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徹底解剖国家戦略特区
私たちの暮らしはどうなる?
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年11月
- 書店発売日
- 2014年11月6日
- 登録日
- 2014年9月26日
- 最終更新日
- 2015年4月27日
紹介
アベノミクスの重要政策として、全国6か所が「国家戦略特区」に指定された。
安倍首相の「日本を世界一企業の活動しやすい国にする」という戦略の柱だ。
しかし、労働の規制緩和、外国企業の医療参入や投資拡大、農業への企業進出など暮らしに大きな影響が予想される。
政府が描く構想と問題点を各分野の専門家がわかりやすく解説する。
目次
第1章 新自由主義と国家戦略特区 浜 矩子
1 強き者のための「新新自由主義
2 アベノミクスとは何か――「日本再興戦略改訂二〇一四」は富国強兵政策
3 アベノミクスはこれからどうなるのか
4 国家戦略特区の目的は「強い者をより強く」
5 私たちはどう対応すればいいのか
第2章 国家戦略特区とは何か 奈須りえ
1 三つの特区
2 「特区法」のまやかし
3 国家戦略特区の概要
4 規制緩和と既得権
5 結局、誰のためなのか
第3章 国家戦略特区と住民自治 新里宏二
1 私の視点
2 地方自治の本旨と住民投票
3 国家戦略特区と住民自治
4 国家戦略特区に住民自治の考えをどう活かすか
第4章 ルールなき雇用社会は許せない 東海林智
1 厚労省官僚の嘆息
2 雇用に大きく影響を及ぼす労働契約法の修正
3 ますます解雇しやすくなる
4 改正されたばかりの労働契約法に特例
5 労働のあり方が根本から変わる
第5章 医療に市場原理はなじまない 藤末 衛
1 いま、ここにある危機
2 医療分野の営利市場化と国家戦略特区
3 混合診療が繰り返し取りざたされる理由
4 医療は市場原理ではなく公的保険制度で
5 倫理的かつ効率的な医療を目指して
第6章 「強い農業」に動員される農村 大野和興
1 土地を農民から資本へ
2 平成の農地改革と農業委員会の解体
3 進む資本の農業参入
4 村の現実と大規模農業の虚構
5 米価低落の秋に考える
第7章 米韓FTAで起きたこと――日本の将来は韓国にあり 郭 洋春
1 韓国の経済自由区域で何が起きたのか
2 改めて米韓FTAを考える
3 米韓FTA発効後に何が起きたのか
4 自由貿易協定の真の問題点
第8章 TPPと国家戦略特区は新自由主義の双子 内田聖子
――いのちの市場化の波を押し返すために――
1 規制緩和による企業の「自由」の強化
2 TPPとは何か――暮らしが丸ごと市場に投げ出される
3 米国の意向に呼応する国家戦略特区
4 いのちか、利潤か
5 「民主主義の通貨」としての情報と脱成長
あとがき
前書きなど
あとがき
二〇一四年九月二九日、第一八七回臨時国会がスタートした。国家戦略特区については四月に全国六カ所(東京圏、関西圏、新潟市、兵庫県養父市、福岡市、沖縄県)が指定され、この国会で各分野での規制をさらに緩める国家戦略特区法改正案が出される予定だ。シルバー人材センターの就業時間の延長、医師の資格がなくても経営実績があれば医療法人のトップになれる、などの内容である。
具体的なプランを策定する区域会議は、すでに動き出した。たとえば、政府が提示した東京都の事業計画素案には、「大手町での国際金融・ビジネス交流などの拠点整備」「虎ノ門地区での日比谷線の新駅と合わせた外国人向け医療・居住施設やインターナショナルスクールの整備」「慶応義塾大学病院での保険外併用療養など医療法の特例」「大型ビル建設の規制緩和」など、外資を誘致し大企業が活動しやすい金融拠点をつくるプランが華々しく提示されている。
その内容を知れば知るほど、日々働き、住まい、医療や教育を受ける主体としての私たち一人ひとりの生活など、一顧だにされていないことを痛感させられる。国家戦略特区とは、いったい誰のためのものなのか。改めて疑問と怒りが湧いてくる。
二〇一三年夏に「アベノミクスの第三の矢」の重要な一つとして国家戦略特区が持ち出されてきた際、私たちアジア太平洋資料センター(PARC)は大きな危機感を抱いた。以来、雇用、医療、農業、そしてそれらすべてを飲み込むTPPのような自由貿易協定など、さまざまな分野で新自由主義や暴走する市場経済に対して警鐘を鳴らしてきた方々と勉強会や講演などでご一緒する機会が、以前にもまして増えた。そうした方々の取材や分析によって、各分野で進められている規制緩和・市場化の波を把握し、いま私たちの暮らしや社会に何が起こっているのか、その本質を伝えて問題提起したいというのが、本書の狙いである。
国家戦略特区については、昨年からある程度の話題にはなってきたものの、まとまった分析や批判的な見地から書かれた書籍は出版されていない。「まだどうなるか、わからない」「自分の暮らしにどう関わるのかピンとこない」という方がほとんどだろう。しかし、その成り立ちや、アベノミクスの成長戦略として次々と打ち出されてきた規制緩和策、投資呼び込み策などを見れば、行き着く先はすでに示されている。
当面、私たちの暮らしに迫る危機は続くだろう。住民・主権者として危機の波を押し返し、ほんとうの意味での豊かな地域と社会を創造していくことの重要さを、本書をとおして感じ取っていただければ幸いである。
二〇一四年一〇月一五日
内田聖子
版元から一言
アベノミクスでは、日本という国家も経済も立ち行かない
その中心である国家戦略特区は、1%の富裕層が99%の人びとを踏みつける構造にほかならない
「経済成長」のために何が犠牲にされていくのか
雇用、医療、農業の現場からの緊急提言は、広く読まれるべきである
水野和夫
(日本大学国際関係学部教授、元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコニミスト)
上記内容は本書刊行時のものです。