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ハイブリッド戦争の時代
- 初版年月日
- 2021年5月
- 書店発売日
- 2021年5月10日
- 登録日
- 2021年4月21日
- 最終更新日
- 2021年4月21日
紹介
2014年のウクライナ危機以降、ハイブリッド戦争という言葉が頻繁に用いられるようになった。尖閣周辺での中国の挑発行動や台湾有事の可能性を抱える日本でも、ハイブリッド戦争への関心が急速に高まっている。ところが、論者によって「ハイブリッド戦争」が指し示す世界観が大きく異なっており、かえって、この言葉を用いることで、無用な混乱が引き起こされていることは否めない。ハイブリッド戦争とは、国家主体が、あらゆる手段を駆使しながら、正規軍による武力行使未満の行動をとることで他国に危害を与える事態を指し、そのターゲットは民主主義だ。国際政治学の視点に立つハイブリッド戦争の研究が、米中露の大国間競争下の生き残りをかけた日本に求められている。ハイブリッド戦争の概念の変遷から、ユーラシアの東西における数多くの事例を紹介し、日本外交・安全保障への提言を盛り込んだ新進気鋭の研究者による意欲作!
目次
はじめに 1
序章 ハイブリッド戦争時代の到来 11
第一節 問題の所在 11
増加する武力行使未満の行動/新たな戦争形態としてのハイブリッド戦争/ハイブリッド戦争
に脆弱な民主主義体制
第二節 ハイブリッド戦争に関する先行研究 13
それは米海兵隊の研究からはじまった/ウクライナ危機以後のハイブリッド戦争研究
第三節 本書の課題─「レジリエンス抑止」能力の向上 23
頻発するハイブリッド戦争/ハイブリッド戦争時代を生き抜くために
第1章 ハイブリッド戦争の理論 29
第一節 否定派・肯定派論争 29
ハイブリッド戦争という定義の問題/否定派──ハイブリッド戦争は意味のない概念だ/肯定
派──ハイブリッド戦争は意味のある概念だ/ハイブリッド戦争概念を肯定する
第二節 概念の誕生と発展 37
米国発の概念/NATOとEUによるハイブリッド戦争研究/ハイブリッド戦争のロシア的理
解/ゲラシモフ・ドクトリン/ロシア的理解を否定する
第三節 ハイブリッド戦争の定義 51
平時でも有事でもない「グレーゾーン」/狭義の定義──グレーゾーンにおけるハイブリッド
戦争/広義の定義──平時におけるハイブリッド戦争/マルチドメイン作戦/廣瀬『ハイブリ
ッド戦争』に対する本書の見解/本書の事例研究の紹介
第2章 ロシアのクリミア併合作戦(二〇一四年)63
第一節 ウクライナ危機前史 63
プーチンのミュンヘン演説(二〇〇七年)/クリミア半島は誰のものか?/非核三原則の中立
ウクライナ
第二節 ウクライナ危機発生 73
EU派市民の抗議デモ「ユーロ・マイダン」/クリミア併合作戦/ウクライナ東部への波及
第三節 ハイブリッド戦争としてのウクライナ危機 80
「ハイブリッド手法」のモデル/経済/政治/情報/軍事
第3章 中東欧のハイブリッド戦争(二〇一六?二〇年)90
第一節 モンテネグロにおけるハイブリッド戦争 90
アドリア海の小国モンテネグロ/モンテネグロのNATO加盟/議会選挙(二〇一六年)
セルビア発のハイブリッド戦争(二〇二〇年)?
第二節 北マケドニアにおけるハイブリッド戦争 101
NATO・CHSTの二番目の派遣先?/先送りされたマケドニアのNATO加盟/ギリシア
のポピュリズム政権/国名変更論争/「バルカンの軍事的中立」を目指したロシア
第三節 ウクライナ西部におけるハイブリッド戦争 113
ウクライナとハンガリーの関係悪化/ウクライナの新しい教育法採択/「パスポート・スキャ
ンダル」/KMKS襲撃事件におけるロシアの影/「スルコフ・リークス」
第4章 米中衝突とハイブリッド戦争(二〇一〇~二〇年)126
第一節 中国の安全保障観 126
米中衝突論/超限戦理論/混合戦争論
第二節 中国のハイブリッド戦争遂行能力 134
戦略支援部隊/「中国海警」と「海上民兵」/ハイブリッド脅威にさらされる台湾
第三節 ハイブリッド脅威としての中国 140
中国とヨーロッパの協力枠組み「17+1」/中国の5G技術を警戒する/5G安全保障/中国
とNATO
終章 ハイブリッド戦争という難題 151
第一節 同盟の抑止力 151
NATOウェールズ首脳会議(二〇一四年)/NATOワルシャワ首脳会議(二〇一六年)/
NATO組織の再編
第二節 同盟の信頼性 161
ハイブリッド戦争と法的グレーゾーン/ハイブリッド戦争は「侵略」に該当するか?/ハイブ
リッド戦争は自衛権の発動対象か?/ロシアの行動は国際法的に妥当か?/同盟の信頼性をた
めす中露の「探り」
第三節 日本の針路 170
日米同盟の強化と防衛力整備/NATOとの連携強化/ハイブリッド戦争の脅威は続く
おわりに 178
脚注 183
主要参考文献 205
上記内容は本書刊行時のものです。