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トマトソースはまだ煮えている。  - 左右社
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トマトソースはまだ煮えている。 (トマトソースハマダニエテイル) 重要参考人が語るアメリカン・ギャング・カルチャー (ジュウヨウサンコウニンガカタルアメリカンギャングカルチャー)

歴史・地理
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発行:左右社
四六判
216ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-86528-076-0   COPY
ISBN 13
9784865280760   COPY
ISBN 10h
4-86528-076-6   COPY
ISBN 10
4865280766   COPY
出版者記号
86528   COPY
Cコード
C0022  
0:一般 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年5月31日
書店発売日
登録日
2022年4月4日
最終更新日
2022年8月19日
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書評掲載情報

2022-09-04 読売新聞  朝刊
評者: 川添愛(言語学者・作家)
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紹介

WebメディアHEAPSの大人気連載、ついに書籍化!

獄中でウクレレやマンドリンを奏でるアル・カポネ、動物園の猿と友達になる5大ファミリーのボス、フォードV8で突っ走るボニー&クライドに、ギャング映画御用達俳優たちが集まる秘密の会合……
『ゴッド・ファーザー』『グッドフェローズ』『アンタッチャブル』などの有名映画に描かれ、殺し殺されの裏社会を生き抜いた者たちの食、ファッション、趣味を覗き見。

NYにひっそり佇む博物館、「ミュージアム・オブ・ザ・アメリカン・ギャングスター」館長の「ギャングにいちばん近いカタギ」、ローカン・オトウェイ氏を重要参考人に、時に冷酷、時に珍妙なギャングスターたちの噂話をたっぷり聴きだし、しっかり収録。書き下ろしエピソード入りの全35エピソードにご期待あれ!

目次

まえがき
はじめに
第1話 スヌーピーもコロンブスもギャング?
第2話 「アル・カポネは中古家具のセールスマンだった」
第3話 米国の労働と暴力、そしてギャングは数珠繋ぎ
第4話 ギャングスターの身だしなみ事情
第5話 トマトソースと甘いものにはうるさいぜ。
第6話 密輸酒ビジネスとウォール街と、女ギャングたち
第7話 トミーガンとナイフと、マンマの包丁
第8話 ”バナナ”に”エッグ”。ギャングたちのおかしなニックネーム
第9話 10の誓い、破れば親友の手で地獄行き。
第10話 コートの中には捨て猫がいっぱい。
第11話 ヘアスタイルは口ほどにものをいう。
第12話 敵ファミリーでも、異なる人種間でも敬意を。
第13話 イエスマンになってはいけない。
第14話 ギャングに”素顔”はあるのか?
第15話 禁酒法時代、ギャングとスピークイージー。
第16話 禁酒法時代、密造酒の裏話(Gたちはおやすみ)
第17話 スポーツと犯罪組織に流れる黒い汗
第18話 マフィアも頬張った(?)屋台が集結、NYC最古のストリートの祭典
第19話 ギャングとゴミは仲良しこよし
第20話 ギャングたちが乗り回した”最強の愛車”
第21話 ぶ厚いツラの皮の下、意外な趣味嗜好
第22話 全員悪(そう)な4時間、裏ルポ
第23話 極悪人の息子と母たちの関係
第24話 犯罪組織ボスの”イメージ戦略”をほじくり返す
第25話 堅気との付き合い方、”いいひと大作戦”
第26話 LGBTQとギャング、共謀のナイトライフ
第27話 狡猾な奇行と痛すぎる失態のアーカイブ
第28話 ジュークボックス全盛期とアブない流通ビジネス
第29話 ギャング×ボクシング。痛みと飢えと、賭け金と
第30話 ”暗黒街の首相”と呼ばれたギャングの外交
第31話 マフィアの十八番は「チーズ・ビジネス」
第32話 血と文化、Gのアイデンティティ事情
第33話 ギャングたちの”密コミュニケーション”
第34話 音楽業界に回る悪い金、映画館のもう一つの”生き残る術”
第35話 ギャングスター、父と娘
あとがき

