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土地規制法で沖縄はどうなる?
利用される「中国脅威論」、軽視される人権
- 初版年月日
- 2022年4月28日
- 書店発売日
- 2022年4月25日
- 登録日
- 2022年3月16日
- 最終更新日
- 2022年3月16日
書評掲載情報
2022-06-25 | 東京新聞/中日新聞 朝刊 |
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紹介
総理大臣が必要と認めれば、基地などの「重要施設」の周辺や国境離島の土地・建物の所有者・利用者の「調査」や「情報提供」を求めることができるとする「土地規制法」が2021年6月16日成立。
「立法事実」はない、安全保障上の不安を訴える「意見書」もない! 防衛省は「自衛隊の運用等に具体的に支障が生じるような事態は確認されていない」と答弁! 勧告・命令・罰則の対象となる、基地などの重要施設の「機能阻害行為」が何なのかも明示されない!!
在日米軍の専用施設が集中する沖縄県は、この法律で区域指定されれば、全県民が調査対象とされる。沖縄戦の混乱の中で土地が米軍に強制収用され、日々、事件・事故の「基地被害」に苦しむ沖縄県民の側が潜在的な犯罪者とされる。調査されるべきは、「被害」を生み出す側のはずだ。
わずか26時間の国会審議で成立した「稀代の悪法」。そう呼ばれる理由、法案の背景にある排外主義、野党の追及で明らかになった政府のごまかし答弁、そして、米軍基地の集中と自衛隊配備の進む沖縄への影響をわかりやすく解説。沖縄在住の市民、ジャーナリスト等のコラムも収録。
目次
はじめに
*
1 突出した高市早苗議員のブログ
10年越しの立法化
「外国資本から重要施設を守れ」の雑な危機扇動
中国の国防動員法とは
「国防力を高めたい」=嫌中・嫌韓利用の印象操作
権力的な法律
コラム 台湾有事は日本の有事???(布施祐仁)
2 どこから切っても憲法違反――稀代の悪法と呼ばれる理由
立法事実がない
政府も根拠を示せていない
何をする法律か?
施設対象が限定されていない
調査対象者も広がっていく
調査内容もどこまでも広がっていく
調査手法も限定がない。「密告」も
調査は恒常的に行われる
政府を全面信頼することを前提にした法律、国会は責務を放棄
個人情報漏洩の可能性も
「勧告」を受けて初めてアウトとわかる「機能阻害行為」
「機能阻害行為」が何かについては閣議決定で
あいまいな「機能阻害行為」で処罰
電波法、航空法、既存の法律でカバーできるのに
既存の法律よりも犯罪の範囲を広げたい思惑
「行為」がなくても「おそれ」があればいい――共謀罪の発想
国民は「権利主体」であって「調査対象」ではない
現代の「全権委任法」(!?)
日本国憲法の主権者とは
沖縄の声はまたも無視?
憲法成立の歴史を忘れた土地規制法
大田昌秀知事の代理署名拒否
コラム 母親からみた土地規制法と沖縄(与那城千恵美)
3 わずか26時間の国会審議
軽視された参考人意見
立憲民主党の態度決定が遅かった
政府は立法事実についてごまかし答弁をくり返した
自衛隊の運用に支障は生じていない、と防衛省
立法事実があるかないかも含めて調査することがこの法案の目的、と政府
安全保障上の不安を訴える意見書はなかった
地方議員からも反対の声が上がる
現行法で十分
国民民主党は賛成
立法の根拠は崩れたが、排外主義が利用された
立法の根拠は答えない、とにかく安全保障上必要なのだ
法案と関係のない「意見」が許されてしまう国会
「権力」に対するイメージ
自衛隊情報保全隊の違法な情報収集活動
審議されなかった問題点――22条
参考人意見でのターゲットは公明党と国民民主党
官僚の人たちに一定の影響を与えることはできた
法律は成立したが、継続的な監視を
コラム 国会審議から見る土地規制法(山添 拓)
4 土地規制法の第一のターゲットは沖縄
尖閣諸島の国有化も背景のひとつ
沖縄は全域が区域指定可能
基地被害防止のための市民監視活動が「調査」対象に
基地「被害」側を潜在的な犯罪者とみる発想
土地利用の調査にとどまらない
「この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは」
「その他の協力を求める」が市民運動の弾圧に用いられる可能性
地方自治体が内閣総理大臣の下請けにされる可能性
「中国脅威論」の高まりから「沖縄シフト」へ
自衛隊の存在意義のために利用された「中国脅威論」
南西諸島への自衛隊配備と地元
だまし討ち的な建設予定地の決定
「民意」が確認されないまま進む石垣島への自衛隊配備
土地の買い取り申し入れが可能に――23条
「土地収用法」は防衛にかかわる事業は収容の対象として認めていない
土地収用法の原則に対する尊重が求められる
「反戦地主」がターゲットに――附帯決議16
発動させない、改悪させない
「要請」という名の事実上の強制
首長の抵抗を市民が支えなくてはならない
首長選挙は大事
政府に地元の声を無視させない
「安全保障のために」の絶対化は憲法上許されていない
コラム 恣意的な運用 イエローラインで先取り(島袋貞治)
5 これからの市民運動――民主主義を強化するために
野党議員との協働
メディアが問題点を伝えることは重要
SNSも駆使しながら、どう無関心層に届けるのかが課題
コラム 沖縄の基地問題解決のために小金井で何ができたか(片山かおる)
コラム 自衛隊配備の進む石垣島から(宮良麻奈美)
*
◎資料1 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律
◎資料2 附帯決議 衆議院/参議院
◎資料3 廃止を求める意見書(沖縄県中頭郡北谷町議会)/即時廃止を求める意見書(沖縄県名護市議会)
上記内容は本書刊行時のものです。