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灰色のミツバチ アンドレイ・クルコフ(著) - 左右社
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灰色のミツバチ (ハイイロノミツバチ)
原書: Серые пчелы

文芸
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発行:左右社
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ31mm
重さ 380g
464ページ
並製
定価 4,000 円+税   4,400 円(税込)
ISBN
978-4-86528-435-5   COPY
ISBN 13
9784865284355   COPY
ISBN 10h
4-86528-435-4   COPY
ISBN 10
4865284354   COPY
出版者記号
86528   COPY
Cコード
C0092  
0:一般 0:単行本 92:日本文学詩歌
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年10月10日
書店発売日
登録日
2024年9月12日
最終更新日
2024年9月30日
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書評掲載情報

2024-12-21 朝日新聞  朝刊
評者: 山内マリコ(小説家)
2024-11-09 日本経済新聞  朝刊
評者: 奈倉有里(ロシア文学者)
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紹介

仕事を辞め、妻に去られ、養蜂家になったセルゲーイチと、

いまは何をしているのかわからない、犬猿の仲だった幼馴染パーシャ。

狙撃兵と地雷に囲まれ、誰もいなくなった緩衝地帯《グレーゾーン》の村に暮らし続ける中年男ふたり。

電気も途絶え、食料も足りず、砲撃も次第に頻繁になってくる。

激化してゆく紛争下のドンバス地方を舞台に、飄々としたユーモアで描く物語。



春が来て、やがてミツバチたちが目覚めたとき、

意を決したセルゲーイチは旅に出る。

ロシア占領下のクリミアを目指して──。



全米図書批評家協会賞ほか受賞。ウクライナの国民的作家が戦禍のもとで書き続けた新長編。

前書きなど

いったい「グレーゾーン」とは何か。
現実的には、ウクライナ軍、親ロシア勢力のいずれの支配権力も及ばない帯状の前線地帯のことで、インフラが破壊され、食糧を確保するのも難しいことが多い。本作のために何度かドンバスを訪れたというクルコフによると、2017年当時、グレーゾーンは前線に沿って430キロほど続いていたという。この帯の幅は場所によってまちまちで、300-500メートルくらいの幅しかないところもあれば、何キロにも及ぶところもあったそうだ。
双方が「ここをグレーゾーンにしよう」というような取り決めをしているわけではなく、互いに前進できなくなり戦闘が止むと、そこに塹壕や退避壕が掘られ、双方の壕と壕の間の境界領域が、いずれの側のコントロールもきかない、きわめて危険なグレーゾーンになる。そこに人の住んでいる町や村が存在することがあり得るわけで、どちら側からも弾が飛んできたり、反対側へ頭上を飛び越えていったりし、最悪の場合は住民が犠牲になることもある。どちら側も住人の安全にじゅうぶん配慮してくれるわけではないので、多くの住民が逃げ出してしまうのだ。
比喩的に考えるなら、グレー(灰色)というのは黒でも白でもない中間色なので、「敵か味方か」と白黒をはっきりつけなければならない戦争の本質とは相容れない、どっちつかずの曖昧なものを象徴することになる。この「どちらでもない中間的・境界的な立場にあるもの」として、グレーは作中ひじょうに重要な役割を担っているといえる。
主人公の名前からしてそうだ。音の響きが似ているためか、主人公セルゲイ・セルゲーイチはけんか友達のパーシャに「セールイ」のニックネームで呼ばれることがあるが、これはロシア語でまさに「灰色の」を意味する。さらに、雪原に倒れている兵士は、どちら側の兵士なのかなかなか判明しない。そのためウクライナ側も親ロシア側も、遺体を引き取ろうとしない。グレイゾーンで行き倒れになる者の運命を暗示していよう。
クルコフにメールで、グレーゾーンの灰色にはどのような意味を込めたのかと訊ねたら、「灰色は目立たない色。擬態のような色といってもいい。グレーゾーンで生き残るには、どちらの側からも目立たないような灰色にならなければいけない。そうでないと、注意を惹いてスナイパーの標的にされてしまうから」と説明してくれた。全編を通じてさまざまな形で現れる灰色のモチーフは、どうやらひとつの意味だけには収まらない、重層的なシンボル性を持っているようだ。物語のラスト近くには、灰色をめぐる衝撃的な場面が用意されている。タイトルの意味するところも含め、〈灰色のモチーフ〉に注目して本書を読んでいただくのも面白いと思う。

訳者あとがき「グレーゾーンを生きるとは」より

著者プロフィール

アンドレイ・クルコフ  (アンドレイ クルコフ)  (

1961年ソ連のレニングラード州ブードゴシチ生まれ。3歳のとき、家族でキーウに移る。
キーウ外国語教育大学卒業、同時期に情報専門学校の日本語コースを修了。
1996年、独立まもないウクライナを舞台にした小説『ペンギンの憂鬱』(沼野恭子訳、新潮社)が国際的なベストセラーになる。オレンジ革命を予言したと言われた小説『大統領の最後の恋』(前田和泉訳、新潮社)のほか、マイダン革命を描く『ウクライナ日記』(吉岡ゆき訳、集英社)、ロシアとの戦時下の日々を綴る『侵略日記』(福間恵訳、集英社)など多数の作品がある。

沼野恭子  (ヌマノ キョウコ)  (

ロシア文学者、翻訳家。東京外国語大学名誉教授。東京外国語大学ロシア語学科卒業後、東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。
主な著書に『ロシア万華鏡』『アヴァンギャルドな女たち』(ともに五柳書院)、『夢のありか』(作品社)、『ロシア文学の食卓』(ちくま文庫)、『100分de名著アレクシエーヴィチ』(NHK出版)など、主な翻訳書にクルコフ『ペンギンの憂鬱』のほか、ウリツカヤ『ソーネチカ』『女が嘘をつくとき』(ともに新潮社)、ペトルシェフスカヤ『私のいた場所』(河出書房新社)、アクーニン『堕天使殺人事件』(岩波書店)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。