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フランス語の時制とモダリティ 渡邊淳也(著/文) - 早美出版社
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フランス語の時制とモダリティ

発行:早美出版社
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ12mm
重さ 225g
170ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-86042-080-2
Cコード
C3085
専門 単行本 フランス語
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年3月
書店発売日
登録日
2014年5月1日
最終更新日
2014年7月29日
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目次

も く じ

はしがき
第1章 序論
  1. はじめに
  2. 時制とはなにか
  3. フランス語の時制体系
  4. モダリティとはなにか
  5. 時制、アスペクト、モダリティ、証拠性
  6. 本書の構成
第2章 フランス語の丁寧の半過去形と日本語の「よろしかったでしょうか」型語法 
  1. はじめに  
  2. 先行の諸説 
  3. 丁寧の半過去形 
   3.1. 語調緩和の半過去形 
   3.2. 接客の半過去形 
  4. 日本語の「よろしかったでしょうか」型語法 
 4.1.「いきなり用法」とその説明  
 4.2. 未完了相とその含意  
 4.3. 予備的判断の擬制  
  5. まとめと展望  
  6. 補説:「よろしかったでしょうか」型語法の伝播要因と起源 
第3章 間一髪の半過去形 
  1. はじめに 
  2.「間一髪の半過去形」のおもな特徴 
  3. 問題点 
  4.「反実的」か、「現実的」な状況か  
  5.「断絶の半過去形」との対比  
  6.「遅滞型」、「早期型」、「非時間型」の関係  
  7. 等位接続詞 et の使用について  
  8. 西日本諸方言との対照  
第4章 分岐的時間の表象を用いた時制・モダリティの連関の説明 
  1. はじめに  
  2. 分岐的時間の図式 
   2.1. Martin (1983) の図式 
   2.2.「分岐的時間」の表象に対する批判 
   2.3. 分岐的時間の表象には言語的には根拠がある  
   2.4. 分岐的時間の表象は過去にも適用しうる 
  3. 諸事例への適用 
   3.1. Martin (1983) の条件法論 
   3.2. 条件法の本質的機能と分岐的時間による解釈 
   3.3. 時制的条件法 
   3.4. 反実仮想の条件法 
   3.5. 他者の言説をあらわす条件法  
   3.6. 語調緩和の条件法 
  4. 他の言語にみられる仮定性と過去性の相関 
  5. 日本語の反実仮想の「た」との対照 
  6. おわりに  
第5章 叙想的時制と叙想的アスペクト 
  1. はじめに 
  2. 叙想的時制―半過去の事例 
   2.1. いわゆる「時制的」用法にみられる叙想性 
   2.2. いわゆる「モダールな用法」の再編をめざして 
   2.3. 叙想的時制に関するまとめ  
  3. 叙想的アスペクト 
   3.1. アスペクトの基本的図式  
   3.2. 半過去と叙想的アスペクト  
   3.3. 現在分詞と叙想的アスペクト 
   3.4. 叙想的アスペクトに関するまとめ 
  4. 叙想性と未完了アスペクトとの連関 
  5. 叙想的アスペクトと認知モード 
  6. おわりに 
第6章 単純未来形と迂言的未来形  
  1. はじめに
  2. フランス語およびロマンス諸語における単純未来形の綜合化・文法化 
   2.1. ロマンス諸語における単純未来形の成立
   2.2. ロマンス諸語における単純未来形の綜合性の比較 
   2.3. 綜合化と文法化・意味変化 
   2.4. まとめ  
  3. 単純未来形と迂言的未来形の用法の比較 
  4. 単純未来形の基本図式とその適用  
  5. 迂言的未来形の基本図式とその適用  
  6. 否定とのかかわりと「異常なふるまい」 
  7. おわりに   
初出一覧 
参考文献 

