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バッハ・古楽・チェロ アンナー・ビルスマ(著) - アルテスパブリッシング
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バッハ・古楽・チェロ (バッハコガクチェロ) アンナー・ビルスマは語る (アンナービルスマワカタル)

芸術
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A5判
272ページ
上製
価格 3,800円+税
ISBN
978-4-86559-148-4   COPY
ISBN 13
9784865591484   COPY
ISBN 10h
4-86559-148-6   COPY
ISBN 10
4865591486   COPY
出版者記号
86559   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
絶版
初版年月日
2016年10月
書店発売日
登録日
2016年8月26日
最終更新日
2021年2月17日
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書評掲載情報

2017-02-19 毎日新聞  朝刊
2016-10-16 産經新聞  朝刊
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紹介

古楽運動を牽引したバロック・チェロの巨匠が
初めて語る「音楽」「楽器」「人生」。
A.ビルスマ+渡邊順生による未発表ライヴCD付き!

音楽は「言葉」。
そして、演奏とは「語る」こと。

草創期の古楽運動を牽引したバロック・チェロの巨匠と日本を代表するチェンバロ奏者による対話。
レオンハルト、ブリュッヘンらとの交友、「セルヴェ」ストラディヴァリウスをはじめとする名器・愛器、バッハ《無伴奏チェロ組曲》をめぐる音楽論・演奏論を語り尽くす!

アルテスの古楽本シリーズ「Books〈ウト〉」創刊第2弾!

未発表ライヴCD付き!
A. ビルスマ+渡邊順生「佐々木節夫メモリアルコンサート」
1999年10月15日、日本福音ルーテル東京教会

目次

プロローグ(加藤拓未)

第1部 音楽活動、仲間たち、そして人生

 シモン・ゴルトベルク
 父のこと
 ハーグ王立音楽院への入学
 恩師レーヴェン・ボームカンプ
 ネーデルラント歌劇場管弦楽団
 カサルス・コンクール優勝
 スランプ
 ブリュッヘンとの出会い
 音楽家の「キャリア」について
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 古楽へのシフト
 テレマン《パリ四重奏曲》の録音
 初期の活動──ブリュッヘンとレオンハルト
 ヴォルフ・エリクソン
 オランダ古楽界のこと
 ロンドム・カルテット
 フェラ・ベッツとの出会い
 ラインベルト・デ・レーウ
 マテイス・フェルミューレン
 ブダペストのリスト賞
 バッハの《無伴奏チェロ組曲》に取りくみ始めた頃
 ハルモニア・ムンディでの録音
 「セルヴェ」ストラディヴァリウスとの出会い
 旅する音楽家
 日本人の古楽演奏家とその聴衆
 アムステルダム音楽院
 チェロのレッスン
 弟子たち
 鈴木秀美
 ラルキブデッリ
 音楽文庫
 私の病気について
 理想の演奏会

ビルスマ・アルバム(写真コーナー)

第2部 チェロ、センツァ・バッソ

チェロについて
 所有している楽器
 ピッコロ・チェロ
 セルヴェ=ストラディヴァリウス
 バロックとモダン チェロの構造の変化について 
 ・エンドピン
 ・ガット弦
 ・スティール弦
 ・弓について
 ・ピッチの上昇
 音楽は「物語」
 重要な音、重要でない音
 「語る」音楽
 聴衆とともに演奏する
 「線の太い」音楽と「語る」音楽

バッハのセンツァ・バッソ
 バッハの無伴奏楽曲とは?
 三つの通奏低音手法
 アンナ・マクダレーナ・バッハの写本について

第3部 《無伴奏チェロ組曲》の奏法

 「ボウイングの原則」一一箇条
 バッハの「エトセトラ」と「ゼクヴェンツ」

《無伴奏チェロ組曲》第1番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)メヌエット
 6)ジーグ

◎フランス様式とイタリア様式のボウイング

《無伴奏チェロ組曲》第2番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)メヌエット
 6)ジーグ

◎運指法にかんして

《無伴奏チェロ組曲》第3番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)ブーレ
 6)ジーグ

◎六つの組曲が作曲された順番は?