前書きなど

「アスター・プレイス80番地に、〝ミュージアム・オブ・ザ・アメリカン・ギャングスター〟というのがありました」。

 二〇一七年にはじまったHEAPS MAGAZINEのアメリカンギャングを取りあげていく連載(本書の前身となる)は、ある週明け、ニューヨークのマンハッタンをぶらついていた編集部員からそんな報告を受けとったことに端を発する。当初、そのミュージアム自体もそうだが、そこの館長さんである「ギャングが出入りする環境で育った、ギャングに最も近いカタギ」という存在もこれまた未知数であり、とにかく「これまでにはないアメリカンギャングの連載をつくってみよう」という、ぼんやりとした材料集めから手をつけたのだった。
 敵を友より近くに置き、自分の利益にしてのしあがっていく映画のなかのワイズガイたち。冷血、荒くれたちのドンパチ劇場からは見えない姿を知りたい、逆にカタギには見せていた裏の裏の顔はどんなものかと、担当編集者の命名「亜米利加ギャングスター101」のもと、少々見切り発車で走りだす。暗黒街を闊歩し、殺し殺されたギャングたちの「食」「ファッション」「表向きの仕事」などのトピックから生活に立ち入った雑学を探るため、担当編集者が粘り強く口説いてミュージアム近くのアメリカンダイナーで同館長さんと毎月一度、決まった時間の会合を取りつけ、聴き取りし、時折はぐらかされては足りないところを調べていった。
 館長さんとの初めての会話を振り返ると、こんなところらしい。
「その昔、近所にギャングの存在がありました。が、それはおそれる存在ではなく……。彼らは、私たちの〝近所の人たち〟でした」
「『グッドフェローズ』や『マイ・ブルー・ヘブン』という映画を観たことがありますか?」
 先述したトピックにくわえて、一般市民とのつき合いかた、アイデンティティ、コミュニケーション、意外な趣味趣向、動物との関係など、縦横無尽の切り口によって、確かに 〝亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がし、痛いところをつんつん楽しく突いていく(連載イントロより)〟は、着実に進んでいった。

 ぺりぺりと剥がれていくものは、もう一つあった。
 たとえば米国の禁酒法時代、人種や男女が初めて入り混じった飲酒文化の開花、フェミニズムや自己表現、ナイトライフ、エンターテインメントにスポーツなど、「ギャング」という存在を文脈にぽとりと落としてみると、知っていることを異なるようにたどる道筋があった。物事の多重多層、多面性というのは、こういうもう一つ不意にあいた、あるいはあけてしまった穴から改めて覗くようなものであると思う。ギャングの仮面をぺりぺりと剥がしていくことは、文化や社会の面構えというものを少しずつ剥がしていき、今日暮らす社会をもう一度いやらしくつんつんと突くようなものでもあった。
 担当編集者の根気で数年をかけ遂行したからこそ、結果的にこのおもしろさをじっくりと味わうことができ、連載のひと段落もあって、改めてこの機会にタイトルも置きなおすことにした(連載タイトルは『ギャング通の重要参考人が密告するGの活動報告書」アメリカンギャングスターズの知られざる〝黒い雑学〟』だった。長いなあ)。

 ギャングといえば、なにはなくともトマトソース(この本を読み終える頃にはきっとわかる)である。
 マフィアやギャングが引き続き存在していることは無論、たとえば百年も前の一九二〇年代の悪行ですら、彼らギャングスターの活動の影響はいまだ染みのようにどす黒く残っていること、それらはいくつもの黒点で結ばれ表社会に通じていることから、『トマトソースはまだ煮えている。』とした。
あぶくのでるあつあつではないが、ふつふつと絶え間なく煮え続けるトマトソース。見切り発車の材料集めから、しっかりと煮詰まったものができあがったと思う。
 本書でさまざまなトピックからギャングスターズの雑学に触れ、米国を知る手引きとなり、また彼らの裏や表の顔からいま一度、社会の顔を見つめてみるのに新たな覗き穴として役立ち、楽しんでもらえたらこのうえない幸いだ。

 館長さんの証言と、調査から成り立っているものの、公的な文書も少なければ調査対象であるギャングは際限なき黒。真偽・真相はたびたび闇のなかであるため、底のみえない鍋からトマトソースをすくってひと舐めして、自身で吟味してみてほしい。それでは、トマトソースは温かいうちに。火傷、胸焼けにはれぐれもご注意…。

上記内容は本書刊行時のものです。