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武州世直し一揆
- 書店発売日
- 2017年2月22日
- 登録日
- 2017年1月20日
- 最終更新日
- 2017年1月20日
紹介
本書『武州世直し一揆』の刊行は、同一揆の一五〇周年を迎え、地元の方々が、「忘れてはならない地域の歴史」を記念する会を開こう。との呼び掛けに応じ、「近世村落史研究会」は準備会と大会の講演に出席、感動と新たな研究へのエネルギーを得た。今回、歴史学研究会の許可をえて、補訂のうえ本書に掲載したこれらの論文は「近世村落史研究会」の共同研究の成果であり、出発点でもあった。会員は一揆の経過、打毀しの内容を具体的に精査し、成立から展開、解体の総過程を明らかにすることができた。そして展開の段階に「世直し」的世界の成立を確認したのである。それは一揆勢が独自の論理と強制関係によって構築したものの検証であった。現代日本社会は、一九五五年(昭和三〇)から七〇年代初めまでの高度経済成長から、八〇年代後半から九〇年代初頭にかけて起ったバブル経済を経過し、その崩壊により、長期の経済的不況に襲われ、その苦しみに喘いでいる。この不況は、経済的・社会的格差を生み出し、いわゆる中産階級が分解し、一部の富裕層と広範な貧困層を増大させている。それは、まさに幕末期の豪農─半プロ(貧困層)の再来を思わせるものがあるといえる。今日の危機的状況からみて、幕末の「世直し」を歴史的に検討してみることは、価値あることではないだろうか。
目次
武州世直し一揆 目 次
はじめに森 安彦 1
第一部 幕末の社会変動と民衆意識──慶応二年武州世直し一揆の考察──
「世直し」層の生産条件と階層分化 大舘右喜 7
生糸貿易と農村窮乏 鈴 木 研 33
「世直し」一揆の展開 森 安 彦 45
武州世直しの行動と意識 大舘右喜 92
第二部 研究論文
「世直し」とは何か─「武州世直し一揆」の検討から─ 森 安 彦 121
「武州世直し一揆」像の再検討 森 安 彦 140
─一揆蜂起の上名栗村における新出史料を中心に─
幕藩制崩壊期における武州世直し一揆の歴史的意義 山中清孝 184
武州世直し一揆における打ちこわしの様相 斎藤洋一 212
武州世直し一揆のいでたちと得物 斎藤洋一 245
第三部 研究ノート
慶応二年武州世直し一揆再論 大舘右喜 305
武州世直し一揆被捕縛者の赦免歎願 斎藤洋一 333
上州方面における慶応二年世直し一揆展開過程の再検討 佐藤孝之 373
武州一揆と比企郡高野倉村 千代田惠汎 390
「武州世直し一揆」と信濃国の動向 森 安 彦 409
「世直し」一揆考─打ちこわしと施米・施金と焼払い─ 森 安 彦 415
武州世直し一揆の一考察─所沢、東久留米周辺の状況を中心に─ 山中清孝 424
武州一揆と道─所沢北東部への波及 佐藤啓子 433
幕末期武州高麗郡における村方出入 押木寿子 442
武州世直しと豪農 大舘右喜 458
第四部 史料紹介
坂戸周辺の「武州世直し一揆」─史料で語る打毀し─ 千代田惠汎 479
慶応二年「上武打毀一条見聞録」の紹介 佐藤孝之 495
「長州一件附武州上州百姓騒動」について 押木寿子 524
茨城県で発見した武州世直し一揆史料 斎藤洋一 530
「世直し一揆」像の虚実 森 安 彦 542
武州世直し一揆の「ちょぼくれ」 大舘右喜 547
付表1 慶応二年六月武州世直し──一揆勢の身元判明者一覧表 近世村落史研究会編 592 (3)
付表2 慶応二年六月武州世直し──一揆の対象者一覧表 近世村落史研究会編 574 (21)
あとがき大舘右喜 595
写真提供 大舘勝治・岡本一雄・川中正憲・島田 稔・田中定一・永野正豊
上記内容は本書刊行時のものです。