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立憲主義をテーマにマルクスとエンゲルスを読む
- 初版年月日
- 2019年12月20日
- 書店発売日
- 2019年12月20日
- 登録日
- 2019年12月20日
- 最終更新日
- 2019年12月20日
紹介
現在、憲法に基づいて政治を行なう立憲主義を守ろうとする市民と諸野党の共同に、共産主義者も参加している。
しかし「そもそも共産主義と立憲主義は相いれない」という声も聞かれる。
そこで、共産主義の第1人者であるマルクスと彼の盟友エンゲルスに遡り、彼らが自分自身の言葉として「立憲主義」という文言を使っている発言を2人の『全集』から全て洩れなく書き出した1冊。
時系列順及び国ごとに配列し、それらの発言の脈絡を追跡しながら、彼らの立憲主義観――科学的社会主義(共産主義)における立憲主義の意義を明らかにする。
「自由」、「人権」、「権力分立」などの文言が見られる発言も適宜織り込でいる。
序篇では、2人の出生ないし活動開始以前の時代(17~9世紀初期)において、各個人の自由や尊厳を守るために憲法で権力を制限する近代立憲主義が英米仏各国などで成立してきた歴史についての発言をみる。
本論では、2人が活動した同時代(19世紀中~後期)の課題に関する発言を青年期、1848~49年市民革命期、その後の順にみる。
最終篇では、社会主義的未来社会論に関する発言をみる。
現代日本の読者にわかりやすいよう、欧米諸国の当時の写真やイラストを全篇につけ、略年表を巻末につけた。
彼らに違和感や反発あるいは共感、いずれを覚える読者にも参考となるよう、事実として2人が立憲主義に関して残した発言をあるがまま収録した。
目次
はじめに
序篇 近代立憲主義 資本主義の発展の中で自由を求める市民革命によって成立
第一節 資本主義の発展とともに資本家階級が成長し、自由、平等、契約観念も形成
第二節 抵抗権、革命権を行使した市民革命で近代立憲制国家が成立
第三節 ドイツは一九世紀になっても国家的統一や立憲制が実現していなかった
序篇の小括
第一篇 人間的解放を求めた青年期
第一章 絶対君主制のプロイセン支配下で自由と立憲主義を渇望した青春
第一節 「自由を目指す奮闘、発展しつつある立憲主義、貴族に抵抗」──エンゲルス
第二節 「検閲制度の真の根本的治療はその廃止にある」──マルクス
第二章 立憲君主制の第一命題は諸権力の均衡
第三章 政治的解放を前進させ、労働者革命で人間的解放を目指す
第一節 「法哲学批判」──体制の進歩、立法権力と統治権力
第二節 立憲君主制の矛盾を止揚して民主的代議制へ
第三節 政治的解放の限界から人間的解放の完成へ
第一篇の小括
第二篇 一八四八~四九年の市民革命期──民主制と立憲主義実現のために奮闘
第四章 ドイツ三月革命──真の立憲主義か外見的立憲主義か
第一節 近代的な市民社会をたたかいとることがようやくドイツで問題となった
第二節 人民主権か外見的立憲主義か──プロイセン国王がクーデタ
第三節 マルクス達の法廷闘争──立憲主義を根拠に革命的名誉を救う
第四節 プロイセン政府は全立憲主義をまねて茶化す
第五章 フランス──立法国民議会の開会から粉砕までが立憲共和制の生存期間
第二篇の小括
第三篇 熟年期──立憲主義国における合法的な社会発展の可能性を重視
第六章 立憲君主制のイギリス、スペイン、ポルトガル、ベルギー
第一節 イギリス憲法
第二節 立憲主義の破産、苦悶、復活
第三節 立憲主義のサルデーニャ王国主導でイタリアの独立と統一が前進
第四節 ヘッセン侯国の自由主義的な基本法
第五節 イギリス──法定労働日という大憲章を獲得
第六節 ベルギー王国、大陸の立憲主義の模範国がストライキ労働者を虐殺
第七章 民主共和制のアメリカ合衆国──憲法の字句から外れないで奴隷制度を廃棄
第一節 立憲的解決への道を断ち切った南部奴隷州と、憲法を厳守した合憲政府
第二節 革命的な戦争──憲法の字句から外れないで旧制度を廃棄
第三節 アメリカやイギリスにおける社会発展の平和的・合法的進行の可能性
第八章 プロイセン国憲紛争と偽装立憲主義
第一節 プロイセン欽定国憲
第二節 国憲が定めた議会の予算承認なしに宰相ビスマルクが軍拡を強行
第三節 ドイツ諸国の政府はもはや絶対ではなくなり、偽装立憲主義に
第九章 外見的立憲主義のドイツ政府の弾圧に抵抗権を行使
第一節 ドイツ帝国結成――外見的立憲主義
第二節 軍事的専制国家に民主共和制を要求する勇気を(ゴータ綱領批判)
第三節 社会主義者取締法の支配下で抵抗権をしっかり守る
第四節 党は勝利した。社会主義者取締法はなくなり、ビスマルクは失脚した
第五節 労働者階級が支配の座につけるのは民主共和制だけ(エルフルト綱領批判)
第六節 挑発されず、抵抗権も守りながら転覆活動取締法案成立を阻止
第一〇章 オーストリア帝国──外見的立憲君主制から初歩的な立憲主義へ
第一一章 フランス──軍事専制から第三共和制に進んで立憲主義が定着
第一節 現実の専制と見かけの民主主義、外見的立憲主義の軍事独裁崩壊
第二節 パリ・コミューンへの攻撃=外国の侵略者に保護された奴隷所有者の反乱
第三節 マクマオンの反立憲主義
第四節 普通選挙権が欺瞞の用具から解放の用具に転化
第一二章 立憲制の歴史的位置と社会の平和的・合法的発展
第一節 外見的立憲主義、立憲君主制、民主共和制の歴史的な位置
第二節 立憲主義国で社会革命が平和的・合法的に遂行される可能性
第三節 民主共和制は、すっかりできあがっている政治形態
第四節 あらかじめ人民の大多数を獲得して革命権を実りあるものに ……172
第三篇の小括
最終篇 立憲主義という観点から二人の未来社会論を読む
第一節 利潤第一主義という鎖を解く社会主義
第二節 民主共和制はプロレタリアートの執権に打ってつけの形態
第三節 主要な生産手段の社会化と立憲的な配慮
第四節 階級の廃止で決着するまでの国家形態は民主共和制
補論──プロレタリアートの執権論は、マルクスやエンゲルスとレーニンとで異なる
第五節 各個人の完全で自由な発展を基本原理とする、より高度な社会形態
結び 立憲主義 ── 民主主義 ── 共産主義の中心軸を貫く人間解放への希求
年表 ⅰ~ⅵ
上記内容は本書刊行時のものです。