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江戸東京狭隘路地探索 おれの細道
- 初版年月日
- 2015年9月
- 書店発売日
- 2015年9月20日
- 登録日
- 2016年5月19日
- 最終更新日
- 2016年5月19日
紹介
東京 こんな道が残ってた!
江戸東京歩きの達人が探索する究極の東京細道ガイド!!
ここで言う「細道」とは、自動車が通行できず、表通りからは見えにくく、歩く楽しみと驚きのある狭い道、原則として公道もしくは近隣の生活道路として機能していること。さらに歴史があり、曲がりくねってアップダウンがあればなおよい。幅が50センチぐらいしかなかったり、両側上空数十メートルビルの壁だったり、扉をくぐったりと、まあ壮絶な東京の細道を本書では紹介していく。
目次
目次
まえがき
1章 千代田区・中央区の細道
1 銀座・豊岩稲荷参道の細道 大銀座のはらわたを見るビルの隙間
2 区境・神田八丁堀の細道 都心に残された運河跡をたどる
3 月島・巨木に覆われる細道 屋根を突き抜けるイチョウ根元の地蔵尊
●細道探検モデルコース1 日本橋・銀座コース
2章 新宿区の細道
1 四谷・大番組屋敷跡の細道 探索のはじまり・きっかけの「細道」
2 四谷・荒木町の細道 大名屋敷の池だった巨大スリバチ
3 市ヶ谷・亀岡八幡の細道 廃仏毀釈、軍の記憶残す細道
4 神楽坂・石畳の細道 東京一有名な細道のアイドル
5 四谷・鮫が橋の細道 暗黒の記憶留める川筋が花の道に
6 西早稲田の細道 鎌倉街道裏、排水路跡の細道
●細道探検モデルコース2 四谷コース
3章 港区の細道
1 高輪・泉岳寺脇の細道 学校内すり抜け、歴史名所に至る生活道
2 麻布台・ゴーストタウンの細道 再開発を前に閑散としたお江葬送の地
3 二本榎・墓地巡りの細道 高級マンション陰の狭隘階段と密集住宅地
4 愛宕山の細道 都心のトレッキングコース
5 赤坂・軍とビルの細道 様々な要素集まるハイブリッド細道
6 麻布・がま池に至る細道 前代未聞、戸を開けて入る細道
●細道探検モデルコース3 高輪コース
4章 渋谷区・目黒区・杉並区の細道
1 道玄坂・歓楽街の細道 もっとも危険な細道
2 祐天寺・川筋の細道 郊外の宅地化でできた緑の細道
3 高円寺・軍用地跡の細道 延々と続く電信隊の細道
5章 台東区・文京区・江東区・ 北区・墨田区の細道
1 谷中・寺町の細道 名物、ヒマラヤ杉に続く細道
2 本郷・菊坂の細道 井戸、階段、植木。一葉ゆかりの細道
3 森下・六間堀の細道 下町に残る一直線の細道
4 北千住の細道 日光街道、江戸の宿場の面影残す細道
5 赤羽西の細道 谷と台地行き来する迷宮の細道
6 玉の井の細道 濹東綺譚は夢と消え
●細道探検モデルコース4 谷中コース
●細道探検モデルコース5 本郷コース
あとがき
前書きなど
「江戸東京狭隘路地探索 おれの細道」
まえがき
ふざけた書名である。
おわかりとは思うが芭蕉をもじってみた。まあ芭蕉ほど覚悟も金も暇もないので、住んでいる東京をうろつき回った、というところなのだが、これが存外面白い。
世界でも指折りの先端都市である東京だが、近年ますます開発の槌音がかまびすしくなったようにも感じる。広くて、明るくて、「美しい」街がどんどんできあがっている。ヨーロッパの都市なんぞと違い、古い町並みを残そうなどという気持ちは毛頭ない。元々木造の街で江戸以来大火を繰り返し、関東大震災や米軍の無差別爆撃でこの100年だけで2回もほぼ全域が焼け野原になってしまったのだから、まあ仕方がないと言えば仕方がない。
とはいえ400年以上もの歴史を持つ街でもある。世界でもっとも早く人口100万都市になった街である。地震や焼夷弾攻撃でも消せない古い表情というのは、じんわりとにじみ出ている。積み重なった歴史の奥底の襞が、街角のそこら中に消せない痕跡として、むしろ時間が経つほどに現れてくる。
その一つが「細道」だ。
なぜこんな細く狭く曲がりくねっているのだろう?と思うような不思議な道が東京にはあちこちにある。理由がはっきりしているものは少数だ。大部分は「たぶんこういうことなのだろう」と想像するしかない。新旧の歴史の積み重ねが、そんな道を造ってきた。