《無伴奏チェロ組曲》第4番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)ブーレ
 6)ジーグ

◎ヴィオラ演奏説

《無伴奏チェロ組曲》第5番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)ガヴォット
 6)ジーグ

◎ヴァイオリンの名手バッハ

《無伴奏チェロ組曲》第6番
 1)プレリュード
 2)アルマンド
 3)クーラント
 4)サラバンド
 5)ガヴォット
 6)ジーグ

第4部 音楽について、そしてボッケリーニ

 「文化」と「芸術」の違い
 演奏家について──グレン・グールド、パブロ・カサルス
 室内楽
 ヴィヴァルディの音楽
 ベートーヴェン
 モーツァルトの協奏交響曲(未完成)の第1楽章
 ボッケリーニ
 弦楽五重奏曲の録音
 作曲家ボッケリーニについて
 「ボッケリーニのメヌエット」
 ボッケリーニの音楽と時代精神
 ボッケリーニの弱音表示
 「人を楽しませる」音楽
 ハイドン、ベートーヴェンとボッケリーニ
 ボッケリーニの「サウンド」
 シューベルトへの影響
 ボッケリーニの消滅

ビルスマの思い出と彼の芸術(渡邊順生)

 ビルスマの思い出
 ◆ビルスマの演奏
 ◆佐々木節夫メモリアル・コンサート
 ビルスマのレコード
 ◆アンナー・ビルスマ・コレクション
 ◆ヴォルフ・エリクソンとダス・アルテ・ヴェルク・シリーズ(テレフンケン)
 ◆セオンとBASF
 ◆一九八〇年代の録音
 ◆ヴィヴァルテと一九九〇年代
 ◆ベートーヴェンのチェロ・ソナタ
 ◆バッハの無伴奏チェロ組曲のDVD

付録:CD楽曲データ

前書きなど

プロローグ(加藤拓未)

 二〇一三年八月二〇日、私はオランダのスキポール空港に到着した。これから一週間にわたって、渡邊順生氏とともにチェロ奏者のアンナー・ビルスマさんにロング・インタヴューを敢行し、それを翻訳して本にまとめるためである。

 「アンナー・ビルスマ」

 この名を聞いて、「古楽」ファンであれば知らない人は、まずいないだろう。バッハをはじめとする一九世紀以前の音楽を「当時の楽器(古楽器)」で演奏する有効性にいち早く気づき、一九六〇年代から、グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘンらとともに、いわゆる「古楽ブーム」を切り開いてきた、現代の生ける「レジェンド」のひとりだ。彼が録音した、バッハの《無伴奏チェロ組曲》のCDを今でも愛聴しているというファンも少なくない。渡邊順生氏は鍵盤楽器奏者として、ビルスマさんと過去に何度も共演を重ねた旧知の仲であり、その縁あって今回の企画が実現したのである。
 ビルスマさんは、アムステルダムにあるフォンデル公園の付近に住んでいる。そこで、私は空港から移動し、公園の外れにあるアムステルフェーン通り近くのホテルに陣取った。
 フォンデル公園(Vondelpark)はアムステルダムの南西区にあり、市街地のなかでも最大級の面積を持つ公園で、いわば都会のなかのオアシスのような空間だ。一八六五年に開設され、当時は「新公園(Nieuwe Park)」と呼ばれていたが、後に一七世紀の作家ヨースト・ファン・デン・フォンデルにちなみ、現在の名称に変更された。滞在中、ビルスマさんの家とホテルを往復するさい、何度もこの公園を通り抜けたので、すっかりなじみの場所となった。園内では、ピクニックを楽しむ家族連れや、ジョギングをする人をよく見かけ、そうしたのどかな光景に加えて、広大な美しい緑に、いつも癒される思いがした。
 翌二一日、コンセルトヘボウの並びにある「スモール・トーク(Small Talk)」というカフェの前で、先に現地入りしていた渡邊氏と待ち合わせた。ビルスマさんの家は、そこから歩いて一〇分くらいの閑静な住宅街のなかにある。お宅のそばには立派な教会があって、とても印象的なのだが、現在はもう使われていないという。青緑色の玄関の前にたどりつき、ふと玄関の表札プレートに目をやると、こうあった。

