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移民が移民を考える フェリッペ・モッタ(著) - 大阪大学出版会
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移民が移民を考える (イミンガイミンヲカンガエル) 半田知雄と日系ブラジル社会の歴史叙述 (ハンダトモオトニッケイブラジルシャカイノレキシジョジュツ)

歴史・地理
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A5判
縦210mm 横145mm 厚さ30mm
318ページ
上製
定価 5,500円+税
ISBN
978-4-87259-759-2   COPY
ISBN 13
9784872597592   COPY
ISBN 10h
4-87259-759-1   COPY
ISBN 10
4872597591   COPY
出版者記号
87259   COPY
Cコード
C3020  
3:専門 0:単行本 20:歴史総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年12月25日
書店発売日
登録日
2022年12月7日
最終更新日
2023年1月13日
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紹介

移民による移民史――日系ブラジル移民は自らの生きた歴史をどのように叙述したか

本書は、子ども移民としてブラジルに渡り、日系ブラジル社会について生涯にわたり思考し、表現した画家・移民知識人である半田知雄(1906―1996)の芸術的営為、思想を跡づけるものである。これまで参照されてこなかった豊富な一次資料を活用し、日系ブラジル社会において「移民」という歴史的事象がいかに論じられてきたかを追うとともに、半田に注目することにより移民知識人の姿を活写し、日系ブラジル移民史研究の新たな展開を拓くことを目的とする。移民研究者が考え始めるよりもはるかに早い段階から、移民自身は自らの存在と歴史に向き合っていた。その蓄積に敬意を払いそれを踏まえる立場から移民史を考えたい。移民が移民を考え、移民を記述する過程と言説をつぶさに検討することにより、移民たち自身によって生きられた移民史を描き出し、日系ブラジル移民史の叙述の更新に貢献することが本書の目的である。

はじめに、半田の略伝を記したうえで、先行研究の検討、研究課題の設定を行い、全体の構成を示す。

第1章では、ブラジル日系社会における知識人グループの存在と言論活動を、戦前の雑誌を素材に分析し、移民知識人グループの重要な営為としてこれらの資料を位置づける。また、日系知識人の組織的・思想的系譜を探求する。

第2章では、半田が生涯にわたって繰り返し立ち戻った少年時代の記憶をめぐる記述をエゴ・ドキュメント論を起用して論じる。珈琲農園=「ファゼンダ」で子ども移民として過ごした時期は、のちの主著『移民の生活の歴史』と〈移民絵画〉において表象される。半田は自身の少年期をめぐって繰り返し叙述しているが、ここでは、戦前戦後にわたる3種類のテキストに注目し、そこにおいて記憶がいかに再構築され、物語=ナラティヴとして再解釈されているかを論じる。

第3章では、画家としての半田知雄の活動に注目する。半田の執筆活動と絵画制作を繋ぐ軸は「生活」に対するこだわりである。自画像や風景画などの画業を紹介するとともに、〈移民絵画〉を、移民自身が自らの「生活」を表象しその表象が移民の記憶として受容されていくプロセスを叙述する。

第4章では、ブラジル日系社会史における最大の出来事である戦争と敗戦の経験を取り上げる。戦前の国家主義的政策を発端として、戦後の「勝負抗争」の深い軋轢、さらに「他者」として立ち現れた戦後日本からの移民との出会いに至るまでの戦前移民の悩みが深刻化する状況を丁寧に追う。さらに日系社会の戦後「正史」の叙述過程とその内容を分析し、その正史からこぼれ落ちる経験・感情・記憶を汲み取る方法として、移民文学の重要性を『コロニア万葉集』に即して論じる。

第5章では、文化伝承・言語・移民心理という3つのキーワードをたてて半田知雄の思想を体系的に論じる。本章では、半田の思想を貫く問題として移民心理を検証し、日本の人々には理解してもらえない精神状態を彷徨する生を生きるしかないという半田の思索を追跡する。

目次

序章 半田知雄研究から日系ブラジル社会の思想史への展開
第一節 本書の課題―日系ブラジル移民の歴史における半田知雄
第二節 半田知雄とは誰か
第三節 本書の視座と先行研究
第四節 依拠する史料と方法
第五節 本書の構成

第一章 内側から移民を考える―移民知識人と日系ブラジル社会の歴史の叙述
小序
第一節 日系ブラジル社会と知的営為―「土曜会」を中心に
第二節 生活としての歴史―『移民の生活の歴史』の世界
小括

第二章 歴史叙述と物語の復権―少年時代をめぐる記述と表象
小序
第一節 当事者としての移民史
第二節 トポスとしての少年期
小括

第三章 描画される記憶―移民絵画論
小序
第一節 「絵かき」としての自己意識
第二節 移民絵画論
小括

第四章 「戦争」の経験と記憶・残滓・歴史
小序
第一節 「移民の悩み」とは何であったか
第二節  戦争の想いを抱えて―日系ブラジル社会と「戦後」の問題領域
小括

第五章 対抗する思想―文化伝承・言語・移民心理
小序
第一節 移住の意義を問いて―文化伝承の問題①
第二節 日本語を抱えて終わりなき旅に出る―文化伝承の問題②
小括

おわりに 新しい移民知識人研究に向けて
半田知雄と歩んで10年
むすびにかえて

参考文献
半田知雄年表
謝辞
初出一覧
本書掲載作品リスト
付録Ⅰ:『文化』収録コンテンツ一覧
付録Ⅱ:『時代』収録コンテンツ一覧
付録Ⅲ:『研究レポート』収録コンテンツ一覧
付録Ⅳ:ブラジル日本移民史料館所蔵の半田知雄絵画作品
索引

著者プロフィール

フェリッペ・モッタ  (フェリッペ モッタ)  (

1985年ブラジル・サンパウロ市生まれ。京都外国語大学外国語学部ブラジルポルトガル語学科講師。2009年サンパウロ大学歴史学科卒。2012年大阪大学大学院文学研究科修士(文学)。2018年大阪大学大学院文学研究科博士(文学)。大阪大学大学院文学研究科特任助教を経て現職。専門分野は、日系ブラジル移民史。
主要な業績は「異境での戦時体験を記録して ―マリオ・ボテーリョ・デ・ミランダと岸本昂一を事例に―」(『海外移住資料館 研究紀要』16, 153–170, 2022年4月)、Japanese Studies in Brazil: History, Present, and Prospects(Osaka University Anthology of Transborder Cultural Studies 4, 17–32, 2021年3月)、『移民の町サンパウロの子どもたち』(ドラウジオ・ヴァレーラ著、 松葉隆、北島衞、神谷加奈子訳 、伊藤秋仁監訳、ソアレス・モッタ・フェリッペ・アウグスト監修、行路社、2018年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。