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特性のない男
ウルリッヒとアガーテ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年9月15日
- 書店発売日
- 2025年10月10日
- 登録日
- 2025年8月7日
- 最終更新日
- 2025年9月25日
紹介
観念と官能の織りなす愛の新世界―
ウルリッヒとアガーテは可能性の限界に向かう旅に出て、近親相姦でも〈遙かな愛〉でもない、〈肉体的であると同時に精神的な〉愛のユートピアを夢見る。
その傍らで演じられる市民的性愛の数々―
ニンフォマニアの裁判官夫人と性科学の教えを実践する外務省高官夫人が、これまで見過ごされてきた〈笑える形而上学小説〉の側面を浮かび上がらせる。
20世紀ヨーロッパ文学を代表する大作が清新な新訳・抄訳で甦る。
目次
第1部 ウルリッヒ
第1巻第1章 驚くべきことに、この章を読んでも何もわからない
第2章 特性のない男が住まう家
第4章 現実感覚があるのなら、可能性感覚なるものもあるにちがいない
第5章 ウルリッヒ
第7章 手痛い目に遭ったウルリッヒが新たな恋人を招き寄せる
第9章 偉大な男になるための三つの試み。その第一
第10章 第二の試み。特性のない男のモラルの萌芽
第11章 最も重要な試み
第12章 スポーツと神秘主義の話のあと、ウルリッヒがその愛を獲得した女性
第13章 天才競走馬によって特性のない男だという認識が熟す
第22章 平行運動が、えもいわれぬ精神的優美さで人を感化する女性の姿をとっ
て、ウルリッヒを飲み込むべく待ちかまえる
第23章 ある偉大な男の最初の介入
第24章 財産と教養。ディオティーマとラインスドルフ伯爵の友情。著名な客た
ちを魂と調和させる公務
第25章 結婚した魂の苦悩
第29章 通常の意識状態の説明と中断
第32章 忘れられていたが、きわめて重要な少佐夫人の物語
第33章 ボナデーアとの別れ
第62章 大地も、だがとりわけウルリッヒが、エッセイスムスのユートピアに敬
意を表する
第63章 ボナデーアが幻覚を起こす
第67章 ディオティーマとウルリッヒ
第68章 余談。人間は自分の体と一致しなければならないのだろうか
第69章 ディオティーマとウルリッヒ(続)
第78章 ディオティーマの変貌
第94章 ディオティーマの夜
第109章 ボナデーア、カカーニエン。幸福と均衡のシステム
第115章 君の乳房の尖端はケシの葉のようだ
第116章 生の二つの樹、そして厳密性と魂の事務総局設立の要請
第123章 反転
第2部 アガーテとウルリッヒ
第2巻第1章 忘れられていた妹
第2章 信頼
第3章 喪の家の朝
第4章 おれにはひとりの戦友がいた
第5章 ふたりが悪さをする
第8章 ふたり家族
第9章 ウルリッヒと話ができないときのアガーテ
第10章 スウェーデン土塁への遠出、その後の成り行き。次の一歩のモラル
第11章 聖なる会話。始まり
第12章 聖なる会話。波瀾に満ちたその展開
第15章 遺言状
第21章 あなたの持つものをすべて火に投じなさい、靴に至るまで
第22章 コニアトーフスキによるダニエルの定理批判から原罪へ。原罪から妹の
感情の謎へ
第23章 ボナデーア、あるいは病気のぶり返し
第24章 アガーテが本当にやって来た
第25章 シャム双生児
第28章 あまりの陽気さ
第29章 ハーガウアー教授がペンをとる
第3章 ウルリッヒとアガーテが今になって理由を探す
第31章 死にたいと思っているアガーテの前にひとりの男が現れる
第38章 大変なことが起こっているが、誰もそれに気づかなかった
遺稿部第39章 出会いのあと
第41章 あくる朝の兄妹
第42章 ヤコブの梯子の途中で立ち止まり、見知らぬ家へ
第43章 立派な男と出来損ないの息子、そしてアガーテ
第44章 激しいやり取り
第45章 奇跡のようないくつもの体験の始まり
第46章 白昼の月光
第47章 雑踏のなかの遊歩
第48章 自分自身を愛するように隣人を愛しなさい
第49章 愛をめぐる会話
第50章 降りかかるいくつもの難題
第51章 愛することは簡単ではない
第52章 ある夏の日の息吹
『特性のない男』の翻訳と編集をめぐって―訳者解題(白坂彩乃)
愛の詩人ムージル―あとがきに代えて(大川勇)
前書きなど
「訳者解題」より
本書はローベルト・ムージル『特性のない男』(第1巻1930年/第2巻1932年)の抄訳である。公刊部だけで1600ページ(初版)を超す大部の小説である『特性のない男』を「愛」のテーマで切り取るという試みであり、同時に、膨大な遺稿の残されたこの未完の作品をめぐる編集文献学的な問題に一石を投じる試みでもある。
『特性のない男』はオーストリアの作家ローベルト・ムージル(1880―1942)の代表作であり、ジョイスの『ユリシーズ』やプルーストの『失われた時を求めて』と並んでヨーロッパの二十世紀文学を代表する作品と評されるが、それら二作と比べると日本での知名度はそう高くない。邦訳は過去三度出ている。1960年代に刊行された高橋義孝監訳(新潮社)、加藤二郎/柳川成男/北野富志雄訳(河出書房新社)、1990年代の加藤二郎訳(松籟社)であるが、すべて現在は絶版となっている。のみならず、邦訳が新潮社と松籟社は6巻本、河出書房新社は4巻本とかなりの分量であることも、この作品を近づきがたいものにしているかもしれない。さらには主人公ウルリッヒの観念的な思索と、そうした思索が展開される社交の場での会話が物語の多くを占め、しかもそこで語られる事柄の論理が必ずしも明瞭でないため、小説としてもけっして読みやすいとはいえない。そうしたいくつもの要因が重なったからだろう、『特性のない男』は現在日本の読書界で取り上げられることの少ない、いわば「忘れられた」作品となった。それなら読める『特性のない男』を作ろう―そうした意図のもと本書は成った。読めるというのは第一に、長大な『特性のない男』を一巻の書にまとめることである。そのため本書では、さまざまなトピックの乱立するこの小説を一つの角度で切り取って構成しなおすことにした。テーマは愛。「正しい生」を求めてさまざまなユートピア的な生について吟味してきたウルリッヒは、あるとき順調に業績をあげていた数学者の仕事を離れ、「人生から一年間の休暇を」とった。その休暇のさなか妹アガーテと出会い、彼は新たに愛のユートピアを模索することになる。この愛のユートピアというのはけっして唐突な思いつきではなく、かつて二十歳のときにウルリッヒが体験した神秘的な愛の世界を想起するなかで立ち現れてきたものであった。軍人、エンジニア、数学者というキャリアの陰に隠れてはいるものの、この神秘体験はたえずウルリッヒに影響を与えつづけ、アガーテとの出会いによってついに彼の人生の指針となるに至る。〔中略〕このようにもウルリッヒの人生、ひいては『特性のない男』全体を貫いて愛というテーマが底流している。
版元から一言
20世紀を代表する長篇小説を1冊で。
愛のテーマで読む新訳・抄訳版でお送りします。
上記内容は本書刊行時のものです。

