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〈永遠のミサ〉西洋中世の死と奉仕の会計学 印出忠夫(著) - 教育評論社
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〈永遠のミサ〉西洋中世の死と奉仕の会計学 (エイエンノミサセイヨウチュウセイノシトホウシノカイケイガク)

歴史・地理
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発行:教育評論社
四六判
縦195mm 横138mm 厚さ24mm
重さ 360g
272ページ
定価 3,500 円+税   3,850 円(税込)
ISBN
978-4-86624-123-4   COPY
ISBN 13
9784866241234   COPY
ISBN 10h
4-86624-123-3   COPY
ISBN 10
4866241233   COPY
出版者記号
86624   COPY
Cコード
C0022  
0:一般 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2025年10月
書店発売日
登録日
2025年9月17日
最終更新日
2025年10月17日
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書評掲載情報

2025-12-06 朝日新聞  朝刊
評者: 酒井正(法政大学教授・労働経済学)
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紹介

あらゆる生者と死者に捧げられる、おびただしい数のミサ

煉獄の思想の発展以降、救済のためのミサを望む人々によって、教会への財産の遺贈や基金の設立が盛んに行われた。これらは単なる信心行為だったのか。本書では、信徒たちから募った金銭や祈り、善行という「預金」を社会に適切に振り分ける「銀行」としての教会を視座に、中世ヨーロッパのキリスト教と財産・富の関係を再考する。

〈序章より〉
本書の第1章は、歴史上のひとつのテーマを議論するために必要な最初の導入部分に相当する。中世ヨーロッパ社会の一般的な説明から口火を切るが、最終的にはその「末期」といわれる時代(十四、十五世紀)の、とりわけ本書で注目するフランス南部における社会の特色について、独自の角度からではあるが、概容を示すのがねらいである。第2章、第3章はこの中世末期において特徴的な、人々の死をめぐる心性に注目する。「煉獄」というタームに象徴されるこの心性こそが、当時の信徒たちの富を媒介にした教会との関わりに決定的な影響を与えたと考えられるからである。第4章は、このような状況下において、祭壇への奉仕としての「ミサ」という祭式が人々にどのように理解され、求められ、また実践されたかについて検討する。
第5章は、本書の核心部分として最もオリジナリティーを問う箇所となる。前章をうけて、ミサとくにいわゆる「永遠(無期限に定期的に行われる)のミサ」が中世社会において果たした役割についての考察を続けるが、しかしこの章で注目するのは、ミサを求めた信徒よりむしろ、行う側の教会の対応である。大きな社会的影響力を行使した西洋中世の教会は、「祭壇での奉仕」と「社会への奉仕」とを具体的にどう関連づけていたのか。その一例として、「永遠のミサ」の長期にわたる継続が、十四世紀のフランス南部プロヴァンス地方で実践されていた土地管理のシステムとのきわめて密接な結びつきによって可能とされていたケースを示してみたい。宗教の歴史をテーマとした書物が、土地の取引や管理の方式について議論すると言えばいささか風変わりな印象を与えると思うが、ここには、「二つの奉仕」の関係性は、当時の社会を動かすシステムのこれほど根幹にまで関わっていたのではないかという筆者の主張がこめられている。(中略)
そして終章では、ここまでの成果を中世史のより長期の文脈に置きなおしつつ、中世末期の教会史の再評価の可能性を論じている。

目次

序 章 「銀行」としての教会
金を集める宗教団体のこと/「銀行に預けておくべきだった」/教父たちの銀行論/「貧しい者」のための教会/法廷を持つ教会/「公共機関」としての教会の始まり/T・ピケティの指摘から/この本で論じたいこと/中世の歴史を考えるメリットとは

第1章 中世末期の社会 
封建社会の基盤/教会制度の整備/ベネディクトゥス系修道院/聖職者の団体と司教/「支配」ではなく「役目」として/中世末期をどうとらえるか/中世末期の社会経済/明るい中世末期/経済活動のためのインフラストラクチャー:1 公証人/経済活動のためのインフラストラクチャー:2 金融業/再考 カトリック教会と利子取得/都市社会の活力

第2章 中世人と死―彼岸と此岸 
都市に流入するデラシネたち/信心会の起源と形成/アヴィニョンの信心会/信心会がめざしたもの―平和領域/「疑似家族」としての信心会/「飼いならされた死」とは/「おのれの死」へ/死への執着・肉体への執着/「死の舞踏」の意味するもの/中世末期の聖母像/何を嘆いたのか/煉獄の誕生/煉獄とはどんな場所か

第3章 救済の計画としての遺言書 
遺言書の復活/中世末期の遺言書/口述遺言の登場/相続についての通説と現実/教会と聖職者の関与/「冒頭言」が語るもの/臨終とその前後/葬列の指示/埋葬場所の選択/誰のお墓に入るのか/敬虔贈与/施設への贈与

第4章 罪の償いとミサの設定 
教会贈与財産の形態の変化/ミサの設定と「私唱ミサ」/供犠としてのミサ/ミサを繰り返す/永遠のミサ―アニヴェルサリウム/計画と実際/誰に委ねるか/盟約を証しする文書―アニヴェルサリウムの成立まで/永遠のミサ―シャペルニー/「集中ミサ」の登場/土地所有を好まない托鉢修道会/数量化革命/「死後世界の会計学」/ふたたび煉獄をめぐって―「場」の画定/煉獄のアポリア/ダブルスタンダードの軋み/聖徒の交わり

第5章 教会への基金の設立―十四世紀アヴィニョンのシャペルニー 
注目されないシャペルニー/「死後の魂のため」の設立なのか/中世の「永代供養」をどう理解するか/アンフィテオーズ/時代の経済状況に合ったシステム/地代を買う、地代を贈与する/アヴィニョン教皇とアヴィニョン/枢機卿によるシャペルニー/大貴族によるシャペルニー/もたらされない収入/一三八〇年の調停/贔屓されたシャペルニー/財産は目減りする/ラオリヌス・アミキとは/上級所有権のメリット/交換された「贈与物」/ミサと公共事業/基金と記念―まとめにかえて

終 章 この世の究極の「所有権者」とは 
教会財産の「非譲渡性」/保全から運用へ/教皇ヨハネス二二世とプロヴァンス地方/ヨハネス二二世は「財政主義」か/ヨハネス二二世のアンフィテオーズ理解/上級所有権(ディレクトゥム・ドミニウム)の神学/教会組織の末端では

著者プロフィール

印出忠夫  (インデタダオ)  (

1957年生まれ。上智大学文学部、同大学院文学研究科で学ぶ。歴史学博士(フランス・社会科学高等研究院)。専攻はフランス中世史。弘前大学専任講師を経て、聖心女子大学現代教養学部教授。
共著に、『キリスト教の歴史1 ― 初期キリスト教~宗教改革(宗教の世界史8)』(山川出版社、2009年)、『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』(ミネルヴァ書房、2013年)など。
訳書に、A. アマン『アウグスティヌス時代の日常生活(下)』(リトン、2002年)、M. ヴォヴェル『革命詩人デゾルグの錯乱 ― フランス革命における一ブルジョワの上昇と転落』(共訳、法政大学出版局、2004年)。

上記内容は本書刊行時のものです。