「へ」と「に」 
1.2 先行研究の「へ」と「に」 
2. 調査の方法と概況 
2.1 対象 
2.2 方法 
3. 接続する動詞と格助詞「へ」と「に」の使用傾向について 
3.1 「へ行く」と「に行く」 
3.2 「へ来る」と「に来る」 
3.3 「~へ入る」と「~に入る」 
3.4 「~へ参る」と「~に参る」 
4. おわりに 

第11章 原因・理由を表す条件節 「によって」「ほどに」から「から」の使用へ 
1. はじめに 
1.1 先行研究と調査対象語について 
1.2 調査方法 
2. 概況と考察 
2.1 全体的な考察 
2.2 後期咄本以前の3作品に現れた原因・理由を表す条件節 
2.3 後期咄本の原因・理由を表す条件節 
3. まとめ 

Ⅴ 類型化と使用層の変化 
第12章 助動詞「やす」の衰退 丁寧語から限られた男性の語へ 
1. はじめに 
2. 調査の方法と概況 
3. 各時期における「やす」使用 
3.1 江戸時代前期の作品に見られる「やす」 
3.2 Ⅰ期の作品に見られる「やす」 
3.3 Ⅱ期の作品に見られる「やす」 
3.4 Ⅲ期の作品に見られる「やす」 
4. おわりに 

第13章 「ませ」と「まし」の交替現象 「まし」の流行と「ませ」への回帰 
1. はじめに 
2. 調査の概要 
3. 考察 
3.1 全体の使用傾向 
3.2 出現例から見た分析 
4. 作者からの分析 
5. まとめ 
6. おわりに 

第14章 三笑亭可楽作品の「ござる」 古臭さ・尊大さを表すために 
1. はじめに 
2. 対象とした作品と方法 
2.1 作者 三笑亭可楽について 
2.2 作品の概要について 
3. 調査結果 
4. 作品ごとの検討 
4.1 『山しよ味噌』の出現例 
4.2 『東都真衛』の出現例 
4.3 『新作おとしはなし』の出現例 
4.4 『種がしま』の出現例 
4.5 『身振姿』の出現例 
4.6 『百の種』の出現例 
4.7 『十二支紫』の出現例 
4.8 『新作可楽即考』の出現例 
5. 考察 

第15章 前期噺本の「ござる」 文意を決定する本動詞から代替可能な補助動詞へ 
1. はじめに 
2. 先行研究 
3. 調査資料の概要 
4. 全体的な傾向と考察 
5. 作品ごとの検討と考察 
5.1 『寒川入道筆記』の「ござる」 
5.2 『戯言養気集』の「ござる」 
5.3 『昨日は今日の物語』の「ござる」 
5.4 『醒睡笑』の「ござる」 
5.5 『宇喜蔵主古今咄揃』の「ござる」 
5.6 『武左衛門口伝はなし』の「ござる」 
5.7 『鹿の巻筆』の「ござる」 
5.8 『正直噺大鑑』の「ござる」 
5.9 『軽口星鉄炮』の「ござる」 
5.10 『軽口瓢軽苗』の「ござる」 
5.11 『軽口腹太皷』の「ござる」 
5.12 『軽口福徳利』の「ござる」 
5.13 『鹿の子餅』の「ござる」 
5.14 『口拍子』の「ござる」 
6. まとめ 
7. おわりに 

終章  
1. はじめに 
2. 衰退・消失のパタン 
3. 変化に読み手側の要素が介在したもの 
4. 板元や書き手側の意向が反映したもの 

付章  
三笑亭可楽作「新作おとしはなし」における江戸語 
1. はじめに 
2. 後期咄本の体裁の変化 
3. 概況 
3.1 テキスト 
3.2 考察 
4. おわりに 

付録 早稲田大学中央図書館蔵
「新作おとしはなし」翻刻ならびに注釈 


謝辞 
参考文献 
本研究と既発表論文との関係 
事項索引 
人名索引

著者プロフィール

三原 裕子  (ミハラ ユウコ)  (著/文

東京都新宿区で生育。
1978年早稲田大学第一文学部日本文学専攻卒業、2016年博士(文学)早稲田大学。
現在、早稲田大学大学院、青山学院大学他で非常勤講師を勤める。

〈主な著書・論文〉
『みんなの日本語事典』(分担執筆 2009明治書院)、
『日本語大事典』(分担執筆 2014朝倉書店)、
「後期咄本に現れた「ま」「は」「ば」行表記について」(2001-10『國語と國文学』)、
「後期咄本における振り仮名の使用について」(2006『国文学研究』148集) 他。

上記内容は本書刊行時のものです。