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カンボジア人の通過儀礼
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年2月20日
- 書店発売日
- 2019年2月18日
- 登録日
- 2019年2月4日
- 最終更新日
- 2019年10月11日
紹介
これがカンボジア人の一生です…誕生から葬儀まで誰もがたどる「通過儀礼」をカラー写真とともに克明に解説。文化人類学の専門書ですが、カンボジアに興味を持つ人すべてにおすすめします。
目次
第1章 誕生に関わる儀礼
第2章 大人になる準備の儀礼
第3章 成人儀礼
第4章 結婚儀礼
第5章 妻から母親へ
第6章 寿命を延ばす儀礼(長寿を祝う儀礼)
第7章 葬送儀礼
資料(月名、十二支、方角、曜日)
参考文献
索引
前書きなど
著者から
私たち3人がカンボジアの風俗習慣の重要な一分野である通過儀礼に興味を持ち始めてから大分経つ。しかし、人の初めから終わりまで、つまり誕生から死に至るまで、その一生すべてを議論する機会がいつかやって来ようとは思いもしなかった。以前は地方の村々へ調査に行くような研究は、ほとんど各自別々に行なっていた。何年かしてようやく諸般の状況が整い、様々な儀礼、特に通過儀礼におけるいろいろな事項を
2005年にたまたまフォード・モーター会社が、カンボジアにおける文化、環境、管理保存各分野の研究を対象として、補助金の応募を受け付けると発表した。そこで私たちもカンボジア人の一生に関する主要テーマをまとめるために、何とかしてこのチャンスを摑もうと考えたのである。幸いこの応募は通り、足りない資料を収集するために村々に行くことができるほどの資金を得て、この仕事を完成させることができた。こうして、望み通りに出来上がったので、期限内に後援者である会社に原稿を送ることができたのである。
この原稿は枚数としてはそれほど多くはないが、要点を検討すればきわめて奥深いものがあるので、机の引き出しの中に眠らせておいたり、包んで縛ったままほったらかしにしておくのは惜しいと思われた。これは私たちがこの原稿の著者だから自画自賛しているわけではけっしてない。正しく判断していただける方なら、こう言っても理解して頂けるのではないか。知ってのとおり、各種の新聞や雑誌は別として、今までカンボジア語で書かれたものの多くは、読者に様々なデータを提供する資料としては役に立つかもしれないが、世界では当たり前となっている現代の知識あるいは方法に沿った調査、分析、総合として言うなら、まだまだ貧弱だということである。近年になって、歴史、文学、考古学などの分野における研究はちらほら目にするようになったが、人文科学の重要な一分野である人類学について言うなら、外国語で書かれたものは数えきれないほどあっても、カンボジア語で書かれたものはまだ極めて少ない。それで、何としてもこの原稿を本という形にして出し、多くの読者に広めなければならないと思ったのである。誕生から死に至るまで、1人1人の通過儀礼の意義を読者の皆さんにきちんと理解して頂くことができたならば、カンボジア文化の重要な一分野への理解も少しずつ広まるのは確実だからである。
幸いハヌマーン観光がカンボジア文化に資すると理解して、この出版が申し分なく仕上がるよう援助を引き受けてくれた。この援助は上述したことを実現する上で大変有り難いものだった。
もう1つ明らかにしておくべき大事な点は、各儀礼の意味をまとめるにあたって、分析、検討、解釈したものをどのように総合して要約するかは、それぞれ3人が自ら責任を負ったということである。資料については、他のカンボジア人研究者の同僚から提供されたものもある。例えば、68ページから69ページで概観したチャン・ソク・キリー・ソート儀礼に関するいくつかの重要な情報は、シィーヨン・ソピアルット(ស៊ីយ៉ុន សុភារិទ្ធ)氏の研究に負っている。さらに、誰よりも先に注目して調査に着手し、私たちが特にコホ・コング州スラエ・オムバル郡の暗い部屋(ムロプ)に籠る儀礼の研究に取り組む道を開いたのは、ピ・ポンニーン(ពិ ប៊ុន្នីន)氏である。これ以外にも、アンコール地域からの様々な重要資料があり、これらは実際に村で行なった調査が基になっていて、アプサラ機構(訳註1)の以前の「文化と研究部門
《2004年に合同解消》の「社会教育班によってなされたものである。この本に掲載した多くの写真はこの班の調査によるものである。その名前をすべて記すことはできないが、班員の皆さんに深く感謝し、この仕事の一部は皆さんとの共同のたまものだと考える次第である。
日本の読者の皆さんへ
カンボジアの人類学について書かれたものが日本語に翻訳されるのは、おそらくこれが初めてだと思います。このような意義ある仕事を行ったのは吉野實氏だけでしょう。特に氏がこの仕事に取り組もうとしたのは、けっして自らの利益のためではなく、カンボジアの風俗習慣を愛する気持からであります。
世界において科学技術がどこよりも発達している国々の中で、自国の古くからある風俗習慣に最も配慮しているのは日本です。こうしたあり方は単に過去への郷愁から昔を振り返っているという意味ではありません。自らの拠って立つところへの誇りと、歴史における確かな文化的発展がそうさせているのです。そうであるからこそ、日本人は他の人たちの文化を愛することができるし、また理解したいと思うのでしょう。
この本は分かりやすく写真を載せて、男女を含めたカンボジアの人々の一生を論じたものです。この中で述べた風習のいくつかは完全に過去のものとなりつつありますが、この論文をお読みになってくださる日本の読者の皆さんに満足していただけたら幸いです。
アング・チュリアン
プリアプ・チャンマーラー
スン・チャンドゥプ
上記内容は本書刊行時のものです。