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楽譜でわかる20世紀音楽
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年3月25日
- 書店発売日
- 2020年3月24日
- 登録日
- 2020年2月25日
- 最終更新日
- 2020年4月10日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2021-06-16 |
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紹介
ドビュッシー、ガーシュウィン、ストラヴィンスキー、ケージ……
音楽上の革新はどのように楽譜に書き記されたのか。
演奏家×作曲家×音楽学者のコラボレーションによる知的興奮あふれる講義録!
伝統的な音楽語法に飽き足らず、まったく新しい表現を模索した20世紀の作曲家たち。
彼らは音楽記号を変形したり、新しく考案したり、五線を使わない記譜法を開発したりして、みずからの着想を書き記そうとした。
ドビュッシーの静寂・沈黙の音楽はどう記譜されたのか。
ストラヴィンスキーの原始主義はどのように記述されているのか。
ガーシュウィンはジャズのイディオムをどう楽譜で表現したのか。
ケージやヴァレーズの実験性は楽譜からどう読みとれるのか──
作曲家、音楽学者、演奏家がタッグを組み、
作曲家たちがおこなった〈紙の上の革命〉の真相を明らかにする。
国立音楽大学でおこなわれた知的興奮あふれる連続講義を書籍化。
ジャズ・ピアニスト小曽根真のガーシュウィン論も収録!
目次
はじめに
第1章 20世紀音楽の楽譜を読む
──作曲家の発想の変化が楽譜の変化を生む
白石美雪 聞き手:久保田慶一
第2章 あふれる想いを書き綴った楽譜
──ドビュッシーの静寂・沈黙の音楽
森垣桂一
第3章 原始のエネルギーはどのように楽譜化されたか
──ストラヴィンスキーの原始主義
白石美雪+池原舞
第4章 民俗音楽の採譜と作品の記譜
──バルトークのヴァイオリン音楽
伊東信宏
第5章 革新的な発想で書かれた楽譜
──ロシア・アヴァンギャルドの音楽
中田朱美
第6章 ジャズのイディオムはどのように楽譜化されたか
──ガーシュウィンのシンフォニック・ジャズ
小曽根真
第7章 語りと歌の狭間で
──シェーンベルクの表現主義
長島剛子+梅本実
第8章 新しい音律を求めて
──パーチの創作楽器
柿沼敏江
第9章 内部奏法からプリペアド・ピアノまで
──カウエルとケージの新しいピアノ
白石美雪+井上郷子
第10章 極小形式と楽器法
──ひとつの根本思想から発展するヴェーベルンの音楽
安良岡章夫
第11章 ノイズに満ちた音楽を書きとめた楽譜
──ヴァレーズの音楽
森垣桂一+福田隆
第12章 リリカルな表現の記譜
──ベルクの音楽
土田英介
第13章 さまざまな音楽要素が混在する音楽
──ストラヴィンスキーの新古典主義《兵士の物語》
森垣桂一
第14章 同時代そのものがひしめく機械とノイズの音楽
──ヒンデミットの時事的音楽
長木誠司
楽曲解説/年表
あとがき
索引
前書きなど
はじめに(白石美雪)
楽譜による音楽の伝承は、古代より現代にいたるまで脈々と続けられてきました。こんにちではCDなどの録音やテレビ・ラジオの放送、インターネットの動画や音声配信など、音楽を演奏したままの状態で伝える手段が数多くあります。しかし、現代のメディアが開発される以前には、楽譜が音楽伝達の主要なメディアでした。楽譜は長い年月をかけて、伝統的な口頭伝承や現代のメディアとは異なる、独自の文化を創造してきたのです。
楽譜というと、多くの人が五線譜を思い浮かべます。この本を手にとるほとんどの人が小学校の音楽教育で五線譜を知り、演奏するための専門教育のなかで五線譜を読む経験をしてきたことでしょう。じつは地球上のさまざまな音楽を視覚化してきた楽譜は、五線譜だけではありません。それでも私たちは楽譜とは五線譜のことだと思うほど、近代の五線譜は人々の意識に深く浸透してきました。
五線譜はあくまでも、音楽を一種の記号で表現したものです。音楽という聴覚的なものを視覚的なものに翻訳するのですから、伝えられるものと伝えられないものがあります。およそ17世紀から19世紀までのヨーロッパの芸術音楽はこの楽譜で記されるのに最もふさわしい音楽でしたが、音楽の体系や様式がかわると、作曲家の思い描いた音楽の、本来のすがたが伝えにくくなります。
20世紀になると、前衛作曲家たちはこれまでになかった新たな表現をめざして、つぎつぎに新しい作曲技法を開拓しました。そこで、記号を変形したり、新しく作ったり、楽譜に余白を残したりしながら、五線譜のかたちを変化させていきます。ですから、楽譜のかたちをつぶさに見て、記号を読み解くことが、新しい音楽に近づく第1歩となるのです。
本書は20世紀の作曲家たちに焦点をあてて、いわば新しい五線譜の可能性、さらに五線譜を超えた可能性を考えるものです。ドビュッシー、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン、ストラヴィンスキー、バルトークといった現代音楽の基盤を形成した作曲家を取り上げます。作曲家や演奏家、音楽学者によって楽譜への視座が語られることで、なぜ、これらの作曲家たちの音楽が古典的な五線譜を超えるものだったのかが明らかになります。また、ヴァレーズやパーチ、カウエル、ケージといった主としてアメリカで活躍した作曲家たちの作品では、五線譜から思いがけない響きが生まれる驚きとともに、新たな読譜の可能性が論じられます。また、ロシア・アヴァンギャルドやヒンデミットについては、楽譜を手がかりとして芸術思潮全体にわたる影響も語られます。全体を通じて、作曲家が楽譜とどう向かいあったのか、そして現代の作曲家や演奏家、音楽学者がどうアプローチしようとしているのかが浮かび上がってくることでしょう。
本書は音楽大学の学生はもちろん、音楽愛好家を含む幅広い読者を想定していますので、一般にはなじみの薄い作曲家についても、できるだけわかりやすく説明しています。21世紀を生きる私たちにとって、ぜひとも知っておきたい20世紀の作曲家たちの英知が、楽譜というテーマを通じて解読されていく醍醐味を味わっていただければと思います。
上記内容は本書刊行時のものです。