 A. Bijlsma
 V. C. Beths

 この玄関の向こうに、あの「レジェンド」がいるわけである。「いよいよか……」と、少し引き締まった気持ちを覚えた瞬間、渡邊氏が玄関の呼び鈴を押した。なかから「入っておいでよ」という声が聞こえ、渡邊氏は手馴れた感じで、玄関のドアを押し開けた。玄関からすぐ右手にある部屋に入ると、そこがキッチン兼ダイニング兼リビングの広い部屋となっていた。そこで歩行器とともに立っていたのが、アンナー・ビルスマさんである。
 ビルスマさんは、ニコニコと穏やかな笑顔で、私たちを歓迎してくれた。かたわらには、奥様でヴァイオリンの名手であるフェラ・ベッツ夫人もいた。われわれは、中庭の見えるリビングに案内され、私を挟むように左側にビルスマさんが、そして右側に渡邊氏が着席した。ただし、ビルスマさんは、ふつうの椅子ではなく、歩行器の上に腰かけている。脚に力が入らないせいか、腰かけたり、立ち上がったりするのに難儀されていたので、そのたびに手伝おうとすると、「ダメ、甘やかしちゃダメだよ」と言って、あくまでも自力にこだわって立ち座りをされていた。こうしたなか、ビルスマさんへの一週間におよぶインタヴューが始まったのである。
 インタヴューは、渡邊氏による質問に対し、ビルスマさんがそれに答える形で進められたが、ビルスマさんは、とても精力的に話してくださった。その受け答えは、すべて英語でおこなわれた。お会いする前は、CDのジャケット写真から連想する「繊細で気難しい巨匠」の印象を抱いていたが、それはまったくの杞憂に終わった。実物は、とても気さくなキャラクターだ。まじめに自分の音楽哲学を語っていたかと思うと、それはいつのまにか脱線し、ジョーク話へと変わった。話のオチはほとんど冗談になってしまう。あの《無伴奏チェロ組曲》を演奏する崇高な姿と、目の前にいる、この「ひょうきんな巨匠」の姿は、ちょっとしたギャップだ。
 要するに、ビルスマさんは、サービス精神が旺盛なのだ。自分と面会する人には、自分と会って話をしたことで、少しでも幸せを感じて帰ってほしいと、日々願っているのだろう。
 それからビルスマさんは、コーヒーがお好きだった。インタヴュー中、よくコーヒーをおかわりしていた。そこで、渡邊氏が近所のコーヒー専門店でコーヒーメーカー(カプセル方式で一〇種類以上の味が楽しめるという代物)を入手し、ビルスマさんにプレゼントしたところ、とても喜ばれた。そのおかげか、それ以降、インタヴューの内容がいっそう充実したものになった気がする。
 ビルスマさんのお話のなかで、私がいちばん強く印象に残っているのは、彼が「音楽は愛だ」と語ったときである。これは、ビルスマさんの本質そのものではないかと思った。
 ビルスマさんはバッハの音楽を「愛」しているから、「バッハが本当に考えていたこと」を求めずにいられない。そんな彼にとって、現代の音楽界の常識や、伝統的な解釈など足枷にすぎない。というか、バッハの音楽とは、無関係にしか思えないに違いない。だからこそ《無伴奏チェロ組曲》を弾くうえで、市販の楽譜では飽き足らず、バッハがじっさいに手にし、見たと思われる、夫人のアンナ・マグダレーナ・バッハによる写本にこだわり、そこからバッハの本当の創作意図を見極めようとするのである。
 このアンナ・マグダレーナ写本は、現在のバッハ研究では、筆記ミスの多い不正確な資料と見られている。そのため、出版譜の多くは、校訂者が自分なりの解釈をほどこしたものとなっており、またじっさいの演奏でも、ほとんどの奏者が自己流の解釈を加えてしまっている。
 しかし、ビルスマさんはバッハを愛しているからこそ、その「バッハが愛した妻」が一所懸命に書き写した筆写譜を、無下に「間違いだらけ」と退けることができないのである。ビルスマさんも、音楽家である奥様をとても愛しているから、なおのことバッハがどういう気持ちで、自分の作品の筆写を妻に頼んだのか、他人事とは思えないのだろう。
 だからビルスマさんは、ほかの誰よりも律儀にアンナ・マグダレーナ写本に立ち返り、演奏解釈を定めている。そこには、巨匠にありがちな驕りなど微塵もない。彼はじつに厳しく、バッハにもっとも近い資料を尊重した解釈を展開する(その動機は「愛」だ)。楽譜の所々を、ちょこちょこと少しずつ、我流で勝手に書き直している出版譜や演奏より、ビルスマさんの姿勢は、ずっと実直だ。
 今回のインタヴューを通して、アンナ・マグダレーナ写本のコピーを参照しながら話すビルスマさんの姿にくり返し接した。そして人情味あふれた見方をしながらも、資料をもとにしたその客観的な解釈は真剣に傾聴すべきものだと、あらためて実感した。こうした姿勢は、ボッケリーニやベートーヴェンといった、ほかの作曲家に取り組む場合でも同じである。
 さて、ぜひページをめくって読み進めてもらいたい。そこには、ビルスマさんの「愛」が、いっぱいにつまった言葉が、数多く並んでいる。そして、この愛すべきレジェンドの言葉をとおして、彼が感じ、表現してきた広大な音楽世界の一端でも、読者のみなさんに共有していただければと思う。

