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音楽の未明からの思考
ミュージッキングを超えて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年12月25日
- 書店発売日
- 2021年11月22日
- 登録日
- 2021年11月23日
- 最終更新日
- 2021年12月26日
紹介
「ミュージッキング」研究の地平を拡張し、「音楽の力」を問う新たな語りへ!
音楽研究のエポックとなったクリストファー・スモールの「ミュージッキング」という概念を手がかりに、その可能性をさらに広げるべく、世界各地でのフィールドワークに基づいて、文化人類学、民族音楽学、映像人類学、ポピュラー音楽研究、歴史人類学、音楽教育学などの研究者16人が挑みます。
執筆陣:西島千尋/輪島裕介/浮ヶ谷幸代/梶丸岳/増野亜子/井上淳生/矢野原佑史/福岡正太/武田俊輔/大門碧/伏木香織/井手口彰典/松平勇二/青木深
本書は国立民族学博物館の共同研究プロジェクトを書籍化するもので、テーマやフィールドワークの現場となったのは、音楽療法/ディスコ/精神医療/掛け合い歌/バリ島の行列音楽/社交ダンス/アメリカ黒人教会/森の民「バカ」/徳之島の民俗芸能/長浜曳山祭/ウガンダの「カリオキ」/バリ・ガムランの竹笛スリン/佐村河内ゴーストライター事件/ショナの憑依儀礼/伊江島とエチオピアの伝承歌/「支那の夜」と米兵──とじつに多彩。こうした多種多様な事例と視点から音楽研究をバージョンアップさせる意欲的な論集です。
【序論「音楽の力を未明の領域に探る」より】
私たちが目指すのは、世界の様々な場所で営まれるミュージッキングを人と人、人とモノ、人と観念の「出会い」の場として把握し、そこからある種の普遍性や比較参照点を取り出し、音楽という概念を解体し、音楽の未明とでも呼びうる地平から思考を試みることである。それは、人びとの営みから「音楽」や「ダンス」をあえて抽出することなく、ミュージッキングの全体性をありのままに捉えることを意味する。
◎「ミュージッキング」:
ニュージーランド生まれの音楽教育者クリストファー・スモールが、「音楽」「作品」「演奏者」のいずれをも特権化することなしに人々が音楽的実践にかかわる営みを捉えるために提唱した概念。「ミュージッキング」(musicking;音楽すること)というこの鍵概念は、音に媒介されつつ複数のエージェンシー(ヒト、モノ、環境、霊的存在など)が交わり合う場面や、そこで我々が感知したり言説化しようとするある種の「パワー」の存在様態を明らかにするという、従来的な「音楽学」「民族音楽学」「ポピュラー音楽研究」では十分に扱えなかった地平に我々を導く。
(『ミュージッキング──音楽は〈行為〉である』野澤豊一・西島千尋訳、水声社、2011)
目次
序論 音楽の力を未明の領域に探る 野澤豊一
第Ⅰ部 あつまる・かさなる
第1章 なぜ人は音楽療法をするのか──福祉現場のフィールドワークから 西島千尋
第2章 ダンスと振付の間──日本ディスコ史から考える 輪島裕介
第3章 音楽することと家を建てること 浮ヶ谷幸代
第4章 融合と社交 ──歌で参与するあり方について 梶丸 岳
第Ⅱ部 まざる・とけあう
第5章 バリ島行列音楽考──音・身体・場所の経験 増野亜子
第6章 揺れからダンスへ──日本の社交ダンスにおけるカウントとリズム 井上淳生
第7章 音楽ならざるものによる合体──アメリカ黒人教会における「喜ばしきノイズ」 野澤豊一
第8章 プロト・ミュージッキング――「森の民」バカの社会におけるグルーヴの遍在 矢野原佑史
第Ⅲ部 つかう・つくる
第9章 行為としての民俗芸能の映像記録とその活用 福岡正太
第10章 「囃す」というミュージッキング──シャギリが生み出す祭礼の場と関係性 武田俊輔
第11章 権威をかわして音と戯れる──ウガンダのショー・パフォーマンス「カリオキ」のプログラム作成をめぐって 大門碧
第12章 変わるスリンの指穴──ものと演奏行為の相互作用 伏木香織
第Ⅳ部 おもう・かたる
第13章 ミュージッキングはゴーストライトの(悪)夢を見るか?──佐村河内ゴーストライター事件が示唆するもの 井手口彰典
第14章 ショナ社会における音楽的才能の霊性──マシャウィ儀礼の事例から 松平勇二
第15章 歌の内なる生──伊江島のくゎーむいうたとエチオピアの蠟と金の事例より 川瀬 慈
第16章 歌が呼び覚まされるとき──アメリカにおける「支那の夜」とその記憶 青木 深
おわりに 川瀬慈
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執筆者プロフィール
上記内容は本書刊行時のものです。