版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
共生主義宣言 西川 潤(編著) - コモンズ
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

直接取引:なし

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

共生主義宣言 (キョウセイシュギセンゲン) 経済成長なき時代をどう生きるか (ケイザイセイチョウナキジダイヲドウイキルカ)

社会一般
このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:コモンズ
四六判
244ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-86187-140-5   COPY
ISBN 13
9784861871405   COPY
ISBN 10h
4-86187-140-9   COPY
ISBN 10
4861871409   COPY
出版者記号
86187   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年4月
書店発売日
登録日
2017年1月20日
最終更新日
2017年4月13日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

グローバリゼーションのもとで経済が危機を迎え、格差が拡大するなかで、
GNPの増大に代わる、コミュニティとエコロジーを重視した
新しい社会と経済の指針を示す実践と思想の書。

目次

まえがき マルク・アンベール

第1章 共生主義とは何か? 西川 潤
1  共生の意味と本書の構成
2  「共生主義宣言」の背景
3  「共生主義宣言」の内容
4  世界を文化的・倫理的視点から読み解く
5  「共生主義宣言」の意義
  ――社会科学における倫理性の再建を通じた近現代的世界観の転回

第2章 共生主義宣言――相互依存宣言 アンベール―雨宮裕子 訳
はじめに
1  最大の挑戦
2  四つ(加えてもう一つ)の基本的問題
3  共生主義について
4  倫理と政治と環境と経済に関する考察
5  具体策とは?

第3章 共生主義の経済マルク・アンベール
1  社会をより人間的にする
2  経済と科学技術が支配する社会からの脱却
3  もうひとつの基盤による暮らしの再構築
4  あらゆる活動の商品化に歯止めをかける
5  組織の大きさの制限

結びに代えて

第4章 共生社会への壁をどう克服するか? 西川 潤
1  津久井やまゆり園での障がい者殺人と格差の時代
2  内なる偏見がもたらす社会的損失と相模原事件の教訓
3  ポスト経済成長期を拓く二つの地域ケア

第5章 現代世界における「農の営み」の根拠 勝俣 誠
1  日本型危機の克服と「農の営み」
2  私たちは回しているのか、回されているのか
3  「豊かさ」の現代史
4  断絶とつながりの回復
5  「農の営み」から現代世界を読み直す
6  モノの消費よりも自律を

第6章 ひろこのパニエ
――フランスで取り組んだ共生の産消提携 アンベール―雨宮裕子
1  実践研究からの学び
2  新鮮で安全な地元の野菜を求めて
3  孤立から連帯へ
4  「ひろこのパニエ」の発足と広がり
5  「ひろこのパニエ」から共生社会へ
6  対話から

〈コラム〉 世界に広がる生産者と消費者の地産地消 アンベール―雨宮裕子

第7章 地域に息づく共生運動
1  菜の花プロジェクトが描き出す循環型社会 藤井絢子
2  都市と農村を結ぶ持続可能なコミュニティをどう創るか? 吉川成美
3  野馬土が目指す内発的復興 西川 潤