著者プロフィール

アンナー・ビルスマ  (アンナー ビルスマ)  (

世界の古楽界をリードするオランダのチェロ奏者。1934年、ハーグに生まれる。ハーグ王立音楽院卒。アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団首席チェロ奏者、ハーグ王立音楽院およびアムステルダム音楽院教授を歴任。ハーヴァード大学から博士号を授与される。グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘンらとともに、古楽器演奏の先駆者として、数多くの歴史的名盤を世に送りだす。バロック・チェロ、モダン・チェロによるレパートリーは、幅広くバロック初期から現代音楽にまで及んでおり、世界中の音楽家・音楽ファンから高い評価と尊敬を集めている。著者に、『バッハ──フェンシングの達人(Bach, The Fencing Master)』(1998)、『バッハのセンツァ・バッソ(BACH senza BASSO)』(2012)、『バッハと特権的少数派(Bach and the Happy Few)』(2014)、『落しもの──バッハの《無伴奏チェロ組曲》の最初の3曲のためのノート(Dropping ― An Exercise Book for the FirstThree Cello Suites of Johann Sebastian Bach)』(2015)等がある。

渡邊 順生  (ワタナベ ヨシオ)  (

1950年、鎌倉市に生まれる。チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード奏者および指揮者として活躍。2010年度サントリー音楽賞受賞。一橋大学社会学部卒。アムステルダム音楽院でグスタフ・レオンハルトに師事。1977年、最高栄誉賞付きソリスト・ディプロマを得て卒業、またプリ・デクセランス受賞。フランス・ブリュッヘン、アンナー・ビルスマ、ジョン・エルウィス等、欧米の名演奏家・名歌手等と多数共演。ソニー、コジマ録音、創美企画等から多数のCDをリリース。2006年、崎川晶子との共演による『モーツァルト/フォルテピアノ・デュオ』でレコード・アカデミー賞(器楽曲部門)を受賞。著者に『チェンバロ・フォルテピアノ』(東京書籍)、校訂楽譜に『モーツァルト:幻想曲とソナタ ハ短調』、『モーツァルト:トルコ行進曲付きソナタ』(共に全音楽譜出版社)等がある。

加藤 拓未  (カトウ タクミ)  (編・訳

1970年、アメリカ合衆国ワシントン州シアトル生まれ。専門はドイツ・バロック音楽史(特に受難曲の歴史)。国立音楽大学大学院修了。明治学院大学大学院博士後期課程修了(博士〔芸術学〕)。NHK-FM「バロックの森」「ベストオブクラシック」に解説者として出演。共著に『バッハ・キーワード事典』(春秋社)など。現在、明治学院歴史資料館研究調査員、合唱団「バッハ・ゲゼルシャフト東京」代表。

上記内容は本書刊行時のものです。