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西鶴奇談研究 梁 誠允(著) - 文学通信
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西鶴奇談研究 (サイカクキダンケンキュウ)

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発行:文学通信
A5判
272ページ
上製
価格 5,800円+税
ISBN
978-4-86766-012-6   COPY
ISBN 13
9784867660126   COPY
ISBN 10h
4-86766-012-4   COPY
ISBN 10
4867660124   COPY
出版者記号
86766   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年5月31日
書店発売日
登録日
2023年4月16日
最終更新日
2023年6月2日
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紹介

われわれは西鶴奇談がもたらす感動をどのように説明できるだろうか。
単なる典拠論、素材論を超えて、現代のわたしたちが見失ってしまった、あるいは忘れてしまった様々な表現の層位(可能性)をさぐりながら、西鶴を探る。西鶴は人情世態を描くための表現を新たに獲得しようと、どれほど奮闘していたのか。言葉が織りなす運動に注目して、西鶴奇談の一話一話を詳細に考察する書。

【西鶴奇談では、類似の題材を扱う場合でも、二番煎じのような方法は殆ど用いられていない。問うべきなのは、一話一話における創作の有り方である。すなわち一話ごとに西鶴がどのような問題領域(話題)を開き、そこに同時代の人情世態に関わる問いかけがいかに生成しているか。題材の比重が大きい西鶴の奇談において、その現在的意味はどのように見出されているのか。また、西鶴奇談の中には〈同時代の人情世態〉が素直にあらわれてはいない。作品の背後に隠されている当時の現実と、作品として形象化された虚構の世界とはどのように相関しているのか。これらを明らかにすることにより、後代の読者である我々も、創作された奇談世界のどこがどう奇異であり、西鶴は当時の読者に何を感得させようとしたのかを理解できるようになるだろう。
 本書では、言葉が織りなす運動に注目して西鶴奇談の一話一話を詳細に考察し、作品の中の不可思議で説明できないものを可能なかぎり明確に説明することで、西鶴奇談の備えている表現の挑発力を再び活動させることをめざす。】…「序章」より

目次

序章
一 本書の問題意識
二 本書の構成と内容

凡例

第一章 伝承の想像力

第一節 『西鶴名残の友』巻三之七「人にすぐれての早道」と狐飛脚伝承
一 はじめに
二 狐飛脚伝承と志一稲荷伝説
三 与次郎狐伝説
四 報われない忠義譚・異類婚姻譚
五 狐による慰撫
六 おわりに

第二節 フィクションとしての西鶴説話─『懐硯』巻五之二「明て悔しき養子が銀筥」の虚偽─
一 はじめに
二 『棠陰比事』「道譲詐囚」の詐術
三 民話・霊験譚の発想とねじれ
四 装われる報道説話
五 おわりに

第三節 『懐硯』巻三之三「気色の森の倒石塔」と「猫と南瓜」─民話の想像力を糸口に─
一 はじめに
二 解釈の入り口
三 もう一つの「猫と南瓜」
四 男の怨念と俳諧における〈猫の妻恋〉
五 奥女中という設定
六 おわりに

第二章 様式に関する試論

第一節 方法としての〈なぞ問答〉─『西鶴諸国はなし』巻一之五「不思義のあし音」の遊戯─
一 はじめに
二 奇人逸話からなぞ解きゲームへ
三 仕組まれたなぞ遊び
四 「おかた米屋」の造形
五 なぞ問答型の変容
六 おわりに
【余説】「北国屋」について

第二節〈欺瞞〉と〈機智〉の継承と創造─『懐硯』巻五之三「居合もだますに手なし」の手法─
一 はじめに
二 素材論の射程再考
三〈死体の面皮を剥ぐ〉という行為
四 織り込まれる法秩序の文脈
五 おわりに

第三節〈業〉の深さを描く─『万の文反古』巻三之三「代筆は浮世の闇」の因果─
一 はじめに
二 解釈をめぐって
三 奇異なる信念と〈二世安楽〉説
四 「我命の我まゝに死れざる」因果
五 〈業〉の深さ・貪瞋痴の前景化
六 おわりに

第三章 西鶴奇談の位相

第一節 『棠陰比事』「彦超虚盗 道譲詐囚」の受容をめぐって─笑話から西鶴を経由して秋成に及ぶ─
一 はじめに
二 機智話の素材源
三 「小判も石となる思案箱」の智慧
四 『風流宇治頼政』と「明て悔しき養子が銀筥」
五 誑かされる妾
六 おわりに

第二節 『鎌倉比事』「因果の廻会常陸帯」と『諸国因果物語』「二十二年を経て妻敵を打し事」の構想
─『大岡政談』「小間物屋彦兵衛伝」の成立前史─
一 はじめに
二 「道讓詐囚」と『鎌倉比事』「因果の廻会常陸帯」
三 『諸国因果物語』「二十二年を経て妻敵を打し事」の構想
四 『享保世説』に見出される話の型
五 おわりに

第三節 『大岡政談』「小間物屋彦兵衛伝」の成立
一 はじめに
二 『大岡美談録』『大岡美談』の先後関係
三 〈皮剥きの獄門〉
四 駕籠舁きと孝行息子
五 『彦兵衛伝』の成立まで
六 おわりに

あとがき
初出一覧

索引

著者プロフィール

梁 誠允  (ヤン ソンユン)  (

韓国檀国大学校日本研究所研究教授・高麗大学校文科大学日語日文学科講師(日本近世文学・日本文化研究専攻)。
韓国高麗大学校卒業後、2011年4月に日本政府(文部科学省)奨学金留学生として来日。2021年7月に東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
主要論文に「日本古典書籍のデジタルアーカイブ構築現況について─歴史的典籍NW事業の現況及び主要学術データベース紹介─」(「古典文学と教育」第49輯、韓国古典文学教育学会、2022年2月)、「『懐硯』巻五之三「居合もだますに手なし」の手法─〈欺瞞〉と〈機智〉の継承と創造─」(「近世文藝」第115号、日本近世文学会、2022年1月」)、「『懐硯』巻五之二「明て悔しき養子が銀筥」の虚偽─フィクションとしての西鶴説話─」(「日本文学」第68巻第12号、日本文学協会、2019年12月)、「『西鶴名残の友』「人にすぐれての早道」と狐飛脚伝承」(「国語と国文学」第95巻第6号、東京大学国語国文学会、2018年6月)。共著に『〈奇〉と〈妙〉の江戸文学事典』(文学通信、2019年5月)があり、韓国詩人・金永郎を紹介した評論文「手を結ぶ世界の詩人たち─永郎の人生と詩、そして私達」(『詩と思想』No398、土曜美術社出版販売、2020年9月)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。