あとがき 西川 潤

前書きなど

 「共生主義」は、ポスト資本主義社会を拓くために打ち出された実践理論である。その先駆となったのは、二〇一〇年に東京の日仏会館で開かれた「よりよい共生が可能な社会を目指して」というシンポジウムだ。そこでは、グローバル経済の成長幻想を断ち切り、平和な分かち合い社会へ向かう道をいかに模索するかについて、さまざまな観点から論議がなされた。
 実際、地球の環境破壊が危機的状況に至っていても、世界は成長への歯車を加速させるばかりで、それを食い止める糸口を見出すのは容易ではない。だが、市場経済とは別の地平に立って暮らしを変える取り組みが、世界中で生まれている。自然エネルギーの活用、車のシェアリング、農産物の地産地消など一つひとつはささやかであっても、分かち合って生きる社会を目指す人たちの輪が身のまわりに広がってきているのである。
 「共生主義」が望むのは、人がいたわり合って心豊かに暮らせる社会であり、それを市民の手で実現することである。そのために、不正や不平等と闘う人びとを支える理念をすくいあげ、その理念に普遍性を与えて共振させ、社会変革のうねりを導こうと試みを重ねている。
 「共生主義」はもともと、哲学者イヴァン・イリイチの言葉である。本書では、『共生主義宣言』(Mnifeste Convivialiste)の四つの原則に沿う暮らしと社会のあり方を示す概念として使っている。四つの原則とは、次のとおりだ。
 ①人はみな等しく人類共同体の一員である(一九四八年に採択された世界人権宣言の第一条)。
 ②人は他者なしに生きられない相互依存的存在であり、どのような社会を選びとるかについて等しく責任を負う。
 ③人は自らの個性と能力を伸ばして生きる存在(スピノザのいうコナトゥスConatus)である。
 ④人は他者の異論を受容し、摩擦や敵対を民主的な合意形成で、プラスの活力に転換する(モースの「殺し合いを回避した異論の受容」(四八ページ)の実践と民主的平等(ルソー)の実現)
 「共生主義」に立つ生き方をわかりやすく言うなら、「他者をいたわり、自然への配慮を忘れずに、自分が属する社会のすべての構成員の幸福のために、責任を果たしつつ生きていくこと」だ。「共生主義宣言」の賛同者たちは、自立した協働を基盤に成り立つ社会を理想とし、人と人が優しさと思いやりで結ばれる社会の実現を願っているのである。
 二〇一三年にフランスで出版された『共生主義宣言』には、脱経済支配社会を目指す運動の指針が示されている。そのヒントになったのは、世界各地で少なからず取り組まれている経済至上主義に抗する運動である。フランスでは現在、この宣言に当初から携わった六四名に三六〇〇名余の学識者・市民運動家らが加わり、賛同者の核を形成している。なお、最新情報については、「共生主義」運動のホームページ(http://www.lesconvivialistes.org)を参照されたい。
 二〇一五年一〇月にレンヌ大学で開催された「新しい世界の構築」をテーマとする「共生主義」のシンポジウムには六〇名以上の発表者が集まり、三日間にわたる活発な議論が展開された。また、二〇一六年六月には『共生主義的政治へ向けて』と題する共著の刊行に合わせて、パリで公開討論会が「哲学劇」の形で開催された。古代の哲学論議を真似て、「共生主義を選ぶか、破局へ突き進むか?」という大きなテーマを、論者や演者が入れ替わり立ち代わり取り上げていく、従来のシンポジウムにはない対話の試みである。
 『共生主義的政治へ向けて』は、「共生主義宣言」で提案された「共生主義社会」へ向かうための方策を社会学者のアラン・カイエがいくつかの枠にくくりまとめたもので、あるべき社会を目指すための政策草案である。世界中で取り組まれている多種多様な市民の抵抗運動と実験的試みを俯瞰し、それをもとに混迷する社会体制を脱するための対案を提起する作業は、容易ではない。しかし、「共生主義」の理念に沿った道を見出していくには、多くの人びとを交えた熟議が不可欠である。試案をまとめては公の場で論議を深めることで、「共生主義」がより多くの人びとの共有概念になっていくことが望まれる。
 『共生主義宣言』の簡約版は英語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ルーマニア語、トルコ語、中国語、日本語、ヘブライ語に訳され、インターネットで公開されている(前出のサイト)。その全訳は英語とドイツで最初に出版された。
 ドイツでは二〇一四年に「共生主義」のサイトが開設され、たくさんの学識者たちを集めて討論会が催されてきた。その論戦を集めた書籍も出版されている。ドイツの賛同グループは英語でもサイトを立ち上げた。こうして、ドイツを起点にして、「共生主義」に関する論議がインターナショナルに広がりつつある。イタリアでも二〇一四年に全訳がなされ、それに基づいた討論会が開かれて、ポスト哲学の雑誌に「共生主義」の特集が組まれた。ブラジルでも全訳がなされて討論会が開かれ、その内容はポルトガル語で二〇一五年に出版されている。
 今回、日本語の全訳を収めた本書が刊行されたことを心から喜びたい。本書を読んで共生主義の理念に賛同された方は、前記のサイトで署名ができる。
 「共生主義」の賛同者たちは、今後も共著などいろいろな形で論議を展開していく予定である。加えて、個人としても研究者・実践者集団としても、それぞれの立場から、ポスト資本主義社会のあり方について、理論的かつ実践的論考を発表していくだろう。国境を越えて賛同者が増えれば、より多くの人びとの考えをすくいあげて、あるべき社会の理想図をともに描くことができる。他者を思いやり、自然への配慮を忘れない社会を形成していくための、より的確な取り組みが見えてくるはずである。
 「共生主義」社会への展望は、フランスや日本をはじめ世界各地で取り組まれてきた市民主導の実践から学びつつ、学識者たちが知恵を寄せ合って協同で模索している。『共生主義宣言』に提示された理念は、今後さらに検討が重ねられて練り上げられていくべき下書きである。モノや金銭の価値に偏った世界ではなく、分かち合い切磋琢磨する「共生主義」の社会が、より多くの人びとの賛同を得られれば、地球を明日につなぐことができる。生命を尊び、生きる喜びを分かち合える社会が、そこに開けるのである。ささやかな一歩でも、自分の地域から取りかかれることがある。その信念こそが「共生主義」を現実のものにしていく。
 二〇一六年六月にパリの劇場で開かれたシンポジウムで、司会を務めたアラン・カイエはこう締めくくった。
 「はっきりとは捉えられなくても、次の時代への転換はすでに始まっている。われわれは共生への道へ向かって、qu'on vive(何としても生きる)」

