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琉球列島の河川に生息するゴカイ類 佐藤 正典(著) - 北斗書房
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琉球列島の河川に生息するゴカイ類 (リュウキュウ)

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発行:北斗書房
A5判
価格 900 円+税   990 円(税込)
ISBN
978-4-89290-065-5   COPY
ISBN 13
9784892900655   COPY
ISBN 10h
4-89290-065-6   COPY
ISBN 10
4892900656   COPY
出版者記号
89290   COPY
Cコード
C0039  
0:一般 0:単行本 39:民族・風習
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年3月20日
書店発売日
登録日
2022年1月17日
最終更新日
2024年8月25日
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重版情報

2刷 出来予定日: 2022-07-15
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目次

琉球列島の河川に生息するゴカイ類

Iはじめに
II ゴカイとはどんな生き物か
1 環形動物の分類体系
2 多毛類の特徴
3 汽水・淡水域に卓越するゴカイ科
(コラム1)汽水域と塩分の定義
4 ゴカイ科の生殖様式
III ゴカイ類の生息場所としての琉球列島の河川
1 南西諸島の中の琉球列島
2 黒潮に洗われている琉球列島
3 琉球列島の三つの区分
4 琉球列島の河川に生息しているゴカイ類九種
IV ヒメヤマトカワゴカイの二型
1 北半球の温帯に広く分布するカワゴカイ属
2 ヒメヤマトカワゴカイの生息場所と生活史
3 ヒメヤマトカワゴカイの個体群間の遺伝的分化
4 ヒメヤマトカワゴカイのA型とB型
5 種分化の場としての東シナ海沿岸海域
(コラム2)カワゴカイ類の二刀流の「食べ方」
V イトメ
1 日本国内での分布
2 アジア固有の属
3 ユニークな生殖変態
4 イトメの全国的な減少
(コラム3)ベトナムのゴカイ料理
VI ナガレゴカイ属の二種
1 新種記載までの経緯
2 トカシキナガレゴカイの形態と地理分布
3 クメジマナガレゴカイの形態と地理分布
4 二種の生息場所
5 地域個体群の遺伝的分化
6 ゴカイはどのようにして島嶼間を移動するのか
7 新属の創設
VII 人間による環境破壊とゴカイ類の絶滅の危機
VIII おわりに
IX 参考文献

前書きなど

I はじめに
汽水域は、陸と海の境界に位置しており、淡水と海水が混じり合っている所です。ここでは、潮汐による海水の動きや川の水量の増減に応じて塩分や水温が大きく変動します。また洪水などによって物理的な撹乱も受けやすい場所です。したがって、水生生物にとっては、環境ストレスが大きい「過酷な生息場所」と言えます。多くの淡水産種や海産種は汽水域に住むことができません。しかし、ここには、河川や地下水の流入を通して、陸から豊富な栄養分(チッソやリンの無機栄養塩や分解途上の有機物)が供給されています。汽水域の過酷な環境に適応できた生物は、この資源を独占し、大増殖することができます。
実際に、汽水域では、特定の種の貝(ウミニナ類など)やカニ(シオマネキ類など)の大集団が干潟の表面を占有している様子をよく見かけます。汽水域の生態系では、比較的少数の「汽水産種」が高い生物生産力を維持しており、それによって、汽水域が「陸と海をめぐる栄養物質の循環」の要になっています(図1)。ゴカイ類もこの汽水域生態系の主要なメンバーです。たとえば、有明海奥部の汽水域では、ゴカイ類の一種だけで現存量(湿重量)が一㎡あたり一㎏以上に達する所も珍しくありません。これらのゴカイたちは、底泥の表面に堆積する様々な餌を飲み込んで、大きく成長します。それを沖合からやって来る魚や空から飛来するシギ・チドリ類などの鳥が食べているのです。
このようにして、汽水域特有の少数の種が大増殖してくれるおかげで、陸から海に流入する栄養分の多くが汽水域で吸い取られ、そこで吸収された栄養が食物連鎖を通して陸や海の生物をも養っているのです。また、この一連の過程は、海域の富栄養化に伴う赤潮や海底の貧酸素化などの問題を抑制する「水質浄化作用」としても機能しています。その働きは、人工的な下水処理場では代替できない高性能なものです。
私は、一九七八年に大学院の学生として、青森市の郊外にある東北大学の浅虫臨海実験所の所属になり、そこで発生学の研究材料として、たまたまゴカイ類を選びました。特にゴカイが好きだったというわけではなく、ゴカイを研究する人があまりおらず、わかっていないことが多いというのが、その理由でした。発生学の材料としては、珍奇な種ではなく、いつでもどこでもたくさん採集できる種(普通種)が好都合です。こうして、日本各地の汽水域で最も普通に見られるゴカイ科の二種、「ゴカイ(当時の和名、後にカワゴカイ属三種を含むことが判明)」とイトメが最初の研究対象となりました。一九八三年の鹿児島大学赴任以降は、研究の軸足を分類学に移し、日本最大の干潟をもつ有明海をはじめ韓国、タイ、マレーシアを含む国内外のあちこちのゴカイ類を調べてきました。
琉球列島の島々の小さな汽水域の面白さに気付いたのは最近のことです。ここでは、これまで見たことがない種が見つかりました。また、ここは、私にとって昔から馴染み深いカワゴカイ属の種とイトメの分布南限の地でもあります。本書では、これらの種についてのこれまでの研究を紹介しながら、ゴカイという生物の魅力やそれを研究する面白さをお伝えしたいと思います。また、これらのゴカイの生息場所である小さな汽水域の大切さも多くの人に知っていただきたいと思います。

著者プロフィール

佐藤 正典  (サトウ)  (

1956年広島市生まれ。1983年東北大学大学院理学研究科生物学専攻博士課程(浅虫臨海実験所所属)修了、同年鹿児島大学理学部助手。助教授、准教授を経て、2009年同大学大学院理工学研究科教授。2021年同大学定年退職、鹿児島大学名誉教授。専門は、干潟を中心とした河口域および浅海域の底生生物学(特に、ゴカイ類の分類、生態に関する研究)。

上記内容は本書刊行時のものです。