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後藤正治ノンフィクション集 第7巻『ベラ・チャスラフスカ』節義のために『マラソンランナー』
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年1月
- 書店発売日
- 2011年1月20日
- 登録日
- 2012年10月30日
- 最終更新日
- 2012年10月30日
書評掲載情報
2016-05-01 | 東京新聞/中日新聞 |
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紹介
東京五輪、世界中を魅了した女子体操の金メダリスト、ベラ・チャスラフスカ。一躍ヒロインとなったが、その後、過酷な時代の渦に巻きこまれてゆく──。取材・執筆に約5年。訪れた地域は世界各地にまたがる。その果てに辿りついたものは……。著者がもっとも愛着があるという“この一作”
時代を象徴するマラソンランナーをとりあげ、レースと共に彼らの思考や生き方を描いた『マラソンランナー』を併せて収録。本作は、マラソンランナーを通して見た明治から現代に至る日本人の精神史でもある。
目次
『ベラ・チャスラフスカ』節義のために
序章………旅へ
第一章……寒い国のバラ
第二章……東洋の娘たち
第三章……春、そして冬
第四章……復活と悲劇と
第五章……帝国に生きて
第六章……自由ロシアの子
第七章……メキシコの花嫁
第八章……白い妖精
第九章……歌声は消えず
終章………狐の森
あとがき
主な参考文献
五輪女子体操個人総合・歴代メダリスト
『マラソンランナー』
第一章……坂の上の雲
第二章……苦い勝利
第三章……アトムボーイ
第四章……完走者
第五章……貴公子
第六章……朗らかランナー
第七章……遠いロード
第八章……ジョガー娘
あとがき
主な参考文献
第七巻解説─白石一文
第七巻への覚書
追記
「第七巻への覚書」より
いまこう思う。二十世紀という時代、多分に悲と苦に覆われた世紀ではあったが、<チャスラフスカたち>が存在し、<1968年>があり<1989年>があった。あったということはこれからもありうるということである。それが次の世紀においても小さな灯火であり続けていくだろう、と。
本巻には『マラソンランナー』を併せて収録した。長距離ランナーたちの属性であるのか、いずれも内面を言葉化することにおいて豊かな人々であった。ふとボクサーに似ていると幾度か思った。「日本人にとってのオリンピック、あるいはその精神史」というべき一冊をまとめることができたのは、彼らと彼女たちがそのような人々であってくれたおかげである。
白石一文「解説」より
つまり、 本書で後藤正治という作家が描こうと企てている本当のテーマは、この人間社会において最も難解な命題である「個人と国家との関係」それ自体についてなのである。
後藤氏は、一見するところ国家や政治とは縁遠いと思われる女子体操というスポーツの戦後史を追いかけながら、そんな中で否応なく政治的選択をせざるを得なくなった一人のヒロインの姿を浮き彫りにし、ある個人が残す<精神の形>こそが、社会主義<革命>という巨大な国家原理よりもはるかに重く貴重なのだと再確認する。
それが、この命題に対する後藤氏の最終的な解答なのである。
上記内容は本書刊行時のものです。