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タイ語のことわざ・慣用句
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年12月25日
- 書店発売日
- 2018年12月22日
- 登録日
- 2018年12月4日
- 最終更新日
- 2018年12月19日
紹介
タイでよく使われる120のことわざ・慣用句をイラスト入りでわかりやすく説明。
さらに・・・
①日本語・英語の同じ意味のことわざとの比較
②そのことわざを使ったタイ語の例文の学習
③使われているタイ語の単語一覧
と、タイ語学習にとても役立ちます。
たとえば・・・
「象に乗ってバッタをとる」
小さな物事を処理するために大げさな手段を取ったが、費やした苦労や時間の割には効果が少ない、割に合わないという意味。日本語だ「牛刀をもって鶏を割く」ですね。このように意味が想像できるものもあれば、タイだけに通じるような独特の表現もあります。タイ語学習者必携の1冊です。
目次
目次(タイ語と発音記号が加わります)
1動物(哺乳類)
象 象に乗ってバッタをとる
象を殺して象牙を取る
死んだ象を蓮の葉で隠す
盲人が象をまさぐる
象の真似して糞をする
サトウキビが象の口に入った
虎 虎を描いて牛を脅す
森に虎を放つ
爪を隠した虎
1つの洞窟に2頭の虎は居られない
鹿の顔に虎の心
虎を逃れてワニに遭う
山羊 山羊に乗って追いかける
罪を受けた山羊
牛・水牛 牛の角を押さえて草を食べさせる
皮と角を手にしたまま捕まる
牛を愛するならつないでおく、子を愛するならムチを
牛がいなくなってから牛囲いを作る
胡弓を弾いて水牛に聞かせる
水牛の角を尖らせて闘わせる
豚 豚のしっぽにこびりついた土
豚を渡し猫を渡す
猫 家でご飯を食べ屋根で糞をする
猫がもがいて死んだぐらいの土地
猫にあてつけて魚を焼く
猫に焼き魚を預ける
猫が居ないとネズミは楽しい
猫を染めて売る
犬 自分のしっぽを持ち上げる
隙を狙って嚙みつく犬
ネズミ 米びつの中に落ちたネズミ
ウサギ 3本の足で立っているウサギ
2鳥・魚・爬虫類・虫
鶏 鶏を放つ
しっぽを切ってお寺に放つ
鶏には蛇の足を見え、蛇には鶏の乳房が見える
鶏の糞を踏むことさえできない
握りこぶしの中にいるひよこ
鳥 双頭の鳥
1発の弾丸で鳥を2羽しとめる
小鳥は身の丈にあった巣作りをする
カラス 腸をたぐりよせてカラスに食べさせる
魚 池を掘って魚を誘う
両手で魚をつかむ
投網の外側にひっかかった魚
キノボリウオは口のせいで死ぬ
蛇、魚、わかるわかる
エビ 藻エビでスズキを釣る
カニ カニを捕まえて籠に入れる
貝 貝の口、カニの口
カエル 椰子殻の中のカエル
ガマガエル ガマガエルが輿に乗る
クモ・カイコ 糸を引く
シロアリ シロアリが焚き火に飛び込む
蛇 コブラの喉に手を入れる
ワニ ワニに泳ぎを教える
3自然
海 大海で針を探す
川 5本の川を引いてくる
運河 川から運河に戻る
田 冠水した田に空芯菜がまばら
水 水を汲んで切り株にかける
潮が満ちたら急いで水を汲め
水は舟に頼り、虎は森に頼る
水が引くと切り株が現れる
水を形にこねる
水を見ずに竹を切って水筒を作る
水に落ちても流れず、火に落ちても燃えない
風 風の元で火を断つ
木 木っ端を使って丸太を動かす
木の実は木から離れては落ちない
雲 雲に隠れる
4身体
顔 顔を地面に埋め込んで逃げる
目 盲目の人が眼鏡を手に入れた
鼻 鼻をひっぱりまわす
口 口が洪水
口は甘く尻はすっぱい
10の口に言われても自分の目で見ることには及ばない
口をあけるとのどちんこが見える
耳 壁に耳あり 門に隙間あり
耳になり目になる
片方の耳で聞き、片方の耳は取っておく
耳で戯れ、目で戯れる
耳は田へ、目は畑へ
手・腕 誰の手を取って匂いを嗅げばいいのか
相手の手を縛って殴る
手は漕がず、足を水につける
肘の下の水を飲む
脚・足 脚を揺らしてトゲを求める
スネの毛は抜けない
足跡を測る
胸 胸元から山を取り出す
腹 石灰を食べれば、お腹がほてる
