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母の味 安陪 光正(著/文) - 石風社
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母の味 三奈木村の年中行事とともに

発行:石風社
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ13mm
156ページ
並製
価格 1,500円+税
ISBN
978-4-88344-285-0
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
品切れ・重版未定
初版年月日
2019年4月20日
書店発売日
登録日
2019年3月26日
最終更新日
2019年9月10日
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紹介

筑紫平野の東隅
福岡県朝倉郡
三奈木村に育った
少年の記憶に残る
母の味
そして年中行事――


若い日の母の姿
煮炊きした竃の火
朝早くから
漂ってくる
みそ汁の味が
昨日のことのように
よみがえる

目次

 はじめに

正月
雑 煮/七草がゆ/だんだら粥 


春の味/竹の子寿司/にぎり飯/粽/がめん葉餅/カレーライス


紫蘇飯/どじょう汁/川魚料理/ハヤの甘露煮/川茸/鱈わたの甘煮


芋名月、栗名月/柿の葉寿司/甘酒/ガニ飯/干 柿/むかご飯/茸汁


弁当/蜆汁/鋤焼/三奈木砂糖/餅搗き/蕎麦

日々の食事と三奈木砂糖のこと
日々の食事/三奈木砂糖の起源と現状


 おわりに

前書きなど

  はじめに

 母の味は、誰でもが知っているなつかしい味、ことに季節ごとの年中行事に伴う母の味は、子ども心に深く刻まれ、老いてなお心に残るものである。それを思い、「母の味」を書いていると、ありし日の父や母、友と遊んだふるさとの山河が眼に浮かぶ。
 私のふるさと三奈木村(現在の福岡県朝倉市三奈木)は、筑紫平野の東隅にあって、東から西にかけて里山をめぐらし、南と西は筑紫平野にひらけ、南約六キロに筑後川が流れる(地図参照)。村の中央台地を走る彦山街道は、中世以来肥前や筑後方面から上方へのぼる旅人、あるいは彦山詣りの道者たちで賑わった往還である。この「三奈木ながれ」の中心部を札之辻といい、約三十軒の店が並び、日常の生活用品や食料など何でもが買え、枝村からの人々も来ていつも賑わっていた。
 わが家は札之辻組に属し、二千坪余の屋敷の一隅に建った小さな茅葺きの家。父の死後、母は一人でこの家に住み、俳句とお謡いを友としていたが、老後は隣に住む弟夫妻に引き取られ、小さくなって、九十二年の生涯を閉じた。庭に菩提樹の花が白々と散り敷いて、ほのかな香を漂わせていた。以来わが家は弟に守られてきたが、十年ほど前、県の文化財に指定されたのには驚いた。その説明に、「住宅は、屋敷林・生垣で囲われた中級武家住宅で、建築は一八世紀後半にさかのぼると推定され、保存状態は良好」とあった。
 母がこの家に嫁いだのは十八、翌年私が生まれた。ちょうど関東大震災の年である。当時村はランプの時代を終え、すでに電灯であったが、炊事には井戸水を汲み、薪で煮炊きをしていた。日常食は一汁一菜、米は多少の小作米があり、野菜は裏の畑で作る自給自足である。
 今、心に残るのは、子どもたちが主となる村の年中行事に伴うご馳走である。正月は、ほうけんぎょう・さぎっちょ。春は、遠足。夏は、およど・盆綱引き。秋は、おくんち・茸取り。冬は、兎追い・小鳥や鴨撃ち・餅つき等々、数々の思い出が母の味とともによみがえる。それは貧しい農村生活に、春秋の彩りをそえるものであった。
 今では、村も少子高齢化によって、年中行事や母の味も消え去ろうとしている。今から約八十年前、昭和初期のあの頃の思い出を、あの日の味を書いてみた。共感される方があれば幸いである。

著者プロフィール

安陪 光正  (アベ ミツマサ)  (著/文

1923年、福岡県朝倉郡三奈木村に生まれる。1945年、長崎医科大学附属医学専門部卒、神経精神科医。三奈木に関して、『三奈木村史資料 一~四巻』、『村のくらし ―筑前三奈木―』、『加藤新吉遺稿集』がある。

上記内容は本書刊行時のものです。