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REKIHAKU 特集・顔・身体をもつ道具たち
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年2月28日
- 書店発売日
- 2024年2月28日
- 登録日
- 2024年1月25日
- 最終更新日
- 2024年2月28日
紹介
国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。
第11号の特集は「顔・身体をもつ道具たち」。
どうしてこの造形になったんだろう!
実用的で機能的なカタチをもった道具に顔や身体が付されていることが時期・地域を超えて世界各地に見られる。この〈顔・身体をもつ道具たち〉にはどんな意味があるのか。
顔が付いた縄文土器を研究している国立歴史民俗博物館・中村耕作が、他の文化では顔が付いた土器からどのような時代像が描けるかを考えた野心的特集。
社会学・心理学・文化人類学・歴史学・考古学などさまざまな学問分野から、〈顔・身体をもつ道具たち〉に迫る。新たな歴史像は果たして見えてくるのか。
特集執筆は、吉田ゆか子/山口真美/中村耕作/高橋康介/上野祥史/松尾恒一/今泉和也/香川雅信。
特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。
歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!
目次
特集・顔・身体をもつ道具たち
【特集鼎談】
顔が付いたモノから何を明らかにできるか
―考古学・心理学・文化人類学から考える―
吉田ゆか子(東京外国語大学)・山口真美(中央大学)・中村耕作(国立歴史民俗博物館)
〈顔・身体をもつ道具たち〉を比較することで何がわかるのだろうか。縄文土器とバリの仮面を例に、考古学・心理学・文化人類学の三つの学問の見方を紹介しながら顔・身体をめぐるさまざまな文化を考える。
1 人は「顔を見る」プロフェッショナル●COLUMN
「顔を見る」の認知心理学
(高橋康介)
2 古代の造形は「ひと」の姿をどう表現したか
「もの」が「ひと」をまとうこと─古墳時代のあとさき
(上野祥史)
3 正面に獅子の顔が付けられた大型帆船
〈鳥船〉、顔のある船─明清代の唐船と琉球船
(松尾恒一)
4 それは特殊な象徴性や社会的機能を持っていた●COLUMN
マヤ文明における「顔・身体をもつ道具」の社会分布
(今泉和也)
5 妖怪になって顔や体が生じたのか?
「付喪神」はいなかった─日本における「器物の怪」の不在について
(香川雅信)
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たかが歴史 されど歴史
弥生時代にイエネコはいたのか(藤尾慎一郎)
博物館マンガ 第10回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館
博物館の虫菌対策!(鷹取ゆう)
石出奈々子のれきはく!探検 第10回
団地ビビディ・バビディ・ブー(石出奈々子)
フィールド紀行
加耶の史跡を探訪する 第1回
(高田貫太)
誌上博物館 歴博のイッピン
地獄をコミカルに描く
耳鳥斎筆 地獄図巻
(大久保純一)
歴史研究フロントライン
交流から探るオホーツク文化・擦文文化とアイヌの文化
(鈴木琢也)
EXHIBITION 歴博への招待状
企画展示 「歴博色尽くし」
(鈴木卓治)
SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
「環境決定論」批判を乗り越えるために
(土山祐之)
歴史デジタルアーカイブ事始め 第9回
国立国会図書館
次世代デジタルライブラリー
(橋本雄太)
くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の桜草」のご案内
博物館のある街
宮城県気仙沼市リアス・アーク美術館
「食」のまちの美術館
(萱岡雅光)
くらしの由来記
大豆から ピーナッツへ(川村清志)
研究のひとしずく
科学の目でみる歴史資料 第3回(完)
錦青磁の胎土分析による産地推定
(小瀬戸恵美)
Kaleidoscope of History
Artificial Baits for Skipjack Pole-and-Line Fishing
(松田睦彦)
歴博友の会 会員募集
英文目次
前書きなど
特集趣意文(中村耕作)
土偶・埴輪・人形・仏像などの〈顔・身体表現に特化したモノ〉とは別に、実用的で機能的なカタチをもった道具に顔や身体が付されていることが時期・地域を超えて世界各地に見られる。この〈顔・身体をもつ道具たち〉にはどんな意味があるのだろうか。道具である以上、そのカタチから機能を推定でき、どのような場面で、道具に顔・身体イメージが付加されたのかを探ることが可能であろう。私はこれまで、顔が付いた縄文土器を研究し、縄文時代の中でも儀礼具が多様化する時期に出現することが多いこと、皆で囲める大きな鍋に顔が付く時期と、少人数でしか使えない小さな土瓶に顔が付く時期とでは、顔が付く土器をめぐる社会状況が異なることなどを考えてきた。では、他の文化では顔が付いた土器からどのような時代像が描けるのだろうか。本特集は、〈顔・身体をもつ道具たち〉という視点から文化の特徴を考えていきたいと企画したものである。
顔を含む「身体」や「モノ」は、社会学・心理学・文化人類学・歴史学・考古学などさまざまな学問分野で注目されているキーワードである。心を上位に置く心身二元論や人間中心主義を脱し、人間・非人間の区別なく、モノ・身体・心のさまざまな関わり方から社会・文化を捉え直すものであり、内外を媒介する「身体」、特に「顔」が重要な位置を占める。多様な価値観が交錯する現代社会を生きるために不可欠な概念となっている。冒頭には、個々の歴史的脈絡を越えた広い視野でこの話題を位置付けるために、心理学の山口昌美氏・文化人類学の吉田ゆか子氏との鼎談と、高橋康介氏による顔認知の心理学の紹介を置くことにした。
しかし、その後の各テーマについては選ぶのが予想外に難しかった。古墳時代以降の日本文化ではこうした造形がなかなか見つからないのである。そこで、むしろその「不在」をテーマに上野祥史氏、いわゆる付喪神などの「フィクション」上の造形について香川雅信氏に論考を寄せていただいた。日本におけるわずかな実物としては九州~沖縄の鳥船について松尾恒一氏、縄文と同じく顔が付く土器の多い中南米の考古学的事例としてマヤを例に今泉和也氏に紹介をいただいている。
結果として、本特集は、〈顔がついた道具たち〉を持つ社会と希薄な社会の存在を浮き彫りにすることとなった。後者はさらに、上野氏によって、人物埴輪や人面墨書土器、仏像などの〈顔・身体表現に特化したモノ〉を持つ六世紀以降と、それ以前の全く希薄な時期という違いが指摘された。また、香川氏や松尾氏の論考からは、中国と日本との違いが見出せる。
本特集の〈顔がついた道具たち〉という視点が、新たな歴史像を描き出すきっかけとなれば幸いである。
上記内容は本書刊行時のものです。