背 人の背中で稲作をする
尻 尻に火がつく
5食
塩 塩がウジ虫になる
ウコン・石灰 ウコンと石灰
ナムプリックナムプリックを作って川に溶かす
バナナ バナナをむいて口に入れる
パクチー 表面にふりかけてあるパクチー
6暮らし
舟 同じ舟に乗っている
沈んでも沈み切れない
城 空中にお城を建てる
仏像 仏像の背中に金箔を貼る
蓮の花 コンチャクを蓮の花と見間違える
金 金は熱さを知らない
金を包んでいる雑巾
人 人が多いほど話が多い
姉妹 姉を愛すれば妹が惜しい
ピー ピーがとりついたり抜けたりする
臼 臼を押して山に登る
斧 サークを割る斧
鉈 手間をかければ美しい鉈ができる
籠 籠に入れて水で洗う
種 種をまけば果実を期待する
スプーン 銀のスプーン金のスプーンをくわえて生まれる
お湯 先にお湯を浴びた
ワイ 会えばワイ(合掌)して裏で舌を出す
発熱 熱を出す前に慌てる
屁・糞 屁よりも糞を握ったほうがまし
ピー・クルイピーとクルイだね
踊り 下手な踊りはピーのせい太鼓のせい
前書きなど
はじめに
2016年、タイ国民に慈父のように敬愛されていたラーマ9世プーミポン国王が逝去されました。私たちは悲しみに暮れながらも、国王がタイの人々に残された数々のお言葉をもう一度嚙みしめようと、整理してみました。その時、出会ったのが次のような表現です。
「仏像の背中に金箔を貼る」
タイの国立大学の卒業式では、毎年プーミポン国王が卒業生全員に手ずから卒業証書を授与することが慣例となっていました。これは1963年7月25日、プーミポン国王がチュラーロンコーン大学の卒業式で講話をされた時に使われた慣用句です。タイ人はお寺にお参りする時、花、お線香、ろうそくをそなえ、仏像に金箔を貼るという習慣がありますが、図のように金箔を貼る場所によって目的が異なります。
胸: 人から愛される
頭: 聡明で記憶力が優れる
臍: 人に支えられる
顔: 商売繁盛
足: 住居や乗り物に
困らず、裕福
手: 権威があり、 人に尊敬される
普通はこのような願いを込めて、見えるところに金箔を貼る人が多いのですが、「背中」という見えないところに金箔を貼るというのは、「人の目につかないところでよい行ないをする」という意味で、日本語では「縁の下の舞」(あるいは「縁の下の力持ち」)という語句がこれに近いでしょう。プーミポン国王はこの言葉を次のように使われました。
「仏像の背中に金箔を貼るという行ないがありますが、必要なときにはそういうこともすべきなのです。実際には、多くの人はそんな『縁の下の舞』のようなことをするのはあまり好みません。なぜなら誰にも見えていないと思いこんでいるからです。しかし、誰もが仏像の前面にばかり金箔を貼って、背中には金箔を貼らないということであれば、その仏像は完全に美しい仏像にはなれないのです」(119ページ参照)
(1963年7月25日、チュラーロンコーン大学卒業式でのラーマ9世プーミポン国王のご講話から)
私たちが本書を作ろうと思ったきっかけは、プーミポン国王のご講話の中のこの表現に出会ったことです。外国人は「仏像の背中に金箔を貼る」という言葉を聞いても、それがどんな意味か正確に理解することは難しいかもしれません。しかし、仏教が日々の暮らしに浸透しているタイの人々は、そこに込められたプーミポン国王の教えを即座に理解し、深くうなずきます。
そして、考えてみれば、タイ人の生活や価値観、歴史に根付いたこのような表現、つまりことわざや慣用句がタイ語には無数に存在するのです。それはタイ人にとってはとても日常的でごく自然に反応するような表現ですが、外国人は単語1つ1つの意味をつなげていっても、なかなか正確に理解することはできません。背景にあるものはなにか、それを知った上で初めて、なるほどとうなずけるものが多く、タイ語を学ぶ上ではその修得がとても重要になってきます。
そうした表現は新聞やテレビの報道から、卑近な日常会話、噂話にいたるまであらゆる場面で登場してきます。
たとえば、2017年3月6日のmanager onlineというネット新聞の見出しに次のような慣用句が使われました。
