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ハスカップとわたし
勇払原野のハスカップ市民史
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年3月31日
- 書店発売日
- 2019年4月10日
- 登録日
- 2019年4月1日
- 最終更新日
- 2019年4月10日
紹介
ハスカップは苫小牧の風土を象徴するソウルフード
楚々としたやや洋風な風情で、食べてみると酸味だけでなく驚くほど多様な味。
苫小牧や千歳の勇払原野一帯から北海道各地に広がるハスカップは、
世界の花卉園芸界でも、ポスト・ブルーベリーの位置にあるのです。
苫小牧東部地域(苫東)にあるハスカップの自生地を「コモンズ」(地域が共有するかのような土地)ととらえ、地域住民への聞き取り調査などを含めた実態調査を実施。開拓時代からの暮らしの中での位置づけや、存亡の実態、環境コモンズ研究会のフォーラムでの講演や提言をまとめた、「勇払原野のソウルフード」苫東のハスカップを体系的総合的にとらえた一冊。
目次
出版にあたって
ハスカップ讃歌
『ハスカップとわたし』の刊行に寄せて
序章 プロローグ鼎談
・座談会 「ソウルフード・ハスカップの新時代」
~なぜ今、ハスカップなのか 多面性と謎に迫る~
第1章 ハスカップの思い出
・聞き取り調査から
・寄稿
第2章 ハスカップの素顔を探る
・ハスカップファーム山口農園をたずねて
~栽培でみつけたハスカップの素顔~
・苫東プロジェクトとハスカップ保全
~ハスカップのサンクチュアリとイニシアチブをめぐって~
第3章 ハスカップのお菓子の歴史
・苫小牧郷土文化研究会主催市民講座講演記録 「よいとまけ」と三星
第4章 ハスカップの世界的な位置
~ハスカップに関する近年の講演録等から~
・ハスカップ新時代に向けて
~勇払原野の風土と資源を持続的に共有するためのイニシアチブ~
基調提言1 「今、世界が注目しているハスカップ」
基調提言2 「ハスカップの保全と苫東」
ディスカッション 「ハスカップ新時代に向けて」
・ハスカップの新たな共有と保全を考える
基調提言1 自然資源の共有をめぐる知恵と苦悩
基調提言2 ハスカップを過去から未来に「つなぐ」ために
報告 ハスカップ・サンクチュアリの現況について
・座談会 ハスカップを語ろう
・北米へのハスカップ導入
第5章 「ハスカップ物語」、その後
・「ハスカップ物語」、その後
あとがきに代えて
前書きなど
出版にあたって
NPO法人苫東環境コモンズ 代表理事 瀧澤紫織
ハスカップという漿果樹(しょうかじゅ)は、どこかエキゾチックでさわやかな響きがあり、原野のオリジナルの実は事実、楚々としたやや洋風な風情で、食べてみると酸味だけでなく驚くほど多様な味を持っています。このハスカップが、苫小牧や千歳の勇払原野一帯から全道各地に広がって、北海道どころか世界の花卉(かき)園芸界ではポスト・ブルーベリーの位置にあるというお話を聞いたのが、ほんの数年前でした。
ハスカップはこれまでもしばしばブームを創っており、近年は「苫小牧特有の食文化」「勇払原野のソウルフード」などと、従来とは違うとらえ方もされるようになり、ついにはハスカップは「苫小牧のアイデンティティだ」と評する人たちも出てきました。
一方、NPO苫東環境コモンズは平成22年1月にスタートする際に、自由にアクセスできる苫東のハスカップ群生地が、まさに絵にかいたようなコモンズ(地域が共有するかのような土地)だととらえ、土地所有者の了解を得たうえで、苫東内に大きな塊で豊富に散在する「雑木林」とともにハスカップ自生地をコモンズとして保全するための観察と地域利用を謳って進めてきました。
人気のハスカップはしかし、故事来歴、存亡の実態、またさかのぼって開拓時代の自生の様子や暮らしの中の位置づけなど、体系的総合的にとらえて記述したものはまだありません。ハスカップを栽培し、あるいはそれらを原料に苫小牧らしいお菓子に昇華させ地域ブランドにしてきた歴史の記述もまだ断片的であるように思います。もし土地のアイデンティティたるものならば、これではいけないと始めたのが、開拓時代からハスカップを知る方々やハスカップを愛する地域住民、会社・団体関係者などへの思い出と記憶の聞き取りでした。また、自生する大群落ではしばしば徒長したハスカップが枯れ始めているのを見るにつけ、これは全体植生の中でどうなっているかを調べておく必要があるとわたしたちは考えました。
このような背景から、過去5、6年ほどの間に続けてきた聞き取りと植生の調査の結果、さらにフォーラムや講演に焦点を当てて拾い上げ、「語り」を「活字」にして編集してみることにしました。北海道開発協会のコモンズフォーラムや苫小牧市美術博物館で行われた公開講座等ですが、たった1回だけのご発言で終わらせてしまうにはもったいない、ハスカップに関する情報満載の話ばかりだったからです。そうしてやっと形になってきたのが本書です。写真に頼らず、市民の思いを活字でとどめる。そこに最大の力点を置きました。その結果とも言えるのですが、各章とも表現の不統一や繰り返しも多々残っております。どうぞ事情をご勘酌いただければ幸いです。
(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。