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シューベルトの「冬の旅」
原書: Schubert's Winter Journey ― Anatomy of an Obsession
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2017年2月
- 書店発売日
- 2017年2月8日
- 登録日
- 2016年12月26日
- 最終更新日
- 2023年12月10日
書評掲載情報
| 2017-06-01 |
サウンド&レコーディング・マガジン
2017年6月号 評者: 横川理彦 |
| 2017-04-02 | 毎日新聞 朝刊 |
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紹介
英国の誇る世界的リート歌手が、1000回を超える演奏経験と、文学・歴史・政治・自然科学におよぶ広大な知見と洞察にもとづいて著した、いまだかつてない刺激的なシューベルト論。
『冬の旅』全曲の成立史を克明に跡づけるとともに、詩人ミュラーと作曲家シューベルトが生きた19世紀初頭のヨーロッパの文化状況や自然環境を、豊かなイマジネーションで読者の眼前に生き生きと再現する。カラー図版を多数掲載した美しい造本仕様も魅力。
すぐれたノンフィクション作品にあたえられる英国の権威ある文学賞「ダフ・クーパー賞」を受賞!
「『冬の旅』ほどに複雑で強い情感を呼び起こす作品を演奏するということは、それにあらゆる面でかかわるということだ。1828年に文化という大海原に流された、瓶に入れられたメッセージが、いまに生きる私たちにどんな意味をもつのかを理解することでもある。この作品は私たちの現在の関心事にどう関連するのだろうか? まったく予期しなかったようなかたちでも、私たちとのつながりが見つかるのだろうか?」(本文より)
「この著作の英語のサブタイトル[Anatomy of an Obsession]が示すように、『冬の旅』にとりつかれた心を分析することで、ボストリッジは自分が音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家に属することを証明してみせた。彼が語ることは、生き生きとして博識であり、もっとも素晴らしい意味において読者を楽しませるものである。本著は文化史を概観させてくれるばかりでなく、プレゼンテーションの大胆さと巧みさゆえに、読者をこのうえなく刺激的な知的世界への冒険へと誘うのだ。[略]
この本はより広い読者層を意識したものである。音楽用語の使用は控えてあり、さまざまな専門用語は説明がなされている。それに加えて、見識をもって選び抜いたかずかずの絵画や映像が、彼の文章をさらに豊かなものにしている。シューベルトとカスパー・ダーフィト・フリードリヒを対比させることが、これほどまでに意義深く思えることはめったにないだろう。」(アルフレート・ブレンデル/独Zeit紙の書評より)
目次
日本語版への序文
序 章
第1章 おやすみ Gute Nacht
第2章 風 見 Die Wetterfahne
第3章 凍った涙 Gefrorne Tränen
第4章 凍 結 Erstarrung
第5章 菩提樹 Der Lindenbaum
第6章 あふれ流れる水 Wasserflut
第7章 流れの上で Auf dem Flusse
第8章 かえりみ Rückblick
第9章 鬼 火 Irrlicht
第10章 休 息 Rast
第11章 春の夢 Frühlingstraum
第12章 孤 独 Einsamkeit
第13章 郵便馬車 Die Post
第14章 霜雪の頭 Der greise Kopf
第15章 カラス Die Krähe
第16章 最後の希み Letzte Hoffnung
第17章 村 で Im Dorfe
第18章 嵐の朝 Der stürmische Morgen
第19章 惑わし Täuschung
第20章 道しるべ Der Wegweiser
第21章 宿 屋 Das Wirtshaus
第22章 勇 気 Mut
第23章 幻の太陽 Die Nebensonnen
第24章 ライアーまわし Der Leiermann
終 章 なごり
訳者あとがき
訳 注
参考文献
図像についてのクレジット
前書きなど
日本語版への序文
最初に公演で来日して以来、日本のみなさんが西洋の伝統的クラシック音楽に熱く真剣なまなざしを向け接していることに、私は驚きもし、心打たれもしてきました。そのことは私の演奏活動の刺激にもなっています。なかでもとくに、レパートリーのなかで私がいちばん愛着を感じているドイツ歌曲にたいする知識の深さと鑑賞眼のたしかさには目を見はる思いです。『冬の旅』というシューベルトの連作歌曲集にかんするこの本を著すにあたって私がめざそうとしたことのひとつは、これが生まれた時代やその文化的故郷を離れたところで、この作品の魅力にまつわるミステリーを解明することでした。歌手としての立場でこの作品の音楽的構成を深く掘り下げ、それを一般のみなさんに伝えようと思ったのはもちろんですが、その歴史的、文化的な基盤となるものを探ることも劣らず重要なことでした。一八二〇年代に生まれた作品が、いかにして一九世紀のみならず二一世紀にいたるまで、聴く人の心をとらえ、生命をもちつづけるのでしょうか?
しかしこのようなことを超えて申し上げたいのは、この素晴らしい連作歌曲をそれほどよく知らないという読者の方々にも、ぜひこの比類なき傑作に目を向けていただきたいということなのです。クラシック音楽のことすらあまり詳しくないという方々にもこの作品を知っていただき、『冬の旅』が誰とでもわかちあうことのできる文化の一部であることを実感していただきたいのです。私は読者をこの本の中で、さまざまな旅へと誘うことになりますが、その旅先では氷の結晶の話をしたり、カラスや(ボブ・ディランの)タンブリン・マンの話をします。ひとつひとつの曲の背景に存在するものをつなぎ合わせ、一冊の本にしていくわけですが、その結果生まれたものは大仰なものでもなく、しかつめらしいものでもありません。この本はあくまでも人間にかんするものであり、「あまりにも人間的」なテーマを扱おうとしたものなのです。
イアン・ボストリッジ
上記内容は本書刊行時のものです。
