書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
メディアは「貧困」をどう伝えたか
現場からの証言:年越し派遣村からコロナショックまで
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2023年2月17日
- 登録日
- 2022年12月27日
- 最終更新日
- 2023年2月20日
紹介
テレビ報道からSNSまで――「貧困」の実相は伝わっているのか?
「ネットカフェ難民」「派遣村」「コロナ貧困」などの現場を取材してきた著者が、「貧困報道」の変遷を詳細に分析し、問う。そして、支援活動の当事者やその活動を伝えるジャーナリストらの証言を通して、高度成長期以降の日本社会に巣くう病理に迫る!
証言者
湯浅誠/東海林智/清野賢司/藤田孝典/奧田雅治/稲葉剛/小林美穂子/栗林知絵子/渡辺寛人/谷口歩実/福田和代/市野凜/大西連/瀬戸大作
目次
まえがき
第Ⅰ部 貧困問題をメディアはどう伝えたのか?
第1章 ワーキングプアとネットカフェ難民
21世紀に入って、メディアが使う「貧困」の意味が変わった
放送データから「リーマン期」と「コロナ期」を比較すると何が見えるか
強力な新兵器「TVメタデータ」/報道人として、研究者として
テレビは「貧困」をどのように社会に問いかけたのか?
新聞報道の転機は「働く貧困層」の出現
テレビ報道の転換のキーワードは「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」
きっかけを作ったNHKのドキュメンタリー「ワーキングプア」
民放発で転機になったドキュメンタリー「ネットカフェ難民」
「ネットカフェ難民」と「ワーキングプア」の言葉で放送時間を比較
「生活保護」についてのテレビ報道がリーマン期に急増
「餓死」「孤独死」「孤立死」で生活保護に関する報道が増加
「貧困者」をテレビでどう描くのか―貧困者をめぐる〝感動ポルノ〟?
第2章 日本の貧困を可視化させた「派遣村」
「派遣」の増加をテレビはどう伝えてきたか
NNNドキュメント「ネットカフェ難民4 日雇いハケン」
報道人もボランティアなどに参加した「年越し派遣村」
対照的だった派遣会社の経営者と派遣労働者
テレビ報道に見る支援活動のあり方/リーマン期の支援スタイルがコロナ期にも
「派遣村」で困窮者に支援者が同行して生活保護申請へ
生活保護を食い物にする貧困ビジネス
NNNドキュメント「生活保護ビジネス 福祉施設の闇に迫る」
生活保護老齢加算と母子加算の復活が政策論議に
第3章 集中豪雨のような「生活保護バッシング」報道
わずか1か月で1年分の報道量に匹敵した芸人の親族の受給問題
一気に増えた「不正受給」の報道。しかも正確さを欠いていた
パチンコ通報条例など生活保護制度「見直し」議論が進んだ
「最後のセーフティーネット」である生活保護法の改正
「ナマポ」…ネットの俗語をめぐる生活保護の報道
生活保護制度「見直し」にともなって登場した生活困窮者支援制度の報道量
「いのちのとりで」訴訟と物価偽装をめぐる問題
画期的だった東京地裁判決
第4章 コロナショックで再び貧困が問題化
首相が国会答弁で認めた「生活保護」の権利性
「子どもの貧困」「女性の貧困」「ひとり親家庭」問題、どこが違う?
NNNドキュメント「奇跡のきょうしつ 子どもの貧困をなくす」
貧困の拡大にともなってメディアへの登場が増えた個人
湯浅誠が中心になった「活動家一丁あがり!」講座
NNNドキュメント「カツドウカ、社会へ 湯浅誠の若者塾」
「一丁あがり!」講座の卒業生の活躍 栗林知絵子の「原点」
第5章 SNS時代の「貧困」の伝え方
コロナ期の特徴は「生理の貧困」など若者からの貧困発信
移り気なテレビにとっての「貧困」報道の課題
番組側の姿勢次第で可能なテーマの深掘り/テレビの議題設定をバランスよく的確に
「貧困者」の描き方をめぐって起きたネット時代の事件
「貧困」の文脈でテレビにあまり登場しなかったテーマ
おわりに―「みんなの問題」という共感を広げるために
自己責任論の「壁」という古くからの課題
新聞・テレビとネットの両方での多様な発信にこそ希望
第Ⅱ部 証言:2つの「貧困」の時代をどう見るのか
湯浅 誠 「反貧困の男」のイメージを背負って
東海林智 活動する側にも参加する異色の“貧困ジャーナリスト”
清野健司 “東京・豊島区ローカル”で困窮者支援を続ける
藤田孝典 「下流老人」はあなたの問題だと訴えたい
奧田雅治 「労働問題で企業名を出すのは当たり前」
稲葉剛・小林美穂子 困窮者の“人間らしい暮らし”を大切に!
栗林知絵子 “おばさんのおせっかい”が地域を照らす
渡辺寛人 「貧困と労働」をともに最前線で実践し、発信する
谷口歩実 「生理の貧困」を発信したZ世代の活動家
福田和代・市野凜 「生理の貧困」いままで見えなかった古くからの問題
大西 連 “古いタイプ”の困窮者支援を若者世代につないで
瀬戸大作 「反貧困ネットワーク」の看板で困窮者を支援する
あとがき
前書きなど
著者の水島宏明氏(上智大学文学部新聞学科教授)より読者のみなさまへ
《かつてテレビの記者・ディレクターとして「ネットカフェ難民」などの取材を行い、現在は大学教員をしている水島宏明と申します。
私が書いた書籍『メディアは「貧困」をどう伝えたか』の紹介をさせてください。
私はテレビ時代には生活保護をはじめとする「貧困報道」をライフワークにしていました。
コロナ禍で貧困が目に見えて拡大するなか、15年ほど前のリーマンショックの時期の「貧困報道」と、コロナショックの時期の「貧困報道」を比較してみたいと、研究者の一人として考えるようになりました。
客観的なテレビの放送データを入手して分析を重ねて、ようやく書籍として世に出すことができました。
生活保護については、北九州市など続出した餓死事件、リーマンショック、派遣村、生活保護バッシング、生活保護基準の大幅引き下げ、いのちの砦訴訟など、生活保護をめぐる政策の変化がメディアとの関わりでどのような流れで推移したのかを「テレビ」のデータを元に検証しています。
この過程では、かつて自分も関わっていた「テレビ」というメディアの責任が、けっして小さくはないことを改めて痛感させられました。
生活保護バッシングの箇所など、データを元になるべく淡々と記していますが、その後の影響を大きさを振り返れば、メディア人として痛恨の出来事でした。
その他に「子どもの貧困」「学生の貧困」「生理の貧困」なども分析しています。
困窮者支援に関わっている支援者や貧困報道を実践する報道人らの証言も集め、支援活動や報道活動に関する研究書としても、これまでに例がない書籍になっています。
そろそろ書店に並ぶ頃ですが、関心あるみなさまにご一読いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。》
上記内容は本書刊行時のものです。