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日本で働く
外国人労働者の視点から
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月25日
- 書店発売日
- 2021年3月25日
- 登録日
- 2021年3月10日
- 最終更新日
- 2021年7月13日
書評掲載情報
2022-09-05 |
日本都市社会学会年報
40号 評者: 水上徹男 |
2022-05-30 |
地域社会学年報
34号 評者: 二階堂裕子 |
2022-03-31 |
PRIME
45号 評者: 五十嵐泰正 |
2021-11-30 |
農業と経済
2021年秋号 評者: 坂本清彦 |
2021-07-17 |
図書新聞
2021年7月24日号(3505号) 評者: 石原俊 |
2021-06-19 | 日本経済新聞 朝刊 |
2021-06-13 |
読売新聞
朝刊 評者: 小川さやか(立命館大学教授・文化人類学者) |
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重版情報
3刷 | 出来予定日: 2022-02-15 |
2刷 | 出来予定日: 2021-07-15 |
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紹介
現代日本を支える外国人労働者について、私たちはどれだけ知っているだろうか。彼/彼女たちは、どんな事情で故郷を離れ、どのように日本で生きているのだろうか。そして、彼/彼女たちの目に縮小する現代日本はどのように映っているのだろうか。
タイ、ベトナム、フィリピン、ブラジル、メキシコ、アフリカから来る技能実習生や日系人たちをとりあげ、統計、聞き取り、支援活動の経験から「向う側」の視点にせまり、日本で働く外国人労働者と私たちの関係を見つめなおす。
目次
序章 外国人労働者から見える日本社会(崔博憲)
1 外国人労働者に依存する日本社会
2 戦後日本と外国人労働者の受け入れ
3 外国人労働者から見える日本社会
4 天秤にかけているのは誰なのか
5 コロナ禍の外国人労働者
第1部 近年の外国人労働者をめぐる状況
第1章 統計から見た近年の外国人労働者の動向(伊藤泰郎)
1 人手不足と外国人労働者
2 在留外国人数から見る近年の変化
3 「外国人雇用状況」の届出状況
4 「特定技能」の創設とコロナ禍の影響
第2章 外国人労働者に関する入管法制の変遷(四方久寛)
1 本章の目的
2 日本の外国人政策
3 一九八〇年代まで
4 一九九〇~二〇〇七年
5 二〇〇八~二〇一八年
6 在留資格「特定技能」の創設
7 外国人労働者受け入れの現在と課題
第3章 「食の外部化」と外国人労働者
――食料品製造業を中心に(飯田悠哉・伊藤泰郎)
1 フードシステムを支える外国人労働者
2 中食の供給構造
3 食料品製造業の労働市場
4 「仕事によって格がある」
5 惣菜・弁当工場という職場
6 外国人労働者と私たちの胃袋
第4章 建設業と外国人労働者(北川由紀彦)
1 「フロントドア」からの受け入れが始まる
2 建設業と外国人労働者
3 資格外就労者から技能実習生へ
4 建設業における技能実習生
コラム 外国人労働者への法律支援(四方久寛)
第2部 技能実習生
第5章 変わりゆく農村を後にして
――ベトナム北部農村の工業化と技能実習生(川越道子)
1 変わりゆく農村と技能実習生
2 ベトナム北部農村の工業化
3 元技能実習生たちの声
4 「開発途上地域」から「新興国」へ
第6章 日常のなかの移住労働
――タイ人技能実習生を中心に(崔博憲)
1 あれから二五年
2 安い労働力
3 日本で働くとは
4 開発から市場へ、貧困から消費へ、農民から移住労働者へ
5 いま、タイから日本はどのように見えているのか
6 日常のなかの移住労働
コラム 次はない?―フロンティアはいま(崔博憲)
コラム 「コンチャウ・ネット」から見えてきたもの(川越道子)
第3部 日系人
第7章 過疎化農村を多文化社会へ再生する日系ブラジル人学校
――滋賀県東近江市甲津畑町の「ラチーノ学院」を事例として(中田英樹)
1 過疎化が進む農村とブラジル人学校
2 日系ブラジル人の教育と「ラチーノ学院」
3 甲津畑へ移転したラチーノ学院の変化
4 過疎化とラチーノ学院の受け入れ
5 交流と地域活性化
6 「地産地消」される米
7 過疎化する農村とブラジル人
第8章 日系フィリピン人一家の「家庭菜園」の意味
――日本の労働市場におけるインフォーマリティ(吉田舞)
1 ジャスト・イン・タイム労働者
2 ライザ一家
3 労働力不足と日系フィリピン人労働者
4 「外国人労働者」とインフォーマリティ
コラム ブラジルにおける日系人をめぐる最近の状況(四方久寛)
コラム 日本の周辺労働市場の再編として捉える日系自動車産業のメキシコ進出(中田英樹)
第4部 さらなる周縁へ
第9章 かれらの前には誰がいたのか
――園芸産地の季節労働市場における国内労働者(飯田悠哉)
1 外国人の前に誰がいた?
