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大伴家持
都と越中でひらく歌学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年2月28日
- 書店発売日
- 2025年2月25日
- 登録日
- 2025年2月4日
- 最終更新日
- 2025年3月7日
紹介
家持の歌学はどのように形成されたのか。
大伴書持、池主や田辺福麻呂らとの交流過程で、家持の歌には歌学意識が強く反映されていく。
その様相を、題詞・本文・左注が織りなす世界から読み取り、新鮮な家持像を浮かび上がらせる。
目次
凡例
序章 本書の構成と概要
一 はじめに
二 本書の構成と概要
第一章 巻八の夏雑歌群
一 はじめに――特異な題詞
二 「石竹花歌」
三 「晩蝉歌」
四 微妙な暦日への感興
五 むすび
第二章 大伴書持と大伴家持との贈報歌群
一 はじめに
二 パラテクストが描き出す世界
三 パラテクスト「四月二日」に枠取られる世界
四 パラテクスト「霍公鳥を詠める歌二首」に枠取られる世界
五 書持「贈」歌の意味
六 家持「報送」が創り出す世界
七 家持の序文的題詞
八 欝結の緒を散らさまくのみ
九 むすび
第三章 安積皇子挽歌論
一 はじめに
二 安積皇子挽歌と石見相聞歌・高市皇子挽歌
三 安積皇子挽歌と日並皇子挽歌
四 安積皇子挽歌の構成
五 安積皇子挽歌と久邇京讃歌
六 むすび
第四章 二上山の賦
一 はじめに
二 「二上山の賦」への階梯
三 パラテクストとしての「賦」
四 パラテクストとしての「依興」
五 むすび
第五章 田辺福麻呂の越中家持訪問と福麻呂歌集の追補――家持歌と万葉集編纂にもたらした意味――
一 はじめに
二 福麻呂により届けられた資料
三 巻十九家持歌と福麻呂歌集
四 処女墓への追同歌
五 むすび
第六章 大伴家持が幻視したをとめ
一 はじめに――上代文学と妖怪・幽霊・怪異
二 「桃の花」と「堅香子の花」と「をとめ」
三 「娘子に贈れる歌」
四 井戸に立つ幻想の「をとめ」
五 むすび
第七章 家持が過ごした久邇京時代の催馬楽「沢田川」――「沢田川 袖つくばかり 浅けれど 恭仁の宮人 高橋わたす」――
一 はじめに
二 沢田川=泉川説
三 沢田川=泉川支流説
四 「いひなし」説
五 久邇京に架かる四つ目の橋
六 むすび――「袖つくばかり 浅けれど」
第八章 家持時代の「書かれる歌」と「詠唱される歌」との〈距離〉
一 はじめに
二 音読と黙読との関係
三 万葉官僚歌人達を取り巻く、歌・声が響く環境(1)「宣命」
四 万葉官僚歌人達を取り巻く、歌・声が響く環境(2)「宣」と「読 申公文」
五 「書かれる歌」そして「詠唱される歌」
六 むすび
補論 詠まれる歌・書かれる歌、そして読まれる歌――万葉集から考える――
一 はじめに
二 読まれる歌
三 書かれる歌
四 詠まれる歌
五 むすび
第九章 都が讃美される歌――「藤原宮役民作歌論」――
一 はじめに
二 巨勢道とは
三 知らぬ国 寄し巨勢道より
四 巨勢――序詞と被序詞
五 構造と主題
六 むすび
第十章 『万葉集』と東アジアの恋愛詩
一 はじめに
二 『詩経』と『万葉集』の冒頭「雑歌」
三 『文選』と『万葉集』「相聞」
四 『玉台新詠』と『万葉集』「相聞」長歌
五 むすび
終章 本書の成果と課題
一 はじめに
二 各章を振り返る
初出一覧
あとがき
事項・人名/万葉集歌番号索引
前書きなど
研究を進める中で、どうしても気になることがある。それは、家持らの歌が制作されるときにどのように「詠まれる歌」であったのか、また贈られた歌や資料としての歌がどのように「読まれる歌」であったのか、そして、編纂や贈歌としてどのように「書かれる歌」であったかということである。そのそれぞれのときに、歌は、声に出して詠まれたのであろうか。……ただ、この「詠まれる歌」「読まれる歌」「書かれる歌」については、峻別して議論が行き届いているとは、言えないように思われる。……本書の後半は、この三面を意識したものとなっている。――「序章 本書の構成と概要」
若き家持は、藤原広嗣の乱に端を発した聖武彷徨や久邇京遷都など、激動の歴史の中にあった。また、巻十七以降の末四巻では、宴席歌も多い。歴史やその場から完全に歌を切り離して、家持歌を考えることは、必ずしも有効とは言えないであろう。しかし第二章を中心に、なるべく『万葉集』というテクストに向かい合いながら、題詞が括る本文や左注が枠どる本文という、パラテクスト的要素を重要視し、『万葉集』(家持歌)が、語るものが何であるかを探ったつもりである。その集積の中からでも、浮かび上がってくる家持像というものがあるものと考えている。一三〇〇年前ではあるが、同じように和歌・文学に興味を持ち、その時代を生きていた家持を甦らせたい欲望は禁じ得ない。――「終章 本書の成果と課題」
上記内容は本書刊行時のものです。