「トランプは守りの姿勢から一転、水を形にこねてオバマを攻撃した」
(URL: https://mgronline.com/daily/detail/9600000023049)
これは、トランプ氏が大統領選挙中、証拠がないにもかかわらず、オバマ氏が自分の電話を盗聴したと言って攻撃したという内容の記事です。タイでも、読者の興味を引くためにセンセーショナルな見出しを付けることがよくありますが、これもその一例です。
タイ語には水を素材とすることわざや慣用句はたくさんありますが、「水を形にこねる」というのは「話をでっち上げる、作り話をする」という意味です(78ページ参照)。
もちろん、タイ国内の政治や経済に関する記事の中にも慣用句やことわざはたくさん出てきます。
「プアタイ党は政府に対し、ナムプリックを作って川に溶かすように予算を無駄遣いしたと攻
撃した」
(2009年2月3日のSanook News)
プアタイ党は2006年のクーデターにより失脚したタックシン・チンナワット元首相が結成した政党です。「ナムプリック」はポピュラーな調味料でカレーなどに入れればいい味になりますが、川に入れればなんにもならない、つまりお金を無駄遣いするという意味です(112ページ参照)。経済が低迷しているにもかかわらず財政を無駄遣いする政府を野党のプアタイ党が批判した、という内容ですが、ナムプリックがどういうものか知っていれば、なるほどとうなずける表現です。
より頻繁にことわざや慣用句が引用されるのは、生活に密着したタブロイド新聞系のニュースです。
「猫を染めてカムリを売ったトヨタの代理店が、コーラートに住む女性に訴えられた」
(URL: https://www.thairath.co.th/content/412812 2014年3月27日のThairath News)
中古車を新車のカムリと偽って販売したという記事ですが、「猫を染める」が「羊頭狗肉」の意味になるわけです(39ページ参照)。
ワイドショー的に楽しめるお笑い記事にもことわざや慣用句は登場します。
「衣装が花婿を裏切った! 花婿は地面に顔を埋め込んで逃げたかった! 結婚式の最中に着けていたサローンが突然、風で飛ばされたからだ。花婿の脚は風に当たりすっかり冷たくなってしまった。その光景を見ていた招待客はびっくりすると同時に爆笑した」
(URL: http://www.tsood.com/contents/171064 2017年7月5日Tsood.comのネットニュース)
このエピソード、実は南インドの出来事なのです。花婿が穿いていた腰巻き状の「ルンギー」という民族衣装が風で吹き飛ばされて脚がむき出しになってしまい、本人もまわりも大笑い、という映像がなぜかタイのネットに流れてバカ受けしたのです。「ルンギー」をタイ風に「サローン」と言ったわけですが、おもしろいのは、恥ずかしくて「地面に顔を埋め込んで逃げたかった」という表現です。日本なら「穴があったら入りたい」と言うところですが、タイ人が何気なく使っているこの慣用句の出どころは古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」(タイ語では「ラーマキエン」)の一話なのです(86ページ参照)。
このように、タイ人が日常的に使っていることわざや慣用句は、日本語の表現に似ているものもありますが、なぜそういう意味になるのかタイ人によく聞いてみないとわからないというものもたくさんあります。それが文化や歴史の違いということなので、タイ語を学び、タイという国をもっと深く理解するために、ぜひ本当の意味を知っていただきたいと思います。
本書に取り上げたことわざや慣用句は数多くの表現の一部にすぎませんが、正しい意味と使い方を学ぶことがあなたのタイ語の力を大きく飛躍させることは間違いありません。それぞれの表現に相当する日本語の表現や英語のことわざ・慣用句を参考までに載せましたが、すべてがぴたりと一致するわけではありません。タイ語の例文をよく読んで理解を深めてください。
版元から一言
まさに楽しく学べる本です。
上記内容は本書刊行時のものです。