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談 no.126 近藤 譲(著) - 公益財団法人たばこ総合研究センター
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談 no.126 (ダンヒャクニジュウロク) リズムのメディウム (リズムノメディウム)

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B5判
90ページ
並製
定価 800円+税
ISBN
978-4-88065-544-4   COPY
ISBN 13
9784880655444   COPY
ISBN 10h
4-88065-544-9   COPY
ISBN 10
4880655449   COPY
出版者記号
88065   COPY
Cコード
C0310  
0:一般 3:全集・双書 10:哲学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年3月1日
書店発売日
登録日
2023年1月26日
最終更新日
2023年3月1日
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紹介

リズムは、音楽と最も強い結びつきのある言葉だが、もとより音楽の専門用語ではない。たとえば、言葉のリズム、心臓の鼓動のリズム、生活のリズム、潮汐の干満のリズム、あるいはたてものの柱のリズミカルな配置など。さまざまな文脈での「リズム」という言葉は、しかし、単なる比喩的な表現ではないことは言うまでもない。大きな広がりをもつ「リズム」という概念の、それぞれの特徴を示す表現なのだ。                                                       
広義の「音楽のリズム」は、三つの下位概念、すなわち「拍」、「拍節」、狭義の「音楽のリズム」を含んでいる。音楽の構造という点から見ると、狭義の「音楽のリズム」は表層構造に属し、「拍」と「拍節」は基礎構造に属する。音楽を聴く時、実際に聴こえるのは表層のリズムである。「拍」や「拍節」は、表層のリズムの背後にある構造で、直接聴き取れるわけではない。表層のリズムにあっては、拍のさらに多様な分割から生じるさまざまな下位拍の組み合わせが複雑なパターンを形成する。音楽の表層的なリズムとは、何らかの仕方でアクセント付けられた(目立たせられた)表層拍とそうでない表層拍の組み合わせである。そして、ある拍が目立つかどうかには、その音の長さや強さだけではなく、高さ、音色などの多様な要素が同時に関与していて、一見単純な音の連なりのように聴こえる楽曲であっても、ひとたびリズムに焦点をあてれば、極めて複雑で多彩な音世界をつくり出していることがわかるのだ。

「響き合いの世界」の最終回は、この複雑で多彩な「リズム」について考察する。

目次

〈リズムと音楽〉「音楽には二種類のリズムが内在する」
 近藤譲(作曲家、音楽評論家)

 時間芸術のひとつである音楽において、時間の形式であるリズムは、当然本質的な意味をもっている。しかしそれにもかかわらず、これまでの音楽のリズムに関する議論には、ある種の混乱がみられるという。その混乱の主因は、音楽のリズムを一般的な意味でのリズムと直接結びつけて論じようとするからにほかならない。音楽のリズムは、むしろ、音楽固有の組織体系として考察されるべきだと主張するのは作曲家の近藤譲氏だ。もとより、音楽にかかわっているリズムは、音楽のリズムのみではない。一曲の音楽は、連続的に変化するひと続きの音響事象であり、したがってそこでは、一般的な意味でのリズムの形式原理も働いている。人々が音楽に感じるリズムは、じつは、それら二種のリズムの複合なのだ。音楽固有のリズムと一般的なリズムをいかに腑分けし、検出するか。だがそもそもそのようなことにどれほどの意味があるのだろうか。リズムのメディウムの探索はここから始まる。

〈リズムと日本文化〉「日本のリズム……身体の深層にあるもの」
 樋口桂子(大東文化大学名誉教授)

 日本の音には雑音的な要素が多い。日本人の耳が好む音は、ヨーロッパの教会の鐘のようにようにどこまでも高く響いてゆくものではなく、雑音の要素を含んだ、鈍く広がって、あたりに滲みゆく音だ。日本の音は、むしろ正確な音程に正しく合わせるよりも、多少音をずらして、あるいは「ツボを外した」音を取り入れようとした。ヨーロッパの人たちがとりわけ動きに対してリズムを捉えるのに対して、日本人は静かに安定したリズム感を好む。それは、「もの」の動きに目を向けるよりも、「もの」から「こと」を見てとり、「こと」のなかにリズムを感じ取ったからだろう。ヨーロッパ人の気分は運動と変化とリズムを捉えている。一方、日本人にとっての気分はあたりを見渡す「わたり」のなかにある。響き渡る、冴えわたる「気配」のなかに「リズム」もまたあるのだ。この違いは、音楽構造の「拍」の領域において、根源的な差異を見出すことになる。音楽のリズム論への果敢なる挑戦であり日本文化論の更新である。

〈リズムと生態学的知〉「液体のリズム、新しい始まりの絶えざる反復としての」
 河野哲也(立教大学文学部教育学科教授)

 生態学的現象学は、人間の心理を主体と環境との循環的関係のなかでの意味に満ちた経験として記述し、理解しようとする哲学である。生態学的現象学で人間を捉えるとすると、海という流体のなかで、同じくほとんど水分でできた自己の身体を、薄い膜によってかろうじて外部と分け隔てている海月(くらげ)のようなものだという。
自然のなかには、純粋に反復する過程などない。自然は、新しいものを繰り返し産出する。その産出されたものの一部が互いに類似しているのである。同一性とは、思考の人工的な産物である。類似しているものは、思考の介在なしで、自然に直接的に経験される。リズムが生じるためには、見えない生命内実が不可欠であり、その後に類似のものが再帰するのである。リズムは、すでに存在している同一のものが反復するのではない。リズムとは、存在が更新されて戻ってくることである。

著者プロフィール

近藤 譲  (コンドウ ジョウ)  (

1947年東京生まれ。作曲家、音楽評論家
著書に『線の音楽』(復刻版 アルテスパブリッシング 2013、〈朝日出版社 1979年〉)『聴く人(homo audiens)』(アルテスパブリッシング 2013)、『ものがたり西洋音楽史』(岩波ジュニア新書 2020)他

樋口 桂子  (ヒグチ ケイコ)  (

大東文化大学名誉教授。
著書に『日本人とリズム感:「拍」をめぐる日本文化論』(青土社 2017)、『おしゃべりと嘘』(青土社 2020)他。

河野 哲也  (コウノ テツヤ)  (

1963年東京生まれ。立教大学文学部教育学科教授。
著書に『間合い:生態学的現象学の探究』(東京大学出版会 2022)、『人は語り続けるとき、考えていない:対話と思考の哲学』(岩波書店 2019)、『境界の現象学:始原の海から液体の存在論へ』(筑摩選書 2014)他。

上記内容は本書刊行時のものです。