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イノベーションを実現する起業家の育成法  河野 良治(著/文) - 三和書籍
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イノベーションを実現する起業家の育成法  コンピテンシーと起業家教育

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発行:三和書籍
A5判
並製
価格 2,300円+税
ISBN
978-4-86251-422-6   COPY
ISBN 13
9784862514226   COPY
ISBN 10h
4-86251-422-7   COPY
ISBN 10
4862514227   COPY
出版者記号
86251   COPY
 
Cコード
C3037
専門 単行本 教育
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2021年3月17日
最終更新日
2021年4月6日
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紹介

起業するためには心理学と脳科学が大いに関係している。詳細な調査と具体的な例から、優秀な起業家になるためのヒントと発見を導き出すことができます。

目次

まえがき v

第1章 序論
1.1 研究の背景 2
1.2 研究の目的 6
1.3 論文の概要 10

第2章 イノベーションを実現する創造的経営
2.1 はじめに 16
2.2 現代の中小サービス企業の位置づけ 17
2.3 中小サービス企業における経営者と起業家 21
2.4 小阪理論から考えるサービス企業の生産性向上 23
2.5 意思決定とヒトの脳 27
2.6 有限会社 東郷堂の事例 34
2.7 事例のまとめ 40
2.8 まとめとして 42

第3章 差別化戦略の重要性
3.1 はじめに 48
3.2 日本メーカーにおける製品開発の特徴 50
3.3 ビッグ3における製品開発の特徴 53
3.4 韓国メーカーにおける製品開発の特徴 56
3.5 まとめとして 58

第4章 イノベーションに向けた経営戦略 クラスターの継続性に注目して 
4.1 はじめに 64
4.2 イノベーションを生む苗床としてのクラスター 65
4.3 イノベーションモデルを検討する 69
4.4 ビジネスモデル依存型のイノベーションモデルから見たクラスター 75
4.5 まとめとして 78

第5章 イノベーションを実現する起業家人材育成
5.1 はじめに 82
5.2 起業家教育の必要性について 82
5.3 起業家のコンピテンシー 85
5.4 レッツトライアントレプレナーシップ事業の概要 96
5.5 事例の整理 104
5.6 中核人材としての起業家のコンピテンシーと起業家教育との関係 107
5.7 まとめとして 110

第6章 創造性を下支えする経験に関する考察
6.1 はじめに 116
6.2 背景となる研究の整理 117
6.3 調査の内容 124
6.4 調査結果の整理 130
6.5 まとめとして 131
第7章 終章

