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ビヨンドSDGsと経営
ウェルビーイングの実現に向けて
- 初版年月日
- 2025年12月16日
- 発売予定日
- 2025年12月11日
- 登録日
- 2025年9月25日
- 最終更新日
- 2025年12月4日
紹介
世界はいま、「ビヨンドSDGs」へと舵を切った。
経済・社会・環境の分断を越え、ウェルビーイング(幸福)を中心に据えた新たな価値創造が始まっている。
本書は、企業・自治体・教育現場など多様な現場知をもとに、サステナビリティの次なる段階――「ビヨンドSDGs経営」を体系化するものである。
「人の力」「コミュニティ力」「企業力」を結ぶ三位一体モデルを軸に、
現場の実践と国際動向を統合しながら、「真のサステナビリティ」とは何かを問う。
第Ⅰ部では世界の潮流と日本の課題、
第Ⅱ部で人材・教育の覚醒、
第Ⅲ部でコミュニティの再生、
そして第Ⅳ部で企業経営の躍動を描き、
終章で「ウェルビーイング社会への羅針盤」を提示する。
2030年の先を見据え、経営と社会を再構築するための思想と実践の書。
日本発の「真のサステナビリティ」が、ここから動き出す。
目次
はじめに 号砲 ―― 日本よ、ビヨンドSDGsへ
序 章 岐路 ―― SDGsと日本の行方
SDGs ―― また日本は世界に置いていかれるのか
サステナビリティの本質を問い直す
日本の存在感とギャップへの違和感
世界標準のダイナミズムと日本の課題
新たな日本のアプローチ
第Ⅰ部 加速 ―― 世界と日本の落差
潮流と孤島 ―― 世界に置き去られる日本
第1章 疾走 ―― 世界は走り出した
プロローグ:本書の起点 ―― 持続可能な現場
現場で息づく「相互扶助」と「伝統の継承」、そして「技術」
国連未来サミット ―― ビヨンドSDGsの入口
SDGs・ESGとビヨンドSDGsのタイムライン
VNR ――「国の覚悟」を世界発信
ウェルビーイングとSDGsの再定義
SDGsの再定義 ―― SDGsは「アルファベット・スープ」
の器
〈コラム〉国連プラットフォーム ―― Googleと世界の協働
自分事化のヒント ――「SDGsメガネ・頭・アクション」
〈コラム〉SDGsメガネ ―― 白川郷とアルベルベッロ
第2章 失速 ―― 日本の遅れの構造
バッジ社会の罠
ターゲットレベル思考の実践 ―― 農水省「食品ロス削減」を例に
SDGsの本質はここから(確認すべきSDGsの5原則)
世界の速度感との乖離
グローバル企業の先行(エリクソンとユニリーバ)
ランキング幻想の正体
発信型三方よしの徹底
PRや広告の役割
〈コラム〉世界へ ―― セイコーエプソン「ペーパーラボ」
第3章 洞察 ―― ガラパゴスを超えて
SDGs受容の歴史
日本企業の特性はスロースターターと飽きの早さ
日立とトヨタの本気のSDGs
他業界への広がり
日本の強みと限界
日本の課題・ガラパゴス化のリスク
改革を阻む岩盤とパルス型社会
万博に移る日本人のパルス
GREEN×EXPO2027 ―― ビヨンドSDGs議論の年に開
催
第4章 展開 ―― ESG/SDGsマトリクスの効果
バッジ社会の罠と社内浸透の壁
マトリクスと実践プロセス
国際開示と投資家訴求
現場が動く
〈コラム〉「18番目の目標」実践 ―― モスフードの心
マトリクスの広がり
マトリクスを「ビヨンドSDGs」への発射台に
ISO26000の汎用性とマトリクス効果
SDGsを「使い倒す」マトリクス
まとめ 発射台 ―― 三位一体の日本力を世界へ
三位一体モデル ―― ウェルビーイングへ
三つの力が導く「第18目標」 ―― 規定演技から自由演技へ
第Ⅱ部 覚醒 ―― 人の力と未来
学びの深み ―― 人材が社会を変える
第1章 衝撃 ―― SDGsネイティブの登場
SDGsターゲット4・7
ESDとターゲット4・7 ―― 「SDGsネイティブ世代」の
登場
体験の力 ―― 青少年の生き抜く糧
SDGsターゲット4・7の深い意味
「企業版4・7」「地域版4・7」
