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台湾語研究と「言語の民主化」
- 初版年月日
- 2023年7月31日
- 書店発売日
- 2023年9月5日
- 登録日
- 2023年9月5日
- 最終更新日
- 2023年12月27日
紹介
本書では、日本統治時代に著された陳輝龍氏の『台湾語法』を中心に、台湾語の研究がどのように展開されていったのか、またそれが戦後、どのようにして日本から発信されたのか、その検証を試みる。また戦前から戦後初期にかけての台湾語の言語科学を、まず陳輝龍氏の『台湾語法』から概観し、戦後初期における李献璋氏の『福建語法序説』の言語記述にも着目し、王育徳氏の研究成果をまとめるとともに、文学運動のあり方、歴史に翻弄された民族観、政治に抑圧された社会をも含めた視点で、これらを包摂した一冊である。
この三人の台湾語研究の基礎は、新たな言語環境としての多言語共生を生み、政策的な観点と結びつき、「言語の民主化」という考え方を根付かせたともいえるのである。
目次
はじめに
序 章
執筆の目的/各部・各章の概要
第1部 戦前の台湾語研究が戦後期の日本における台湾語研究に影響を及ぼしたもの――その背景と研究
第1章 植民地の文学運動――そして表現形態試論を考える
0.はじめに/1.日本統治と台湾/2.台湾の新文学運動/3.言語観と台湾ナショナリズム/4.台湾語の表現形態試論/5.まとめにかえて
第2章 陳輝龍の台湾語法
0.はじめに/1.文化創生とその背景/2.日本人の台湾語研究/3.陳輝龍の台湾語研究/4.『台湾語法』の執筆/5.まとめにかえて:資料1『台湾語法』(1934年)
第3章 戦後初期日本における台湾語研究
0.はじめに/1.李献璋の研究/2.王育徳の研究/3.文化政策としての台湾語/4.まとめにかえて ①まとめとして②亡命者たちの活動として:資料2『福建語法序説』(1950年)
第4章 王育徳の研究(戦後初期の台湾語研究・私見として)
資料として論文の一部を引用。
・『台湾語表現形態試論』学士論文(1952年)(「「台湾語の研究」として『台湾民声、創刊号』(1954年)に掲載)/『台湾音
系序説』附「ラテン化新文字による台湾語初級教本』草稿(1954年)/「台湾語の声調」『中国語学、44号』(1955年)/「福建
語の教会ローマ字について」『中国語学、60号』(1957年)/『台湾語常用語彙』の「台湾語概説」の部分(1957年)/「文学革
命の台湾に及ぼせる影響」『日本中国学会報、11集』(1959年)/「台湾語講座」、『台湾青年創刊号~第39号』(1960年~
1964年)/ 「福建語放送のむづかしさ」『中国語学、111号』(1961年)
・補論として――研究史の見方としての指針
第2部 台湾の歴史的背景と重層植民
第5章 台湾の歴史的な背景にみるもの
0.はじめに/1.歴史/2.住民構成と社会状況/3.使用言語/4.まとめにかえて
第6章 重層植民としての台湾 二・二八事件と台湾の民主化運動と多言語主義への展開
0.はじめに/1.重層植民としての台湾/2.二・二八事件とは/3.民主化運動の内と外①台湾国内からの主張②海外からの主
張/4.台湾ナショナリズムの構築/5.まとめにかえて
・補論として――歴史に翻弄された人々
資料1「台湾二月革命」(1949年)/資料2「台湾独立宣言」(1966年『台湾青年第62号』)
第3部 国民党の北京語同化政策と多言語主義(「言語の民主化」と母語復権を示唆するもの)
・中国大陸における文字改革運動を継承するもの――台湾を正当的な中華文化の継承者とすること
第7章 第一期 国民党の北京語同化政策
0.はじめに/1. 第一期(1945~1949)①法令/2.「国語」教育の開始/3.重層植民と二・二八事件/4. 第二期①法令/5.原住民へ
の国語教育/6.国語普及の背景/7.現在の言語状況/8.多言語状況と超民族語の作用
第8章 民主化と多言語社会
0.はじめに(第三期の位置づけになる)/1.民主化運動の展開/2.言語環境と使用言語状況/3.国語の変化/4.「台湾新家
庭」/5.「語言平等法」/6.まとめにかえて
第9章 原住民諸語と台湾の言語政策
0.はじめに/1.原住民の種別と言語/2.重層植民と原住民/3.民主化運動と原住民/4.原住民の教育/5.まとめにかえて――現在
の原住民文化
・補論として――言語政策の模索
0.はじめに/1.北京語から「台北標準国語」へ/2.多言語主義/3.原住民諸語/4.「言語の民主化」
上記内容は本書刊行時のものです。