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絵本 筑豊一代
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年5月30日
- 書店発売日
- 2021年5月24日
- 登録日
- 2021年4月28日
- 最終更新日
- 2021年5月17日
紹介
作兵衛さんが描いた一坑夫の生涯――炭鉱で亡くなった1万人をこえる坑夫の殉職者と、炭鉱で働いたすべての労働者の名誉と尊厳のために
前書きなど
「炭鉱犠牲者 復権の塔」と山本作兵衛さん
編集後記にかえて
この絵本のもととなった紙芝居「筑豊一代」は、田川郡に生まれた作家王塚跣の同名の小説を原作としています。絵は、炭鉱の記録画家として知られる山本作兵衛さんが描いています。この紙芝居を発案したのは宮田町(現宮若市)宮田教会の服部団次郎牧師で、1970年にはじめた「炭鉱犠牲者 復権の塔」を建てる運動のために制作したものです。
世界的にも炭鉱は事故の多いところです。なかでも日本の炭鉱は人命軽視がひどく、明治以降筑豊だけでも1万人を超える殉職者を出しています。そして死者は、日本人だけではありません。第2次世界大戦中に強制徴用や捕虜として働かされた外国人もたくさん亡くなっています。
服部牧師は、亡くなった全ての炭鉱労働者はもちろんですが、閉山後に失業し人としての自信や誇りを失くしていった人たちが、人間としての尊厳を復権し宣言するための塔を建設しようと考えました。
その建設を訴えるために、牧師は炭鉱失業者やその家族が働く失業対策事業の現場を「紙芝居」を持ってまわりました。かつて265もあった筑豊の炭鉱は、1976年にはすべて閉山してしまい、日本のエネルギーと近代化を支えた存在が忘れ去られようとしていました。服部牧師は、260回の紙芝居の講演で建設資金を集め、1982年に宮若市千石に復権の塔を完成させたのです。
山本作兵衛さんの画業は、2011年ユネスコ「世界の記憶(世界記憶遺産)」に登録されました。この紙芝居のために描かれた20枚の絵画は、作兵衛さんの画業の中でも特異なものですが、「世界の記憶」登録10周年を機に、子供たちにも炭鉱の歴史を知ってもらうために、絵本にすることになりました。絵本にするについては、「大人の世界」に関わる場面を削除して15のシーンにいたしました。また文章も、当時の炭鉱や社会のことを理解しやすくするために解説を加えました。ただ、あくまでも原作には忠実に構成しております。絵本にして何よりも良かったことは、作兵衛さんの絵を自分の手で開いてじっくりと見ることができることです。
この絵本を出版するにあたっては、山本作兵衛さんと王塚跣さんのご遺族のご理解と田川市美術館のご協力をいただきました。紙芝居を絵本にしてはどうかと、そのきっかけを作ってくださったのは、イラストレイターの黒田征太郎さんです。黒田さんの作兵衛さんへの敬意がこの絵本を生み出しました。関係者の皆様に深く感謝いたします。
私個人としては、45年前にご自宅におじゃましお話を伺ったことのある作兵衛さんの絵本を出版できるというご縁に、感謝するばかりです。
みなさま、ありがとうございました。
*紙芝居の絵は、「世界の記憶」に登録されていません。
2021年4月
石風社 代表 福元満治
上記内容は本書刊行時のものです。