大学が拓く世界を結ぶ知のハブ
〈コラム〉世界の知 ―― 沖大幹・東京大学教授
第2章 資産 ―― 人的資本の力
国際標準と人的資本開示
ISOとSDGsの接点
経営資源としての人
第3章 淘汰 ―― 学ばない人材は退場する
民間主導のSDGs推進モデル
SDGs研究所 ―― 三位一体論に向けた協創の拠点
石田梅岩と二宮尊徳 ―― 学術論ではなく、腹落ちする話を
多様性と包摂(DE&I)を実装2
〈コラム〉女性の躍動 ―― 鯖江市
〈コラム〉多様性の力 ―― KDDIが挑む組織文化の転換
源流 ―― 広岡浅子の「九転十起」
第4章 創発 ―― 学びと社会変革
SDGs12の本当の意味を読み解く
現場から芽吹く変革の力 人から始まるエシカル消費
フェアトレード・タウン
カーボンニュートラルと教育
〈コラム〉実学の地平 ―― 千葉商科大が拓く大学の未来
プラットフォームを使いこなす力
「プラチナ社会」の形成:一般社団法人プラチナ構想ネットワーク
名和高司教授との対話
まとめ 未来 ―― 人の力が社会を変える
人づくりを軽んじた国も企業も、未来を失う。
第Ⅲ部 誇り ―― コミュニティ力と物語
物語と制度 ―― 未来を紡ぐ文化力
第1章 物語 ―― 都市と地域を動かす力
世界に通用する自治体の威力
〈コラム〉世界の最前線 ―― ニセコ国際リゾート
〈コラム〉自分事化モデル ―― 岡山県真庭市
都市モビリティ・空港の挑戦
〈コラム〉世界のベンチマーク――パリの「ヴェリブ」方式
羽田から世界へ:東京都大田区の協創モデル
美術館から始まるビルバオの都市改革
〈コラム〉都市の誇り ―― ビルバオに響いた再生の鐘
水の再生力 ―― 西条市に見るセンス・オブ・ブレイス
物語がまちを変える ―― 小林市「ンダモシタン小林」
外からの視線と誇り
〈コラム〉異邦の眼 ―― ラフカディオ・ハーンが見た松江
文化資源、伝統資源の力
〈コラム〉森と生きる人生 ――「モリアゲ」長野麻子氏の挑戦
誇り ―― 物語が未来を動かす
第2章 骨格 ―― 制度が社会を変える
SDGs未来都市制度と認証制度
富山市のセンス:経済・社会・環境の三位一体
自治体SDGs認証制度と企業 ―― 日本的特性
北区の渋沢栄一モデル ―― 認証が生む共感と共創
制度が守る文化資本
〈コラム〉布の道 ―― 丹後ちりめん街道に宿る持続の知恵4
サステナブル・ツーリズム
〈コラム〉文化の再生 ―― アテネとエーゲ海遺産
小笠原諸島 ― 世界自然遺産と地域共同体の共生
景観を核とした社会・関係資本 ― 文化的景観の次なる展開
第3章 連携 ―― 官民を越えた協創
「協創」の学び:SDGs未来都市・足立区の進化
祭りの後 ―― 寅さんサミット
未来まちづくりフォーラム
〈コラム〉新幹線駅の仲間づくり ― さいたま市は「ビヨンド
SDGs」の旗手
地方銀行の役割
〈コラム〉日本経営品質賞 ―― 肥後銀行のSDGs
協創がもたらす突破口
第4章 実装 ―― 成果を生む仕組み
自分事化を阻む壁
指標の罠と逆算の難問
実装現場のリアリティ
理念から実装へ― 4段階のプロセス
まとめ 進化 ―― コミュニティの可能性と壁
第Ⅳ部 試練 ―― 企業力の行方
基準と現場 ―― 企業サバイバルの条件
第1章 規範 ―― グローバル基準の衝撃
国際ルール形成と投資の荒波
世界全体を見渡す視点
攻めの武器:マトリクス
世界へ ―― スシローが拓く現場発マトリクス
第2章 臨界 ―― SDGsの地雷と機会
ルールを知ればチャンス、知らなければ即退場
SDGsとESGの関係は何か
世界を動かすESG投資 ―― GPIFの衝撃
SDGsとESG ―― GPIFが導いた表裏一体性
CSRの本質を再考する
チャンスと「地雷原」を見抜く羅針盤 ―― SDGs
企業サバイバルと地雷原
サプライチェーンの管理
明日は我が身 ―― Human Rights
第3章 王道 ―― CSVの勝機
道具の力で世界を変える ―― 貝印
茶畑から茶殻まで ―― 伊藤園
産業集積(クラスター)をつくる ―― 熊谷組
クラスター型CSVとしての長寿企業の挑戦
第4章 未来 ―― ウェルビーイングと統合型CSV
