版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊 ラノベ
もう一つの空海伝 丸谷 いはほ(著/文) - 海風社
.

もう一つの空海伝

発行:海風社
B6判
216ページ
上製
定価 1,700円+税
ISBN
978-4-87616-041-9
Cコード
C0013
一般 単行本
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2016年9月
書店発売日
登録日
2016年7月26日
最終更新日
2016年10月13日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

一族の期待を一身に担った真魚(後の空海)は中央の官僚を目指し、旧都平城京の大学寮に入学を許されたが、ある日、大安寺の山門前で一人の沙門に呼び止められ、吉野の比蘇寺へ行けと告げられる。
仏教修行のため、大学を出奔した真魚は一路、比蘇寺(吉野)へと向かう。
そこからさらに「一度聞いたことは決して忘れず、どんな難解な内容でもたちどころに理解する」という密教の秘法中の秘法「求聞持法」を体得すべく修行地を求めて、前鬼と名乗る蔵王権現の修験僧と旅に出る真魚。
その道中、宇智郡須恵神宮寺境内の「内市」で、後に空海を経済面で強力にバックアップしたとされる丹生族の女人と運命的な出会いを果たすことになるが・・・・

目次

まえがき ………………………………………4
大学出奔 ………………………………………13
吉野比蘇寺 …………………………………31
宇智郡内市 …………………………………47
吉野蔵王権現 ……………………………67
丹生族の女人 ……………………………79
金岳と銀岳 …………………………………93
銅岳白雲庵 …………………………………115
再  会 ……………………………………139
紀伊高天原 …………………………………173
入唐に向けて ………………………………187
「あとがき」に代えて ………………196

前書きなど

まえがき

平成十三年夏のことになります。
 西吉野の光明寺住職村岡空(くう)氏、郷土史家の辻本武彦氏のお二人に「空海の道」についてお話を伺ったことがありました。

 村岡氏から ―――
 京の大学を抜け出した空海が真っ先に向かった先は比蘇(ひそ)寺だったと思う。そこは渡来僧が多く居て治外法権的な寺であった。大学を無断で飛び出した行為はひとつの犯罪行為とも言えたので、そこへ逃げ込むのは空海にとって都合が良かったのではないか。比蘇寺は求聞持法(ぐもんじほう)の道場にもなっていたので、空海はそこで求聞持法の手ほどきを受けたのだろう…と。
 辻本氏はこの意見に同意され、さらに空海が修行に向かった高野山への道筋 について ―――
 西吉野から高野山へ行く道は、今の奥駆け逆峯(ぎゃくぶ)修行に一部を使う道筋とは違う道が古代にあった。それは「聖なる道」で、現在の吉野山を通らず、下市から南に向かい、平原の熊野神社を経て銀峯山(ぎんぶざん)へ上り、波宝(はほう)神社の社頭を通る道である。昔、高野山への奥駆けの折には、先ず波宝神社に参詣するという習わしであった。このような慣習があったということは、「空海が初めて高野山へ向かった時と同様の道を辿るということではないか」などというようなことを両氏が話してくださったのです。
 
 この時、吉野での修行時代の「若き空海」をいつかは書いてみようと思ったのでした。
 それから十数年を経た昨年、空海ゆかりの地を訪ね歩き、空海について書かれた資料(本・史料)等、ひと通り読み直しました。でも、宗教者の枠を超えた偉大な人物、空海はとても描けません。
 そこで、「自分が進むべき学問の道に悩み、修行に明け暮れ、恋にも悩む」等身大の青年修行僧空海を、物語(フィクション)として書いてみようと思いたちました。
 さて、本編に進むにあたり、ここで空海の周辺について述べておきたいと思います。

●空海の生誕地
 空海は讃岐国多度郡(さぬきのくにたどのこおり)(香川県善通寺市)で生れたとされていますが、高野山大学・武内孝善教授は、空海畿内誕生説を唱えておられます。根拠が確実で説得力のある説だと同感できるので、ここでは同様に河内国渋川郡跡部郷(かわちのくにしぶかわのこおりあとごう)とします。

●空海の幼名
 弟子や信徒に遺したとされる『御遺告(ごゆいごう)』や、高弟の真済(しんぜい)が著わしたとされる『空海僧都伝(くうかいそうずでん)』にも、空海の幼名は真魚(まお)であったとは記されていませんが、この物語ではその他の伝記などと同様の真魚とすることにしました。
 さて、この「真魚」ですが、都の大学を出奔して二十四歳で『聾瞽指帰(ろうこしいき)』を著わすまでと、それから三十一歳で入唐(にっとう)するまでの消息がよく分かっていません。

