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日本人による水産協力
開発現場をアップデート
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年12月25日
- 書店発売日
- 2023年12月18日
- 登録日
- 2023年6月26日
- 最終更新日
- 2023年12月16日
目次
はじめに
第1章 世界の漁業体制におけるパラダイム・シフト
第2章 水産インフラ整備
第3章 日本式村張り定置網の技術移転
コラム カンボジアの内水面漁業における四半世紀
第4章 JIRCASの水産研究協力-30年間の研究成果概要-
コラム 岡山県日生町の経験と水産協力
第5章 漁業開発への協力:西アフリカの事例
コラム ヤマハ発動機のブルーエコノミー
第6章 漁業振興への協力:東アフリカの事例
第7章 沖縄におけるJICA研修と島嶼国技術協力プロジェクト
コラム スマート水産業
第8章 水産養殖分野での技術協力の今後あるべき変遷について
第9章 養殖開発への協力:中南米の事例
第10章 マレーシアにおける養殖研究
第11章 フィリピン台風被災地における災害に強い養殖技術の導入
第12章 自然災害と水産業
第13章 水産協力とエコラベル~重層的なガバナンスの視点から~
第14章 水産物バリューチェーン
コラム 世界をつなぐ粉モンのアイドル「たこ焼」!
第15章 ジェンダーと水産協力
コラム 和食を通じた国際貢献
おわりに
前書きなど
日本人による水産分野の協力が実施されているが、世間ではあまり知られていない。もっと情報発信すれば、理解者が増え、ポジティブなフィードバックも得られると思う。様々な立場の日本人が、それぞれの思いでユニークな活動を行っている。日本の経験をベースにした適正技術の追求。問題を解決するアイデアの生み出し。現地とのつながりや信頼関係の構築。その仕事ぶりは、日本人の柔軟性を生かした“Made by Japanese”であり、人に寄り添う“Cool heads but warm hearts”でもある。
NHKニュースおはよう日本「変貌する東南アジア」(2023年3月16日放送)が印象的だった。かつて東南アジア諸国は途上国というイメージが強かったが、ここ20年ほどの経済成長でそのイメージはがらりと変わった。インドネシアのように20数年後にはGDPで日本を抜くと見込まれている国もある。そんな中で、日本が貧しい東南アジアを助けてあげるという、言ってみれば「上から目線」の意識はもはや時代遅れである。むしろ共に成長するためのパートナー(対等な関係)へと日本側の意識を変えていく必要がある。
日本人による水産協力に思いを巡らせると、様々な課題があるものの、安堵できる面もある。本書から分かるように、日本人はForではなくWithの協力を展開してきた。地域と人の未来を、共に考え、併走する。日本のスタイルは通用しない。住民ファーストこそが成功のカギである。水産協力の現場で気づく大切なことがある。
日本人の強みと弱みを考察する必要もある。よく言われることは、日本人は現場型である(漁に同行する、海に潜る、漁村で寝る)。魚の食べ方について詳しい。プロジェクトの成果にこだわる。語学が苦手である。相手国政府への食い込みが浅い。次から次へと対象国を変える。本書を読んで、日本人の良さと可能性、改めるべき点を見いだしていただき、水産協力を見直すきっかけとなれば幸いである。
水産協力に求められるスキルも変わってきた。限られた水産資源の高付加価値化。水産業へのIT活用。災害に強い漁業・養殖業。魚食の多様化による栄養改善。水産における男女共同参画。他セクターと連携して行う地域おこし。国際機関及び他ドナーとの協調。水産分野は広く、進展も著しい。だからこそ、良いパートナーシップを築くことが望まれる。
今回、水産協力に携わる22名の専門家からご寄稿をいただいた。読後、産学官民のアプローチを組み合わせれば、水産協力がより充実すると思われた。黒倉壽様、牧野光琢様、関いずみ様から有益なご助言をいただいた。北斗書房の山本義樹様には懇切丁寧なご指導をいただいた。心よりお礼を申し上げる。
上記内容は本書刊行時のものです。