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晩年のスタイル
老いを書く、老いて書く
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年3月25日
- 書店発売日
- 2020年4月15日
- 登録日
- 2020年4月3日
- 最終更新日
- 2020年4月9日
書評掲載情報
2020-07-18 |
図書新聞
第3456号 評者: 金志成 |
2020-07-03 |
週刊読書人
3346号 評者: 大宮勘一郎 |
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紹介
作家・芸術家の到達点としての「老い」に迫る
目次
序 章 老いて花さく(香田芳樹)
第1章 「よちよち歩きの時分から柵のところまで」
―ヨーロッパ古代と中世における老年描写(香田芳樹)
第2章 若返りと老いの物語
―ヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテの『五〇歳の男』(山本賀代)
第3章 若者が年をとるとき
―ロマン主義以降の青年運動と「若きドイツ」の老後の生(西尾宇広)
第4章 想像の晩年、晩年の想像
―アーダルベルト・シュティフター作品の老人像と晩年のスタイル(磯崎康太郎)
第5章 時間/時代への抵抗
―フランツ・カフカ『田舎医者』に見る老いと死(川島隆)
第6章 市民たちの晩年
―トーマス・マン『ブッデンブローク家の人々』から『欺かれた女』まで(坂本彩希絵)
第7章 小さな礼拝堂を装飾する老いた画家たち
―マティス、ピカソ、フジタ、そしてコクトー(松田和之)
第8章 マイノリティの「老年の語り」と集団的アイデンティティ
―語りはじめたロマ(野端聡美)
前書きなど
本書「あとがき」より(抜粋)
「晩年のスタイル」に着眼する研究は、作家の主観なり、晩年の業績なりに密着し、それを説き明かす、あるいは再評価する(必ずしも「老い」という階梯に囚われない)試みである。他方で、「老い」を対象とする研究は、「若さ」との相対性を旨とし、個人史にとどまらない文化的、社会的な枠組での考察も可能とする。この二つの研究テーマは、作家や芸術家が自身の若かりし頃との比較のうちに「老い」の意識を強く抱いている、あるいは「晩年のスタイル」を語るうえで若年時のそれが不可欠な参照項になっているといった場合にはむろん重なり合うものであるが、必ずしも同一の主題であるとは限らない。むしろ「晩年のスタイル」は「老い」のスタイルであるという暗黙の了解を疑うことや、「老い」を一人の作家の「晩年」から切り離して検討することに研究の醍醐味があるように思われる。本書に収められた執筆者たちの論考に認められる「晩年のスタイル」や「老い」への多様なアプローチのあり方から、以上のことを考えさせられた。
上記内容は本書刊行時のものです。