統合型CSVの定義
ウェルビーイングの三層と統合型CSVの実装
第1の類型 身体的ウェルビーイング ―― 命と健康を守る技術
〈コラム〉世界医療DX― 日本光電
第2の類型 社会的ウェルビーイング ―― 包摂と共生を支える仕
組み
〈コラム〉旅の未来 ―― KNT ― CTの工夫力
第3の類型 環境的・文化的ウェルビーイング ―― 宇宙と文化の
共生
〈コラム〉宇宙の視座 ―― スカパーJSATが拓く新しい地平
ビヨンドSDGsの旗手 ―― 経団連・長谷川知子氏の現場宣言
まとめ 活路 ―― サバイバルを勝ち抜く条件 290
〈コラム〉海と山 ―― モン・サン=ミシェルと富士山の対話
自由演技が未来を切り拓く
終章 逆転 ―― 三位一体モデルの提言
三位一体モデルで築く幸福社会
自由演技としての日本型ウェルビーイング
企業の役割 ―― 国際ルールへの昇華
「第18目標」の試案
【試案】 ビヨンドSDGs「第18目標」の提言
―― 現場知から生まれるウェルビーイング社会の実現
⒈提言の趣旨 ⒉前提 ⒊提案の内容 ⒋関連ターゲット
⒌今後の進め方 ⒍留意事項
しめくくり
エピローグ:継承 ―― 景観が未来をつなぐ
終わりに 羅針盤 ―― ビヨンドSDGs時代を導く
《巻末資料》 SDGs17目標・SDGsターゲットのキーワード集
前書きなど
はじめに
号砲 ―― 日本よ、ビヨンドSDGsへ
国連「未来サミット」(2024年9月)で、2030年以降の新たな枠組み
―― ビヨンドSDGs(ポストSDGs)―― の検討を2027年9月から開始す
ることが決定された。
号砲はすでに鳴った。
世界は新たな枠組みをめぐる競争に一気に踏み出し、気候危機、資源制約、格
差と分断、技術革新の加速に向き合いながら未来を考えている。各国政 府・国
際機関・アカデミア・企業が次のルール形成に向け動きを加速させる。
SDGs(持続可能な開発目標)は単なる理念ではなく、17の目標、169の
ターゲット、232の指標を備え、経済・社会・環境を一体で捉える 包括的枠
組みとして世界共通言語の役割を果たす。
国連加盟193ヵ国が合意したこの枠組みは、IIRC、TCFD、
ISSB、ISO等による多様な基準 ―― いわゆる「アルファベット・スープ」
―― を受け止める「器」として機能する。サステナビリティを語るなら、
SDGsを基盤とすべき所以である。採択から十年、SDGsは巨大な国際プ
ラットフォー ムへ成長した。日本がこの共通言語を使いこなし、自国の知恵と
実践を発信すれば国際的評価を得て存在感を高められる。
また、近年、ESG投資の急拡大は企業に一段と厳しい透明性と説明責任を課
している。脱炭素、人権尊重、サプライチェーン全体のリスク管理、人 的資本
開示等への対応が不可欠だ。これに応えるには、経営戦略そのものの刷新が避け
られない。
同様に、地方自治体も「SDGs未来都市」制度等を通じ、脱炭素や人口減少
に呼応し地域経営を進化させている。企業と自治体がSDGsを共通言 語とし
て連携できる。
国連は2030年以降を見据え「改造」に入った。日本が主体的に関わるべき
舞台である。
この舞台に、日本は今どのように立つべきだろうか。
振り返れば2015年、国連がSDGsを盛り込んだ合意文書「我々の世界を
変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した当 時、日
本はその意義と内容を理解するのに時間を要した。多くの人にとって、前身の
MDGs同様、途上国支援の延長と受け止められ、先進国も含めて 取り組むべ
きものとしての反応は鈍かった。
十年を経た現在は、状況は大きく変わった。9割超という認知の高まりと実践
の積み重ねがある。しかし、いま問われているのは、SDGsを知識か ら真の
実践へ移すことである。
日本は、自国の知恵と実績を基に国際市場で競争力を保つ体制づくりが求めら
れる。とりわけ、グローバルなサプライチェーンにつながるすべての企 業 ――
中小企業を含む ―― が、ESG等多面的課題に対応する必要がある。対応の遅れ