●大学出奔と修行
 真魚(空海の幼名)が大学に入った年齢ですが、当時、国学も大学も入学可能年齢は十三~十六歳という規定があったはずです。
 それで真魚は十三歳で国学に入り、十六歳の制限ぎりぎりで大学に転学したのではないかと思うのです。国学の授業がもの足らなかったのでしょう。
 本によっては、空海は十八歳で特別に許可され大学入ったなどとされているのもありますが、律令制のこの時代、いくら伊予親王の侍講(じこう)阿刀大足(あとのおおたり)が働きかけようと、佐伯今毛人(さえきのいまえみし)が嘆願しようと、それは無理というものでしょう。
しかし、実際の勉学はというと、四、五歳の幼年期から始めているはずだと私はみています。
 さて、大学を出奔した真魚は、二十四歳で『聾瞽指帰』を著わし三十一歳で入唐していますが、大学を中退してからの約四年間、そして二十四歳以降を合せた十年ほどが不明なのです。
 この間に山岳修行をしていたのだろうといわれていますが、実際どのような生活をしていたのでしょう。
 不詳のこの十年間が最も興味深いところです。そこで、謎多き若き空海のこの十年を物語にしようとしたのが「もう一つの空海伝」です。

●登場人物
 真魚 (まお) 無空とも名乗る若き日の空海
 阿刀大足(あとのおおたり) 空海の伯父、伊予親王の侍講
 伊予親王 (いよしんのう) 桓武天皇の皇子
 泰信(たいしん) 求聞持法を示した唐僧、具足戒の師
 戒明 (かいみょう) 大安寺の沙門、沙弥戒の師
 前鬼 (ぜんき) 比蘇寺で知り合った優婆塞
 ハニメ 金山寺・金岳八幡宮の巫女
 ニホメ 海部峯寺・銀岳神蔵宮の巫女
 角行 (かくぎょう) 桜元坊の主、ニホメの兄
 恵真 (えしん) 金岳・金山寺の僧
 覚良 (かくりょう) 銀岳・海部峯寺の僧
 井光乗(いのこうじょう) 銅岳・白雲庵の丹生族長老
 護名 (ごみょう) 南法華寺で逢った元興寺僧
 狩場太郎(かりばたろう) 伊都・丹生族の犬山師
 小覚(しょうかく) 金岳・金山寺の見習僧
 その他 空海の縁者、丹生族の男たち

●空海年表
 宝亀五年(七七四)六月空海誕生 空海一歳
 天応元年(七八一)第五十代、桓武天皇即位 空海八歳
 延暦三年(七八四)十一月、長岡京に遷都される 空海一一歳
 延暦四年(七八五)早良親王廃される 空海一二歳
 延暦五年(七八六)讃岐国、国学に入る 空海一三歳※
 延暦七年(七八八)国学を中退して平城に上る 空海一五歳※
 延暦八年(七八九)大学に入る。明経道 空海一六歳※
 延暦九年(七九〇)佐伯今毛人死す 空海一七歳
 延暦十年(七九一)大学を出奔 空海一八歳※
 延暦十三年(七九四)平安遷都 空海二一歳
 延暦十六年(七九七)『聾鼓指帰』を著す 空海二四歳
 延暦十七年(七九八)戒明から沙弥戒を受ける 空海二五歳※
 延暦二十三年(八〇四)四月、泰信から具足戒を受ける 空海三一歳※
 延暦二十三年(八〇四)五月遣唐使船に乗船、出港 空海三一歳
 大同元年(八〇六)第五十一代、平城天皇即位 空海三三歳
 大同元年(八〇六)帰国、『御請来目録』提出 空海三三歳
 大同四年(八〇九)第五十二代、嵯峨天皇即位 空海三六歳
 弘仁二年(八一一)乙訓寺別当に任ぜられる 空海三八歳
 弘仁七年(八一六)高野山の地を賜う 空海四三歳
 弘仁十二年(八二一)讃岐国満濃池の修築 空海四八歳
 弘仁十四年(八二三)第五十三代、淳和天皇即位 空海五〇歳
 天長元年(八二四)造東寺別当に任ぜられる 空海五一歳
 天長七年(八三〇)『秘密曼荼羅十住心論』を著述 空海五七歳
 天長十年(八三三)第五十四代、仁明天皇即位 空海六〇歳
承和二年(八三五)高野山において入定 空海六二歳
※印は 作者の想定

版元から一言

のちに「天才」といわれた空海は24歳で『聾鼓指帰』を著し、31歳で入唐します。
この間を含む約10年間の仏教修行時代が、資料も少なく、空海の生涯の中でも最も謎が多いとされています。
進むべき学問の道に悩み、修行に明け暮れ、恋にも悩む、青年僧、空海の青春をロマンあふれる筆致で描いた歴史物語です。

著者プロフィール

丸谷 いはほ  (マルヤ イハホ)  (著/文

丸谷いはほ(本名/丸谷 巌)
昭和20年5月29日、奈良県五條市西吉野生まれ
昭和39年3月、高校卒業後、会社勤務の傍ら大学通信教育で学ぶ
平成21年3月、佛教大学文学部(通信制)卒業
平成28年現在、よろず相談処・彌栄工房自営中

上記内容は本書刊行時のものです。