7.1 研究の概要 138
7.2 研究の結果 140
7.3 まとめとして 142

謝辞 144
参考・引用文献リスト 146
付録:現代の企業と経営者についてのアンケート調査 調査票 155

前書きなど

まえがき

この本がここで何を伝えたいのか、その2点お知らせしたい。一つは、本文で十分に言及できなかった読者へのメッセージである。筆者は、経営学を学んでいたが、学部の必修科目の一つに心理学があった。この授業で、認知心理学の初歩に触れて、ヒトは必ずしもありのままに世界を認識しているのではないと知り、30年前に受た衝撃と興奮、その興奮から自分の脳がどのように機能しているのか、可能であれば自分の頭をのぞいてみたいと真剣に考えたことを今でも忘れられない。
 心理学が発展して分かってきたことの一つに、ヒトが自分にとってできないと期待されることは、それに大きな価値があるとしても、動機付けられないとの発見がある。これは、バンデュラ(Bandura)による自己効力感研究であり、20世紀最大の心理学研究の研究成果であると評価する人もいる。なぜヒトは、自分に価値あることであっても、自分にはできないことにやる気が出ないのであろうか?筆者は、その原因を脳の構造に求めることができると考える(詳しくは2章を参照)。ヒトの脳は、高度な活動をしているため、その重量に比して非常に多くのエネルギーを消費している。そのため、ヒトは、無意識が課題解決に成功・失敗したのかに注目している。ヒトの脳は、脳での情報処理負担を下げるために、自分にとって実行可能なことのみを意識に上げて、無意識がそれ以外の雑多な情報を捨てている。筆者は、このようにヒトの脳を捉えた時、自己効力感研究が理解できた。ヒトの脳は、無意識が過去の記憶を参照して自分にとって実現できないことと判断すると、貴重な情報処理能力を無駄遣いしないように、そのことを意識に上げない。その結果、意思決定の俎上にも上らず、選択されることも無く、動機付けられない。逆に、ある領域の課題を多く解決できたのなら、それ以降も解決できるであろうと予想し、その領域の自己効力感が向上して、大いに動機付けられてやる気になる。
 ただ、過度に結果へ集中すると、ヒトの脳は効率性を高めながら、無意識がその事象の背景を捨て去る弊害を生む。例えば、筆者は、幼い時に周囲の人達が「御膳立て」をしてくれたことをきっかけに、ある領域で高い自己効力感を持ったのかも知れない。高い効力感を持った若者は、課題解決に向けて周囲の支援があったことが自分の努力を意味あるものにしたと感謝しながら、自己効力感を高め、また自己効力感の高い領域を広げて欲しい。
逆に、「仕方ない」とか「自分なんかには」という言葉がつい出てしまう人がいれば、失敗の背景を無意識が捨て去ってしまっていることを思い出して欲しい。特に、自己効力感の低い若者は、周囲の支援が足りなかった結果として無力感という過去の記憶の「檻」に閉じ込められているだけなのかも知れない。本当の君を知っている人は、まだ誰もいないのだ。人間は過去に規定される、過去は変えられないが、これまでよりも少し難しい適切な課題を解決する未来を経験して欲しい。適切な課題を設定し、君の習慣や環境の設定に適切なアドバイスをくれる良き指導者のもとで成功体験を繰り返し経験すれば、その分野で高い自己効力感を得ることができるだろう。まるで、RPGの勇者のように、スタート時には最も弱い敵を数匹倒す毎に休息をとる必要があったとしても、後に小ボスを倒すよう成長し、中ボス、ラスボスを倒せるまでに成長するだろう。
 多くの起業家は、このようにキャリアを発展させてきた。彼等は、高い能力の発揮の原因を自分の才能に求めない、むしろ「運が良かった」と自らを評価する。能力の発揮について生得的な部分を否定するものではないが、本論に収載された調査結果は、起業家的経営人材において後天的に身につけた価値観やこれを形成する経験が大きな影響を与えていることを裏付けている。ぜひ、読者の目で、本論の調査結果(6章参照)を確認し、自信を持って新規性や曖昧性の高い課題にも自信を持って対応できる人材になって欲しいし、そうした人材を育成して欲しい。そのためのヒントをこの本は提供している。
 もう一つは、本論の経営学における位置づけである。テイラー(Taylor)は、工場の生産現場に着目して、当時の労働者が十分に能力を発揮しないよう動機付けられていることを発見し、これを改善する科学的管理法を考案した。科学的管理法による工場の現場管理は、不十分であったかも知れないが大いに効率を高め、経営学の父と呼ばれるようになった。その後、科学的管理法について問題点も指摘された。当時著名な企業経営者であったバーナード(Barnard)は、科学的管理法と人間関係論の知見から現代的な経営学の基礎を築いた。バーナード(Barnard)は、生産現場での管理やそこでの労働者の管理を、一旦棚上げにさせた画期的な研究と意味付けることができる。こうした研究の上で、サイモン(Simon)は、意思決定へと研究の焦点を移して、経営学を学問として確固たる地位に押し上げた。
 こうした中で、筆者は、二つの観点からこの本がサイモン(Simon)の意思決定研究の先に位置づけられものであると考える。
 第一に、この本は、上述の通り意思決定の前提となる心理的な現象(自己効力感)やその原因としてのヒトの脳に注目している点である。サイモン(Simon)は、意思決定が、状況を調べて情報を整理する「情報収集」、選択肢を作る「設計」、選択肢の中から選ぶ「選択」と大きく3つの段階からなるとしている。しかし、経営学の隣接分野である心理学や脳科学の発展によって自己効力感や認知バイアスが発見され、意思決定過程に無意識が非常に大きな影響を与えていることを明らかにした。無意識は、我々のアイデンティティを規定する記憶を捏造することさえもあるとの報告があるほど、無意識が意思決定の過程に与える影響は大きい。しかも、錯視を経験した時に感じられる違和感は稀であるよう、脳は「現実」を上手に統合しているため、無意識が与える影響を我々は容易に感知することができないのである。
第二に、この本は、起業家における意思決定という非常に不確実性の高い経営における現象に着目している。例えば企業戦略に関する意思決定は、一般的に顧客または経営資源に着目して行われる。起業家の特徴は、事業機会を見出すことであるが、必ずしも商品だけでなく顧客すら確定されていないし、それ故戦略的に重要な資源も確定できない。自己効力感に注目すれば、事業機会の発見に動員可能な資源や市場の情報に応じて、起業家の意識に上る事業機会に関して設計される選択肢が変化する。また、起業家のキャリアが発展したり、検討に参加するパートナーシップが変化したりすると、事業機会に関して設計される選択肢すら変化する。こうした課題においては、意思決定よりも、意思決定に関わる人材の認知が重要な意味を持つ。起業家的な経営人材の認知は、意思決定に注目した経営学の次の重要な研究課題になりうると考えられる。

著者プロフィール

河野 良治  (コウノ リョウジ)  (著/文

河野 良治(こうの りょうじ)1970年生
関西外国語大学 英語国際学部 准教授
慶應義塾大学商学研究科で修士(商学)、作新学院大学経営学研究科博士課程を満期退学後、山形大学ベンチャービジネスラボラトリー研究員、早稲田大学アジア太平洋研究科助手、高松大学経営学部講師、長野大学企業情報学部准教授、筑波大学国際産学連携本部技術移転マネージャー博士(経営学)

上記内容は本書刊行時のものです。