は資金調達や取引機会の減少に直結し、存続すら左右しかねない。個々の企業の
地道な実践こそが、 やがて産業界全体を動かし、最終的に政策や国際ルール形
成へとつながっていく。
日本にはSDGs先進国となる資質がある。人々は誠実で約束を守り、地域に
は互助の文化が息づく。企業も自治体も現場を重んじ、手間を惜しまぬ 粘り強
さを持つ。
国際社会では人々の幸福や暮らしの質を重視する「ウェルビーイング」が評価
軸となりつつある。人を大切にし地域に根ざしたつながりを重んじてき た日本
の風土は、この価値観とも深く響き合う。
これは、筆者が農林水産省・環境省・外務省での行政経験、株式会社伊藤園役
員、千葉商科大学教授という「産官学」の立場を通じ、サステナビリ ティに実
務と理論の両面から関わってきた実感である。
しかし日本には大きな課題がある。日本は国際社会で新たな標準づくりに挑む
際、十分な存在感を示してきたとは言い難い。筆者の経験から見て課題 は三つ
に集約されると思う。それらは互いに結びつき、日本の力を生かしきれない根本
要因となっている。
第一は内向き傾向と国際発信の弱さだ。現場には優れた事例が多いが、国際的
言語で的確に表現し議論の場に持ち込む力が不足しており、世界のルー ル形成
には届かない。
第二は挑戦を阻む空気とスピード感の欠如である。縦割り組織や同調圧力、失
敗を許さない重い空気が「岩盤」となり、新たな試みや迅速な実行をた めらわ
せる。先に動こうとする人が孤立しやすく、決断は遅れ結局は横並びが選ばれる。
第三は取り組みの面的広がりの不足だ。業界団体の指針や自治体でのSDGs
未来都市制度等、一定の枠組みは整ったが、部分最適や各論にとどまり がち
だ。実践が面的に広がらず全体戦略に結びつきにくい。
これら三つは独立した課題ではない。面的広がりの不足が挑戦者を孤立させ
る。重い空気が発信をためらわせる。発信の弱さが国際的評価を遠ざけ る。こ
の悪循環を断ち切るには、優れた取り組みを束ね戦略へ昇華する「体系力」、国
内の知恵を国際規範に置き換える「翻訳力」、データに基づく物 語を語る「発
信力」を一体として進めるしかない。これらすべてにSDGsは有効なツールで
あり、日本の実践経験と高い認知度は三つの力を一気に発 揮する追い風となる。
この挑戦には、現場を動かす企業、自治体、教育、市民社会の参加が欠かせな
い。実践事例を的確に集積しなければ国際的政策づくりで説得力を持て ない。
日本経済の危機とESGが加速するなか、企業の役割は極めて重要だ。経済性と
社会・環境価値を同時に追求できる企業は、技術革新やビジネス を通じて持続
可能な未来を具体化する推進力となる。自治体もまた地域資源を束ね、人々の暮
らしに直結する仕組みを磨き上げる要として重要である。
筆者は長年「産官学」での経験を通じ、理論と実務の両面からサステナビリ
ティ課題に取り組んできた。本書は入門書でも評論でもなく、筆者の現場 経験
と検証をもとに次の時代に必要な設計図を示す試みである。章を追いながら、基
盤となる「人の力」(学びと主体性)から始め、「コミュニティの 力」(協働
と包摂)、「企業の力」(創造と変革)を「三位一体モデル」として描く。
本書は理論と実践を四部構成とした。
第Ⅰ部は、世界潮流の中での日本の遅れと特性を見て、課題克服の方策を探る。
第Ⅱ部は、学びと主体性を軸に人の力が未来を拓く姿を描く。
第Ⅲ部は、文化、物語、制度を通じ、コミュニティでの官民連携の可能性を明
かす。
第Ⅳ部は、企業力と国際ルール対応をめぐる試練と活路を描く。
そして終章で三位一体モデルを総括し、筆者なりのウェルビーイングに向かう
ビヨンドSDGsへの提案に結実させる。
本書は、企業・自治体・政策関係者、次代を担うビジネスパーソンに向けての
指針を目指す。
号砲はすでに鳴った。
日本は内向きにとどまり「ガラパゴス化」するのか、それともビヨンド
SDGsの当事者となるのか。答えは、十年前よりも広くSDGsを実践する
私たち一人ひとりの選択と行動にかかっている。
上記内容は本書刊行時のものです。
