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戦後日本流通業のイノベーター 上野 善久(著) - サンライズ出版
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戦後日本流通業のイノベーター ファミリービジネスの業種転換事例

四六判
198ページ
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-88325-699-0
Cコード
C0034
一般 単行本 経営
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年8月20日
書店発売日
登録日
2020年7月27日
最終更新日
2020年8月24日
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紹介

 近江の北部、江戸時代から続く醸造業家に生まれた上野久一郎は、大正6年単身上京し酒販業を始める。革新的で時代の流れを敏感に察知しつつ次第に深い人間関係を築いていき、戦後日本の流通業において様々な革新的な取り組みを展開する。それは今でいうFCやSPAの形態を取ってはいるが、どこかで学んだものではなく、自らの事業展開の中から生み出されてきたものであろうと著者は分析する。
 布屋本店の創業者で上野家の中興の祖といえる上野久一郎は著者が3歳の時に逝去した。そこで33歳で跡を継いだ著者の父善章からの聞き取り、郷里での古文書調査によって祖先の歴史を確認後、自らの知見で、久一郎の足跡を分析する。
 家業を引き継いだ著者は久一郎とは異なるファミリービジネスの展開を行っているのだが、今回はそのことには触れず、上京後、酒問屋が揃う新川で先駆的な事業を大都会のターミナル駅周辺を中心に天日展開をおこなった痛快な祖父の足跡をたどりつつ、戦後外食産業の嚆矢にも目を向ける。近世の醸造業の実態や戦後酒販業の実情の詳述も楽しい。

目次

はじめに――問題意識と対象領域     
1.戦後日本の流通業における業態創造
2.サプライヤー起点の「顧客の販売革新」
―― 流通業・外食産業における近代経営システムの先駆事例
3. 上野久太郎家の沿革
4.イノベーターの東京進出      
5.産業エコシステム理論からの評価
6. 事業継承と新たな経営理念の確立
7.ファミリービジネスの事業継承とイノベーション
8.泰斗短評
(1)江戸時代における江州川道村酒造家の推移と上野久太郎家  郷土史家 宮川弘久
(2)布屋本店 上野家文書の研究意義  静岡文化芸術大学准教授 曽根秀一
(3)上野久太郎家住宅の構造と意匠  建築家・一級建築士 河辺哲雄  
(4)久太郎家お内仏の意匠と作風   郷土史家 宮川弘久

前書きなど

〈まえがきより〉
 本書は、戦後日本の流通業において、従来にない革新的な販売方法を実践した先駆事例を記述したものである。
 その先駆的実践事例には、後の時代になってFC (フランチャイズチェーン)、SPA(製造直売アパレル)、SB、PB(ストアブランド、プライベートブランド)などと呼称され、より精緻な運営システムとして構造化されることになる販売方式のエッセンス(本質)が含まれている。本書に収録した事例は先駆的であり、流通業におけるイノベーションと呼ぶにふさわしいものと考えているが、それが学術的な見地から断定できるかどうかに関しては専門家の論考を待たねばならない。
 流通業という社会システムにおいて、なにか1つの販売方式を誰が最初に運用したかということを、厳密に立証することは困難である。従って、誰が最初なのかについて究明することは我々の手に余る難事業であって、その途の専門家に委ねるほかはない。しかしながら、その難事業に挑む学究に資するためにも、関連する事例を詳細に記述し刊行物として後世に残すことは、その事実のごく僅かな一端を知り得た者の責務と考える次第である。
 代々酒造業を営む家の9代目だった上野久一郎は大正6年、弱冠23歳のときに郷里・滋賀県から上京し、当時の東京市京橋区(現在の東京都中央区)に商店を構えた。
酒造りの蔵元だったファミリービジネスにとっては新規事業となる流通業に進出したことに加え、関西の農村から東京都心という地理的にも社会環境の点でもかけ離れた地に事業拠点を新たに設立した。つまり、新事業開発と新市場開拓の2つのフロンティア進出を同時に敢行したことになる。
 しかし、東京開業から僅か6年後の大正12年には、関東大震災で商店を焼失する。難儀を経て再興した店を、今度は昭和20年の東京大空襲で再び灰燼に帰す。戦後の動乱期に家業を再興する中で、単に従前と同じことを再起動したのではなく、数々の革新的な販売方法を編み出し、実践してきたのである。
 何代も続いている商家には、中興の祖といわれる当主が現れることがあるが、本書に採り上げる上野久一郎は、まさに中興の祖の典型といえる。この足跡を記すことは、ファミリービジネス研究にとっても意義のあることと考える。
 本書は、以上のような問題意識にたって、戦後流通業におけるイノベーターと称すべき上野久一郎の営為を記したものである。"

版元から一言

 著者は東京生まれでビジネス界で様々な経歴を重ねておられるので、今回の出版についても各方面に打診されていたようであるが、滋賀で育った上野久一郎のことはやはり地元の事象に強い小社でとのご要請で出版をお引き受けした。
 著者は父君から「爺さんのことは記録に残すように」との指令を受けて古文書の調査から始めた執筆はさぞかし大変だったことと推察するが、ビジネス社会の大局を見てきた著者だけに鋭い観察力や洞察力とともに随所でポイントをおさえているので、親族のサクセスストーリーにありがちな嫌みがなく、当時の社会事情と絡み合って清新な感覚で記述されている。
 酒造も酒販も規制の中での商いの実態が古今併せて詳述されており、時代の動向を見事に受け止め事業を拡大してきた久一郎さんの獅子奮迅の姿が活字の奥に見え隠れする。

著者プロフィール

上野 善久  (ウエノ ヨシヒサ)  (

1961年東京に生まれる。東京大学経済学部卒業後、三菱総合研究所、ボストンコンサルティンググループ勤務後、1994年株式会社布屋本店に入社。英国風パブの開店をはじめ、業界再編成、ワイン輸入会社の設立のほか多方面でに新規事業に取り組む。一方でファミリー企業の健全な事業承継に関して警鐘を発信。2019年株式会社布屋代表取締役就任。ファミリーゲノム研究所の代表も務める。

上記内容は本書刊行時のものです。