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カロートの中
佐藤武詩集
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年7月27日
- 書店発売日
- 2019年8月10日
- 登録日
- 2019年7月25日
- 最終更新日
- 2019年8月21日
紹介
北海道を代表する画家・佐藤武が、絵画同様に表現を追求する詩をまとめた詩集。
空白の領域から、深い精神的な糧の中から言葉となり生まれてくる作品には、
作家としての真実を探し求める姿勢があらわれている。
目次
暮れ行く大地
陽は沈む
土に還るとき
孤独
泡沫
死者の呟き
鈴虫
波濤
貌に纏わる話
蚯蚓の呟き
カロートの中
虫けら
墓石の中
終焉
添い寝
秋の海原
空しい日々
さだめ
海
愛しき人
故郷
語りかける絵
絵が腐る
雪降るころ
時空を越えるとき
虚無
路
春
東風
道
死(一)
死(二)
夕暮れ
見捨てられた墓
老いる
皺
緑陰の果て
蜉蝣
冬の日
秋日
春がやってきた
蜘蛛の食卓
死者の巡礼
生きたや、死にたや
灰となり
難破船
暮れ逝く水辺
霊園
あとがき
略年譜
前書きなど
あとがき
詩と絵画はこの宇宙と、自然の空隙から生まれてくる。
そこに存在する空しさは、この宇宙の広がりにある。
音もない真空の中、波紋がどこまでも広がってゆく無窮の世界だ。
絵画は白い空白の領域、無の空間から一つの点を見出す。
凡てはそこから始まり、精神的な糧の中から平面絵画は生まれてくる。
詩も空白の領域から、深い精神的な糧の中から、言葉となり生まれてくる。
描こう、書こうとするものは陳腐なものではなく、空白の無の果てから、新しく生まれてくるものである。
作家は深い精神性と純粋な想像力が絶え間なく必要だ。
最も安全な中を進むのではなく、最も不安定で不確実の中から真実を探し求め、作品が誕生する。
つきることない孤独、つきることない不安、深い暗闇の沈黙の底から作品は未完の形で生まれてくる。時間を捨て、完成へと進むが、絵画も詩も完結することはない。
未完である。
未完であるがゆえに煩悶する。
歓楽からは何一つ生まれてはこない。
(中略)
詩集『カロートの中』のカロートは墓石の地下にある納骨室のことです。誰しも辿り着く場所、死者が眠る場所です。
亦このカロートに入ることなく、大海原で、山の奥地で、密林の中で、死に逝く人、戦争で火葬されることもなく、野に放置され、腐敗し、黄泉の世界に逝く人もいます、そのことが哀憐に想う人もいるかと思いますが、奇麗に焼かれ、納骨室に入ることだけが人の死後の形ではないのです。
死に方は自殺以外選びようがないのですが、死は、どう言った形であれ受け入れなければならない、空しいものなのです。
二〇一九年 春の宵 著者
上記内容は本書刊行時のものです。