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キーワードで読む オペラ/音楽劇 研究ハンドブック
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年3月30日
- 登録日
- 2017年3月1日
- 最終更新日
- 2017年11月6日
紹介
愉しむときも、知りたいときもこの1冊。
最新の研究成果を82のキーワードで!
作曲家、作品だけでなく、その背景、様式、受容まで、オペラ/音楽劇をめぐる多様で豊潤な世界を一望。
日本の音楽劇である能楽、歌舞伎、浄瑠璃なども含め、あらゆる分野を網羅。
愛好家・研究者の座右の1冊に!
目次
はしがき
研究の背景
オペラ/音楽劇(丸本隆)
オペラ研究(丸本隆)
上演分析(クレメンス・リジ、北川千香子)
ナショナリズム(丸本隆)
ナショナリズム(中東欧)(岡本佳子)
ポストコロニアル(佐和田敬司)
フェミニズム/ジェンダー(関野さとみ)
作曲家
モンテヴェルディ(萩原里香)
リュリ(添田里子)
ラモー(森佳子)
ヘンデル① 人と作品(山本まり子)
ヘンデル② 作品と受容(山本まり子)
モーツァルト① 人と作品(荻野静男)
モーツァルト② オペラとジャンル(丸本隆)
ロッシーニ① 人と作品(辻昌宏)
ロッシーニ② 作品と受容(森佳子)
ドニゼッティ(辻昌宏)
ベッリーニ(長屋晃一)
ヴァーグナー① 作品と受容(長谷川悦朗)
ヴァーグナー② オペラ改革者として(北川千香子)
ヴェルディ① 人と作品(辻昌宏)
ヴェルディ② 作品と受容(丸本隆)
ビゼー(森佳子)
プッチーニ(関野さとみ)
リヒャルト・シュトラウス(荻野静男)
テクスト/パフォーミング
リブレット(辻昌宏)
楽譜(長屋晃一)
ナンバー(丸本隆)
ライトモティーフ(北川千香子)
オーケストラ(中村仁)
序曲(中村仁)
歌手(新田孝行)
声/歌唱法(森田学)
アリア(若宮由美)
合唱(長谷川悦朗)
舞踊(森佳子)
舞台/劇場/メディア
オペラ演出(北川千香子)
オペラハウス(長谷川悦朗)
興行(長谷川悦朗)
フェスティヴァル(長谷川悦朗)
映画(荻野静男、仁井田千絵)
録音/放送/インターネット(佐藤英)
初期オペラ
宗教劇(中世ヨーロッパ)(嶋内博愛)
オペラ誕生前夜(嶋内博愛)
バロック・オペラ(丸本隆)
バロック・オペラ(イタリア)(丸本隆)
バロック・オペラ(フランス)(添田里子、森佳子)
バロック・オペラ(イギリス)(冬木ひろみ)
様式の変容
オペラ・セーリア(大崎さやの)
オペラ・ブッファ(大崎さやの)
オペラ・コミック(奥香織)
ジングシュピール(長谷川悦朗、荻野静男)
サルスエラ(平井李枝)
メロドラマ/メロドラム(奥香織)
グランド・オペラ(森佳子)
オペレッタ(丸本隆)
オペレッタ(フランス)(森佳子)
オペレッタ(ドイツ・オーストリア)(若宮由美)
20世紀オペラ(ドイツ/1933年まで)(中村仁)
20世紀オペラ(ドイツ/1945年まで)(中村仁)
20世紀オペラ(フランス/1945年まで)(関野さとみ)
20世紀オペラ(1945年以降)(中村仁)
ミュージカル(冬木ひろみ)
世界における受容/展開
ロシア(三浦領哉)
チェコ(岡本佳子)
ハンガリー(岡本佳子)
アメリカ(仁井田千絵)
オーストラリア(佐和田敬司)
日本における受容/展開
初期のオペラ体験(東晴美)
帝国劇場(中野正昭)
浅草オペラ(中野正昭)
少女歌劇(中野正昭)
