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俺たちの「戦力外通告」
- 初版年月日
- 2017年12月
- 書店発売日
- 2017年12月20日
- 登録日
- 2018年2月5日
- 最終更新日
- 2018年2月5日
書評掲載情報
2018-02-11 | 読売新聞 朝刊 |
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紹介
「戦力外通告」――。
それは、プロ野球という華やかな世界に入った
天才たちに訪れる、残酷な瞬間です。
著者は、横浜ベイスターズで活躍しながらも、
宣告を受けてプロ野球界を去った経験を持つ高森勇旗さん。
本書は、高森さんと同じように戦力外通告を受けて
第二の人生を歩み始めた25人の元プロ野球選手へのインタビューです。
インタビューした元選手には、
コーチという立場で現役以上の結果を出している人もいれば、
野球をスッパリとあきらめて公認会計士や高校教師になった人もいます。
彼らはプロ野球で戦った経験があるから、違うステージでも力を発揮できるのです。
「戦力外通告」はどんな世界にも存在するシビアな現実です。
しかしそれゆえ、本書で語られる元選手たちの吐露は、
多くの読者の心を打つことでしょう。
~~第1章より~~
今日、戦力外通告を受ける。
そのことは、昨日の電話で既に知っている。朝、いつもと同じように起き、同じ道を通っ
て球場に向かう。いつもと違うのは、スーツを着ているということ。ただ、それだけである。
それだけなのに、この気持ちはなんだろう。
長い野球人生だった。小学校3年生のときに半ばやらされて始めた野球は、いつのまにか
人生の中心にあった。試合に勝つこと、仲間と協力すること、思い通りにならないこと、そ
して、自分自身を高めること。人生において大切なことはすべて、野球から教わった。〝プ
ロ野球〟という一つの完成されたフィクションに、人生のすべてを注ぎこんできた。それが、
今まさに終わろうとしている。
「どんな気持ちになるのかな」
情熱のすべてを注ぎこんできたものが終わる時、自分自身は正気でいられるだろうか?
取り乱したりしないだろうか? どこか他人事のようにそんなことを考えていた。
抜けるような高い空に、風が吹き抜けていく。金木犀の香りが濃く香る日だった。横須賀
港に停泊している軍艦は、今日も波に揺られてギシギシと音を鳴らしている。グラウンドで
は、〝来年〟に向けて選手たちが練習を始めていた。それは、昨日までと変わらない、いつ
もの光景だった。
(…)
~~~~
本書で紹介する25人の元プロ野球選手たち
松家卓弘
井川 慶
奥村武博
山﨑武司
石井琢朗
川上憲伸
中村紀洋
渡辺俊介
岩村明憲
屋鋪 要
G・G・佐藤
マック鈴木
鉄平
小早川毅彦
門倉 健
佐野慈紀
関屋智義
田中一徳
瀬間仲ノルベルト
小林敦司
南牟礼豊藏
真木将樹
生山裕人
竹下浩二
佐伯貴弘
目次
第1章 「戦力外通告」(著者・高森勇旗が戦力外通告を受けた日)
第2章 インタビュー 25人の「戦力外通告」
松家卓弘 :「究極の文武両道」 右腕が捨てたかった「東大卒」の肩書き
井川 慶 :ダイエットで引退撤回、阪神の大エース・井川慶の生き方
奥村武博 :史上初、プロ野球選手から公認会計士になった男
山﨑武司 :〝頭脳戦〟でクビからホームラン王へ這い上がった天才打者
石井琢朗 :横浜日本一の立役者が広島移籍で得たもの
川上憲伸 :中日黄金期の絶対的エースがこだわる「辞め際」
中村紀洋 :引退試合を拒絶し〝生涯現役〟貫く稀代のホームランアーティスト
渡辺俊介: 中学野球部補欠から世界一まで上り詰めたサブマリン右腕
岩村明憲 :「ミスタースワローズ」が独立リーグを選んだワケ
屋鋪 要 :引退後に「鉄ちゃん」として名を上げた元盗塁王
G・G・佐藤 :作り上げた「G・G・佐藤」という別人格 イタリアで取り戻した自分らしさ
マック鈴木:1回目の「クビ」は高1 洗濯係から身を起こしたメジャーリーガー
鉄平 :楽天の安打製造器が抱えた〝晩年〟の苦しみ
小早川毅彦 :「クビ」直後の開幕戦で3打席連続本塁打を放った男の原点
門倉 健 :日米韓アマを渡り歩いた本格派右腕の「生き方」
佐野慈紀 :史上初の中継ぎ1億円投手が見た「地獄」
関屋智義 :球団事務所のゴミ箱に捨てたトライアウトの書類
田中一徳 :松坂から4安打を放った韋駄天の「後悔」
瀬間仲ノルベルト :「日本のブラジル」でレストラン営む甲子園の中段に打ち込んだ〝怪物〟
小林敦司 :時給850円で武者修業 代官山で成功したケーキ職人
南牟礼豊藏 :守備、走塁、乱闘要員が開業した「人間力」で勝負する接骨院
真木将樹 :洗剤に活路見出した元〝ドラ1〟本格派左腕
生山裕人 :全力疾走で名を上げた球界一の「特殊球歴」の持ち主
竹下浩二 :コピー機の前で立ち往生した 尼崎出身の「沖縄の英雄」
佐伯貴弘 :クビを言い渡されても毎朝6時にグラウンドに現れた男
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。