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遠い感情
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年10月20日
- 書店発売日
- 2022年10月25日
- 登録日
- 2022年9月30日
- 最終更新日
- 2022年11月28日
紹介
「フィクション・ノンフィクションの区別なく虹の向こうという個人的主体の世界―いやほとんど死に近いところ、しかしそう簡単に死なせてはもらえないところでかろうじて生きているのかも」と記す著者の、「遠い感情」と「近い感情」をつなぎ紡ぐ小作品集。
目次
まえがき
小説
黒いガーベラ/異物/夢は葬られるもの/絶対知が見た光景/日曜日/主婦の四季/非人情の味/虹の帝国
吐筆
窓/愚痴納め(平和・花鳥風月)
あとがき
● 写真提供 横山多枝子
● 装幀 仁井谷伴子
前書きなど
「遠い感情」はまとまった一つのストーリーではなく、むかし書き留めた枝枝の集体である。喜怒哀楽の「怒哀」の部分のみを抽出したような筋立てになっている。何に対する怒哀かといえば、女に生まれてきたゆえの、己の自我を支配しようとしてくる、あるいは侵食しようとしてくる見えない力に対する怒りと哀しみである。したがって、カラッと仕上げるつもりが、どうしてもイジイジさが残り、「怒哀」感情を嫌悪する自分としては、感心できるしろものではない。しかし、自分のうちにはすでに痕跡さえも残っていない「怒哀」だとはいえ、前段落でも述べたように、この「怒哀」こそが水分と栄養を枝枝のもとへと運び、自分を今の形に育ててくれたと考えれば、嫌悪はしても、その反面、いとおしいと言えば、いとおしいのである。 ―「まえがき」より
さて、エピソード記憶は、歳をとるとともに昔のことはよく憶えているが、直近のことは忘れやすくなるという。では、「感情」記憶に関してはどうだろうか?
私個人としての感情記憶は?
「遠い感情」記憶を粘着的かつ攻撃的なノスタルジアとするなら、「近い感情」記憶はどうだろうか? すでに、感情の汚泥は底に沈み、残った上澄みの環境に生きているから、苦くも辛くも甘酸っぱくもなく、涙とは縁がないから、しょっぱくもないことに気がついた。
しかし、多少の加齢臭は発散しているかもしれない。つまり、「近い感情」記憶は加齢臭味ということになるが、発散者にとってはそんなに悪くはない香りである。 ―「あとがき」より
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。