宝塚歌劇(山梨牧子)
少女歌劇(その後の展開)(中野正昭)
日本のミュージカル(中野正昭)
日本における翻訳上演(大西由紀)
日本人作曲家によるオペラ(佐藤英)
日本における録音/録画/放送(佐藤英)
楽劇(東晴美)
能楽(大西由紀)
歌舞伎(東晴美)
浄瑠璃(東晴美)
あとがき
付録 オペラ年表 作曲家と作品
索引
参考文献
執筆者紹介
前書きなど
はしがき
「芸術に国境はない」とは誰のことばだったのだろう。「芸術は国境を越える」ともいう。
丈が高く、奥行の深い額縁舞台に設えられた装置の圧倒的な物量と、そこで繰り広げられるパフォーマンス。ことばは分からなくても、単純化された物語、情動を煽る音楽、翻訳字幕の助けもあって、われわれは十分に理解したと確信し、ほかでは味わえない感動を体験する。しかし本当に理解しているのだろうか。
たしかに、感動に「国境はない」といえるかもしれない。しかし「理解」のほうは、しばしばごく基本的なレベルに留まっているのではなかろうか。芸術が真に「国境を越える」ことは、生半可ではないと思い知らされる。
ではどうすればいいのか。まずは、舞台の虚構を支えているものすべてを知る必要があるのではないか。
そもそもオペラには、構成要素が多すぎる。それらの要素それぞれの歴史や背景だけでなく、作り手たちはどんな状況にあり、何を主張しようとしたのか、どんな伝統を踏まえ、何を生み出そうとしてきたのか。誰が演じたのか、観客は誰だったのか、誰が資金を提供したのか、オペラに課された役割は何だったのか。
ちょっと足を踏み入れると、知りたいこと、知るべきことがいくらでも湧いてくる。そんなとき、手にとっていただきたいのが本書である。その知の集積は、間違いなくすべての人々に、観客としての理解を深め、感動を増幅してくれることだろう。芸術に国境を越えさせるには、それしかなさそうだ。
できるだけ多方面からの関心に応えるべく、本書は8つのカテゴリーで成り立つ。
はじめに「研究の背景」として、音楽劇の基本であるオペラ研究の歴史や方法論が語られる。ついで「作曲家」では、限りはあるものの、歴史的に重視されるべきオペラ作曲家個々の記述が試みられる。
さらに「テクスト/パフォーミング」で、いわゆるオペラの構成要素が扱われ、つづく「舞台/劇場/メディア」で、オペラが実際にどのように観客に届けられてきたか、上演に関する状況が取り上げられる。「初期オペラ」ではオペラの前史から発生に至るまで、「様式の変容」では、オペラ・コミック、ジングシュピール、ついでオペレッタ、さらにはミュージカルなど、音楽劇のさまざまな様式の変遷が歴史的にたどられている。「世界における受容/展開」では、オペラが発生の地を離れて、東欧、ロシア、さらには新大陸およびオーストラリアへと伝播していく様子、あわせてかたちを変えて、ミュージカルなどの新しいジャンルを生んでいく様子が記述される。最後の「日本における受容/展開」では、明治時代に始まるオペラ受容の過程とさまざまなその変容、浅草オペラや宝塚歌劇などの詳細な記述がある。
表題にもうたわれているとおり、本書はまず、音楽・演劇・文学などの分野で教育・研究に携わる研究者や学生に、実用的なハンドブックとして使っていただきたい。また、音楽やオペラを愛する方々には、鑑賞の手引きとして、演目の関連項目からお読みいただきたく、さらに、教養を人生の糧とされる方々に、オペラ/音楽劇を切り口とした近代文化史の一集成として、座右に置いていただければ望外の喜びである。
上記内容は本書刊行時のものです。