ここで言う「細道」とは、自動車が通行できず、表通りからは見えにくく、歩く楽しみと驚きのある狭い道、とでもしておこう。原則として公道もしくは近隣の生活道路として機能していること。さらに歴史があり、曲がりくねってアップダウンがあればなおよい。幅が50センチぐらいしかなかったり、両側上空数十メートルビルの壁だったり、扉をくぐったりと、まあ壮絶な東京の細道を本書では紹介していく。
江戸東京の様々な痕跡を訪ね歩き紹介するのが私の仕事で、これまで江戸城や江戸の大名屋敷、神社仏閣など歴史の表舞台に立ってきた痕跡を訪ねて書籍にし、さらには実際にご案内もしてきた。
そうした取材や案内の中で、今まで表舞台に立つことのなかった細道にしばしば出会い、その魅力にとりつかれてしまった。きっかけについては2章の「大京町の細道」で詳しく書いているのでそちらをご覧いただきたい。
そんな裏の存在の細道だが、最初に書いたようにこれが結構面白い。いくら初めての場所でも、史跡は以前から知られているからこそ史跡なので、「おお、あったか」という安堵感はあっても、新奇な驚きはない。細道探索は驚きの連続である。ドキドキワクワクが止まらない。若干悪いことをしてる感がつきまとい、物音がしたり、横のドアが開いたりするとドキッとする。それがまたたまらない。
そして意外とネタが尽きない。東京は広い。私の知らない無数の細道が、まだまだ私を待っている。当然ながらご紹介した細道はそのほんの一部でしかない。特徴や地域バランスを考えて24か所を選んだので、ここには載せていないがおったまげるような細道はいくらもある。
また歩く方それぞれの美意識でいろいろ好みがあると思う。この本を参考に、ご自身のセンスに合う細道を見つけていただきたい。キラキラした表通りを歩かれるのももちろん結構だが、街の裏の顔を訪ねてはいかがだろうか? 人工的な街では得られない深い街の理解が進む、と言ったら言いすぎだろうか。
基本、細道ルートとその様子だけわかれば実用書としての本書は成り立つのだが、それでは私の書くことがあんまりないので、細道にまつわる主に歴史うんちくを書き連ねた。また各節ごとに周囲の史跡散歩案内もつけた。しかし純粋に細道だけ楽しむのであれば、その辺は読み飛ばしていただいて構わない。訪れたときの感動が若干そがれるが、事前に様子を知りたいという慎重派の方には、私の解説付き動画へのリンクをQRコードでつけた。時間の関係で多くの場合全行程ではないのであしからず。
また紹介した細道は基本余り長くはないので、じっくり歩きたい方向けにモデルコースを5つ考えて掲載した。本書内の細道を組み込んだものばかりで、実際に2015年に私の案内で細道探検イベントを実施したルートだ。参加者には80歳という方もいらしたので、歩き慣れていない方でも歩き通せないことはないと思うが、足元と服装はしっかりと準備していただきたい。
ひょっとして堅苦しい内容と誤解されるといけないので念のため書いておくが、これはレジャー本である。歴史とかの棚ではなく、アウトドア・レジャーの棚に置いて欲しいぐらいだ。私の感じたワクワクドキドキ感を、この本を片手に読者の皆さんにもぜひ味わっていただきたい。費用もかからず、歩くことで健康にもいい素晴らしいレジャーだ。
ご注意いただきたいのはその際のマナーである。細道の周囲は今も生活の場である。住んでいる方の生活、静謐を乱さないようにお願いしたい。ある有名な史跡のある細道で、行儀の悪い訪問者の多さに入口の案内板を撤去してしまった、などという事例もある。この密やかな楽しみが世間の批判を浴びないよう、慎みたいものだ。
案内場所の確認は行っているが、なにぶんいきなり史跡を破壊したりすることもある物騒な街である。もし紹介内容と変わっていてもご容赦願いたい。事前確認も難しいが、あくまで細道の様子は執筆時点ということで。
本書は2014年の1年間、株式会社ジーリサーチが運営するサイト「Insight×Inside」(http://insightxinside.com/)で行った連載をまとめたものだ。リサーチ会社である同社がこんな連載を掲載していただけるとは感謝に堪えない。上野勉社長と、担当の近藤岳裕取締役にお礼を言いたい。また企画段階からつきあっていただき、出版元でもあるアートダイジェスト社丸山徳久社長がいなければこの本は世に出ていなかった。よくもまあこんな本を出す気になっていただけた。ありがとう。
上記内容は本書刊行時のものです。