2 輸送園芸産地と季節的労働市場
3 高冷地園芸における季節雇の労働世界
4 さらに柔軟で従順な労働力へ
第10章在日アフリカ人の移動と労働
――日本とアフリカの視点から(坂梨健太)
1 「見えない」在日アフリカ人
2 来日の経緯と日本での仕事
3 統計からみる
4 事例からみる
5 在留資格からみる
6 アフリカからみる
7 「見えない」在日アフリカ人を見る
コラム 十三の「中国エステ」で働くということ(青山薫)
終章「移民ではない」移民(西澤晃彦)
1 日本の外国人労働者と「新しい世界地図」
2 技能実習生という編入様式
3 「移民の受け入れではない」をめぐって
あとがき(伊藤泰郎)
前書きなど
●本書「序章より」(抜粋)
そもそも、わたしたちは現代日本を支える外国人労働者たちについて、どれだけ知っているのだろうか。外国人労働者、とりわけ周縁的な労働を担う外国人が日本にやって来るのは、彼/彼女たちが貧しく、日本が豊かだからである。その認識は間違ってはいない。だが、日本を目指し、日本で働く彼/彼女たちは、どれほど貧しいのか。あるいは、彼/彼女たちにとって、今日の日本はどれくらい豊かなのだろうか。彼/彼女たちが日本に働きに来るためにどれほどのカネと時間が必要なのだろうか。彼/彼女たちは、自分の国で、日本で、どのような仕事や暮らしをしているのだろうか。彼/彼女たちは、日本で何ができて何ができないのか、何に困っているのか、何に緊張しているのか。そして、今日の日本が、国境の向う側からさらに大勢の労働者を受け入れるようと扉の開け幅を広げたからといって、彼/彼女たちは、それに応えて足りない労働力をすぐに埋めてくれる存在なのだろうか。国境を越えて周縁労働力の受け入れを推進する国が世界中で増えているなかで、彼/彼女たちの目には日本はどのよう位置づけられているのだろうか。
外国人労働者に依存する現代日本にもっとも必要なのは、こうした問いに向き合うことである。しかし、それこそが現代日本にもっとも欠けている。
他者不在の歴史認識やヘイトスピーチが象徴しているように、近年の日本では偏狭なナショナリズム/排外主義が社会のさまざまな場で前景化している。安価で使い勝手のよい外国人労働者の受け入れはこうした時代のなかで拡大しているのである。それゆえ移民や外国人労働者をめぐる議論は、こちら側にどれだけメリット/デメリットがあるのかという自国中心の視点から語られるものが大半を占め、当事者である外国人労働者のまなざしや送り出す側の声は後方に追いやられている。
反発や一時的な足踏みがあっても欲望と格差は拡大再生産され続け、今後も世界中で移民や外国人労働者への依存は高まってゆくだろう。とくに人口減少が加速する日本では、外国人労働者の受け入れが進むのは間違いない。現状を踏まえるならば、そうした展開によって、日本の外国人労働者たちはさらに安価で使い勝手のよい二級の労働者として固定化されることが予想される。
しかし、そのような流れになんとか抗おうとするのであれば、外国人労働者や移民たちから見える景色がどのようなものであるかを考えなければならない。
上記内容は本書刊行時のものです。