   二〇一七年一月
マルク・アンベール 

版元から一言

共生主義宣言
=世界各国で3000余名が書名。各地での実践をふまえ、本来の豊かさとは何かを示して、大きな反響を呼んでいる 

著者プロフィール

西川 潤  (ニシカワ ジュン)  (編著

西川 潤
1936年生まれ。
早稲田大学名誉教授。学術博士。
専攻:国際経済学、開発経済学。
主著『人間のための経済学――開発と貧困を考える』(岩波書店、2000年)、『グローバル化を超えて――脱成長期 日本の選択』(日本経済新聞出版社、2011年)、『新・世界経済入門』(岩波新書、2014年)、共編著『連帯経済――グローバリゼーションへの対案』(明石書店、22007年)、『開発を問い直す――転換する世界と日本の国際協力』(日本評論社、2011年)など。

マルク・アンベール  (マルク アンベール)  (

マルク・アンベール
1947年生まれ。
レンヌ第1大学政治経済学教授、経営学博士。
主著“Vers une civilisation de convivialite : travailler ensemble pour la vie en prenant soin l'un de l'autre et de la nature"(『共生の文明へ――自然を破壊せず、人がいたわり合って生きるには), Editions Goater, Rennes,2014.共著“Social Exclusion‐Perspectives from France and Japan"(『社会的排除の日仏比較考察』), TransPacificPress, Melbourne,2011.
共編著『脱成長の道――分かち合いの社会を創る』(コモンズ、2011年)。

勝俣 誠  (カツマタ マコト)  (

勝俣 誠
1946年生まれ。半農半読。
主著『アフリカは本当に貧しいのか――西アフリカで考えたこと』(朝日選書、1993年)、『新・現代アフリカ入門――人々が変える大陸』(岩波新書、2013年)、『娘と話す世界の貧困と格差ってなに?』(現代企画室、2016年)。

アンベール―雨宮 裕子  (アンベール アメミヤ ヒロコ)  (

アンベール―雨宮 裕子
1951年生まれ。レンヌ第2大学日本文化研究所長。
編著“Du Teikei aux AMAP‐le renouveau de la vente directe de produits fermiers locaux”(『提携からアマップヘ――再生する地産地消』),レンヌ大学出版局,2011.
主論文「福島の被災農家たち」『震災とヒューマニズム――三・一一後の破局をめぐって』明石書店、2013年、“La longue marche de l'agriculture familiale au Japon”(「日本の家族農業の変遷」),Revue Tiers Monde, Armand Colin, 2015.

藤井 絢子  (フジイ アヤコ)  (

藤井 絢子
1946年生まれ。
NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク代表。
編著『菜の花エコ革命』(創森社、2004年)、『菜の花エコ事典』(創森社、2011年)、『チェルノブイリの菜の花畑から』(創森社、2011年)。

吉川 成美  (ヨシカ ワナルミ)  (

吉川 成美
1969年生まれ。
県立広島大学大学院経営管理研究科准教授、URGENCI(国際CSAネットワーク)理事。
共著『中国の森林再生――社会主義と市場主義を超えて』(御茶の水書房、2009年)、『高畠学』(藤原書店、2011年)。
主論文「野の復権【社会主義と市場主義を超えて】」『環』Vol.40、2010年。

上記内容は本書刊行時のものです。