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視る民、読む民、裁く民 須藤秀平(著) - 松籟社
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視る民、読む民、裁く民 ロマン主義時代におけるもうひとつのフォルク

発行:松籟社
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ24mm
重さ 400g
336ページ
上製
価格 3,800円+税
ISBN
978-4-87984-375-3
Cコード
C0098
一般 単行本 外国文学、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年3月15日
書店発売日
登録日
2019年3月26日
最終更新日
2019年4月1日
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紹介

19世紀初頭ドイツの作家、クライスト、ゲレス、アイヒェンドルフを読み解き、ロマン主義による理想的な民族・民衆とは異なる〈もうひとつのフォルク〉を考察する

目次

序章 フォルク概念の変容とその問題
1 本書の目的
2 「はざま期」とフォルク概念の変容
3 ドイツとフランス、二つの国民概念
4 ナチズムの源流としての「ロマン主義」
5 対象の選択―「受容」を重視した「ロマン主義者」たち
6 本書の視座―群衆、読者、審判者
7 本書の構成

第1章 下層民から〈裁く〉群衆へ―クライスト『チリの地震』における偶然性と匿名の声
1 必然性への懐疑をめぐって
2 身分制と革命―クライストの自己意識
3 「フォルク」という名の群衆
4 「偶然の糸」と匿名の声

第2章 国家なき国民戦争―クライスト『ヘルマンの戦い』における国民と自由
1 クライストはプロパガンダ作家か
2 戦う目的の不一致―自由観の差異
3 不可解なナショナリズム
4 ヘルマンの「戦い」
5 国民と自由の行方

第3章 ジャーナリズムと民衆―初期ゲレスの政治新聞と文芸共和国
1 「フォルク」のための新聞
2 思想的背景―市民階級、啓蒙主義、革命
3 ラインラントの葛藤
4 ゲレスの「共和国」構想
5 「民衆なし」の共和主義とジャーナリズム

第4章 本を持つ民―ゲレス『ドイツ民衆本』における受容の機能
1 民衆と文学
2 民衆は書物に触れることができたのか
3 ロマン主義の民衆文学観とゲレス『ドイツ民衆本』
4 「民衆文学」の定義をめぐって
5 「多数者と時間の試練」―ゲレスにおける「民衆本」の意味
6 「家」としての「民衆本」と文芸共和国

第5章 アイヒェンドルフと「主観」の文学―歴史叙述における詩人の役割
1 アイヒェンドルフは民衆作家なのか
2 主観性批判とその意味
3 読書の意味をめぐって―アイヒェンドルフの自己意識と民衆
4 『予感と現在』における理想の詩人と民衆
5 変転する世界を前にして―歴史叙述と詩人の役割

第6章 1830年代のドイツ像―中期アイヒェンドルフにおける解放戦争と民衆
1 1830年代と「様々な歴史観」
2 1830年代の政治的状況
3 アイヒェンドルフの政治論文とドイツ像
4 風刺小説『空騒ぎ』(1832年)
5 長編小説『詩人とその仲間たち』(1834年)

終章 視る、読む、裁く「フォルク」の遠心力


あとがき
参考文献

前書きなど

 本書は、近現代ドイツ思想における最重要概念の一つである「フォルク(Volk)」が19世紀初頭のドイツ文学のなかでどのように捉えられたか、そしてそこには作家のどのような問題意識が反映されているのかを考察するものである。
 「フォルク」とは、通常「民族」あるいは「民衆」と訳される概念である。しかし、19世紀初頭の作家たちが示したフォルク観には、実際にはそれらの訳語に回収しきれない諸要素が含まれている。本書はそうした多面的・複層的なフォルク観を、当時のテクストに即してつまびらかにする。
 近代国民国家の形成が遅れていた18世紀後半のドイツ語圏で、国民の基盤となるものが求められたとき、フォルクはドイツ特有の概念として理想化されたと考えられている。それまでは単なる「下層民」を表す言葉であったフォルクは、イギリスの産業革命やフランスの政治革命に由来する社会構造の変化に対し、「ドイツ人」としてのアイデンティティが模索されるなかで新たな意味を持ったのである。一つにはドイツに固有の文化や歴史を共有する集団として(民族)、もう一つには近代の負の側面、すなわち生活様式の極端な合理化や均質化といった弊害を被っていない、純粋な生を体現する理想像として(民衆)。
 だが、そうした「下層民」から「民族」あるいは「民衆」へというフォルク概念の格上げは、かならずしもなめらかに進んだわけではない。フォルクという言葉が政治的な意図を帯びて用いられるようになったとされる19世紀初頭にも、その言葉は使用者の問題意識を複雑に反映した形で多義的に用いられている。むしろこうした多義性にこそ、フランス革命からナポレオンの台頭を経て人類史上初の国民戦争へとつながっていく、激動の時代の人々の思考を正確に捉えるためのヒントを見出すことができるはずである。
 こうした観点から、本書はフォルクの多義性、より正確に言えば、一九世紀初頭の作家がフォルクという言葉を用いながら、しかし「民族」や「民衆」という理想的概念とは一括りにできない何かを表現した部分にこそ注目したい。それを明らかにするために、具体的には、ハインリヒ・フォン・クライスト(1777―1811)、ヨーゼフ・ゲレス(1776―1848)、ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ(1788―1857)という三人の作家たちを対象に、その戯曲、小説、表明文、政治論文、手紙から導き出されるフォルク観を分析する。〔以下略〕
(本書序章「フォルク概念の変容とその問題」より)

著者プロフィール

須藤秀平  (ストウ シュウヘイ)  (

1987年山形県酒田市生まれ。2014年京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学。京都大学博士(人間・環境学)
日本学術振興会特別研究員、京都府立大学文学部共同研究員を経て、2019年4月より福岡大学人文学部講師。

上記内容は本書刊行時のものです。