前書きなど

 本書の題名は、フランス語の時制とモダリティに関する総論的な概説書を想起させてしまうかもしれない。しかし、本書の主眼はあくまでも事例研究にあり、フランス語において、時制とモダリティというふたつのカテゴリーが関連しあう諸現象について論ずることを目的とする。フランス語の時制研究にとって、モダリティとのかかわりはもっとも重要な主題のひとつであり、これについて論究してゆくことによって、それぞれの時制に対する理解が格段に深まることは疑いの余地がない。
 時制といえば、フランス語学ではもっとも多く研究されている分野のひとつで、厖大な先行研究の蓄積があるばかりでなく、いまも毎年おびただしい論文が書かれている。わたしは、1992年からの大学院生時代、1997年からの特別研究員時代、そして2000年に大学の専任の職についてからもしばらくは、時制はほとんど研究しつくされた分野で、いまさら研究してもみのり多い結果はえられないと思っていた。そして実際、連結辞、証拠性など、どちらかといえば研究者の少ない領域を研究してきた。しかし、2006年、出身校である筑波大学に転任したとき、元同級生でもある英語学研究者、和田尚明さんと同僚になる幸運にめぐまれ、例年5~6回の研究会を共催して議論をするなど、交流を深めるうちに、わたしも時制研究に本格的にとりくむことになった。厳密には、もう少しまえから時制研究にむかう契機はあった。2002年に提出した博士論文で証拠性を対象とし、そのなかで、「他者の言説をあらわす条件法」について研究したときから、動詞論に足をふみ入れてはいた。そして、少しふみ入れたつもりの足が抜けなくなった。いざ研究してみると、時制に関しては、決して研究しつくされているということはなく、自分の目で見ていれば、新たな発言も可能であることがわかってきた。
 一方、モダリティについては、それこそ学生のころからずっと関連分野にとりくんできたつもりではあるが、言語の存立をになう発話行為に直結する研究領域であるだけに、無尽ともいうべきひろがりがあり、まさしく、一生のテーマであると考えている。実際、あとに示す科学研究費なども、これまでわたしが研究代表者となった研究課題については、つねに「モダリティ」と名のつく研究題目で申請・受給してきた。いずれも広汎な事例研究に眼目があり、モダリティのさまざまな領域でのあらわれを研究してきたが、そのなかでも、本書の主題となっている時制とのかかわりは、この8年ほどのあいだ、もっとも精力をついやしてきた問題であった。

 本書では、そのような研究の一端を示してゆくことになるが、考察の提示にあたっては、既存の特定の理論には依拠しないこととする (ここでいう《理論》とは、たとえばギヨームの心的機構理論、キュリオリの発話操作理論、デュクロの言語内論証理論、フォーコニエのメンタルスペース理論のように、創始者や《教典》をもち、多かれ少なかれ忠実に継承される言説の形態をさす)。もちろん、他の研究と自説との異同を示さなければならない以上、純然たる理論的中立性はのぞむべくもないが、特定のひとつの理論に準拠しつづけることはしなかった。このことにより、理論的前提を共有しない、より多くのひとに参照していただけるのではないかと期待する。ただ、明示的にひとつの理論にくみするかたちでの論述を読みなれたひとにとっては、かえって全体をつらぬく原理が見いだしがたく、対象となる事例に応じて場あたり的な説明をこころみているように見えてしまうかもしれない。しかしわたしは、一見場あたり的なほうが言語の実態にかなっていると思っている。統一的な理論にはおのずから得意分野というものがあり、そこから見て周縁的な事例をなんとか理論内に回収しようとすると、どうしてもしわ寄せがくる。そんなときは、なるべく無理をせずに、それぞれの事象の身のたけに合った説明をしたほうが好ましいように思える。
 まとまった説明をあたえうるのは、かぎられた範囲の、たがいに直接関連づけられる諸現象である。それらは各言語のマクロシステムのなかで、それぞれに局所的なミクロシステムを構成している。Nølke (1994) が指摘しているように、言語はおそらく、たがいに異質な多数のミクロシステムがおりなすネットワークとして理解されるべきであろう。本書で提唱するいくつかの説明も、フランス語の各時制がどのようにしてモダリティにかかわるかを局所的に解きあかそうとするものであり、時制のミクロシステムにかかわるものであるといえる。マクロシステムに直接いどむような流儀の (たいてい高度に理論的な) 言語学を否定するつもりはないが、わたしはおもにミクロシステムに興味をいだき、その積み重ねを志向している。(はしがきより)

著者プロフィール

渡邊淳也  (ワタナベジュンヤ)  (著/文

<著者略歴>
1967年大阪市生まれ。1992年筑波大学第一学群人文学類卒業。1997年筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科退学。1997年日本学術振興会特別研究員就任。1997年から1999年高等社会科学研究院 (Écoles des hautes études en sciences sociales) に留学。2000年玉川大学文学部専任講師就任。2002年に筑波大学に提出した博士論文により2003年「博士 (言語学)」の学位を取得。2005年玉川大学文学部助教授就任。2006年筑波大学大学院人文社会科学研究科助教授就任。2007年学校教育法改正により「准教授」に職名変更。2012年教員組織設置により「人文社会系」に所属部局名変更、現在にいたる。

<主要著書>
『フランス語における証拠性の意味論』 (早美出版社、2004年、単著)、Cognition et émotion dans le langage (慶應義塾大学21世紀COE心の統合的研究センター、2006年、共著)、『プログレッシブ仏和辞典 第2版』(小学館、2008年、共著)、『フランス語学概論』(駿河台出版社、2010年、共著)、『明快フランス語文法』(早美出版社、2011年、単著)、『フランス語学小事典』(駿河台出版社、2011年、共著)。

上記内容は本書刊行時のものです。