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カラスの自然史
系統から遊び行動まで
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2010年9月1日
- 書店発売日
- 2010年8月12日
- 登録日
- 2010年7月31日
- 最終更新日
- 2015年10月26日
紹介
カラス属は南米と南極を除く世界の5大陸に生息しており,大いに繁栄している。日本には主にハシブトガラスとハシボソガラスの2種のカラス類がすんでおり,さらに第3のカラスともいうべきミヤマガラスが季節ごとに訪れる。カラスは鳥類の中でも知能に優れ,ヒトとの知恵比べをするほどの頭脳の持ち主である。このようにカラス類は身近な存在である割には,忌避の対象となりこそすれ,従来,生態学や行動学の対象として詳細に研究されてこなかった。
本書では,4部15章にわたって,18人の第一線の研究者たちが自然界における生活を理解するために,さまざまな角度からカラスに迫る。第Ⅰ部では,カラス科の系統関係に関する研究である。第II部では,生息環境と環境利用に焦点を当てる。第Ⅲ部ではこうしたカラスの食性や,その採食行動が生態系に与える影響などを解き明かしていく。第Ⅳ部では,カラスの社会性や文化,認知能力に関する興味深い知見を紹介する。
目次
口絵
まえがき
第Ⅰ部 系統と進化
第1章 カラス類の系統進化史(Alexey Kryukov・鈴木 仁・Elisabeth Haring)
カラス科の種の多様性と起源 / カラス科の分子系統 / カラス類の地理的分化―ユーラシア大陸における東西分化 / ハシボソガラスの地理的構造 / サハリンのカラス類
第2章 カラスの種分化と地理的変異(山崎剛史)
種の定義と一般系統概念 / 種分化のメカニズム / 日本のハシブトガラスの地理的変異 / 体サイズの地理的変異とベルクマンの規則 / カラス類の種分化の特徴
第Ⅱ部 生態分布と環境利用
第3章 農村におけるカラス2種の環境利用と種間関係(吉田保志子・百瀬 浩)
営巣の環境利用 / 繁殖成績は何に影響されているのか / 都市と農村の繁殖状況を比べる / ハシボソガラスとハシブトガラスの種間関係
第4章 都市におけるハシブトガラスの局地移動(森下英美子・樋口広芳)
都市にすむハシブトガラスが嫌われるのは / 都市にすむカラスの追跡法 / カラスの背中にPHSを乗せるために / 飛び立ったカラスはどこへ? / カラスの暮らし / 安定的な食物と不安定な食物 / 都会はカラスの楽園なのか?
第5章 日本におけるミヤマガラスの越冬分布とその変化(髙木憲太郎)
渡るカラス / 分布が拡がったミヤマガラス その経緯を探る / 分布拡大の原因 / 分布の拡大,なぜ東北で折り返したのか?
第Ⅲ部 食生活と生態系内の役割
第6章 栄養塩の供給から見る,都市におけるハシブトガラスの役割(藤田素子)
都市環境の生態学的な特徴 / なぜ都市でハシブトガラスの個体数が増加したのか / ねぐらに落とされる窒素・リンはどこから来るのか / 糞の化学 / カラスによる施肥効果
第7章 海辺におけるハシボソガラスの採食とその生態学的意義(堀 正和)
海辺のカラスたち / 冬~夏―繁殖期前から繁殖期にかけての採食行動 / 夏~秋―巣立ちから繁殖期後の採食行動 / カラスの採食行動の生態学的意義
第8章 カラスの果樹園―伊豆諸島におけるハシブトガラス島嶼個体群の生態寸描(長谷川雅美)
カラスの数と位置を記録する / 食物を探る / カラスが果樹園をつくる? / カラスとの交信 / なわばり内の果樹本数 / 畑のカラスと街のカラス / 他の島ではどうか
第9章 カラスの特異な食習性と地域食文化(樋口広芳)
地域と結びついた特異な食習性 / カラスにとっての地域食文化 / 文化の伝播
第Ⅳ部 社会と行動
第10章 伊那谷におけるハシボソガラスの社会(吉田保晴)
捕獲方法 / 個体識別の方法 / 相手を追い出し,なわばり確保 / なわばりを持つことができない個体の採食地への出現 / ねぐらへの集結 / ねぐら場所の変遷
第11章 集団ねぐらから見たカラス社会の二重構造(中村純夫)
なわばりを持つものと持たざるもの / カラスの一生というのはどのようなものなのだろうか? / カラス社会の季節的変動を反映する季節ねぐら / 季節ねぐらの成立・消滅を,いつ,だれが,どのように決めているのか?
第12章 ハシブトガラスの群れにおける個体間関係とその行動・認知メカニズム(伊澤栄一)
カラスの社会 / ハシブトガラスの個体間優劣関係 / 個体間の優劣関係維持の行動メカニズム / コンタクトコールを用いた個体認識メカニズム / 今後に向けて
第13章 ハシブトガラスの識別能力(杉田昭栄)
実験結果を知る前に知っておくべき事項 / 色の識別能力 / カラスは○や×などの模様の区別をどれだけできるのか? / 人の顔写真を見分ける能力 / 識別能力に影響を与える色や空間 / カラスはグループ分けができるのか? / カラスは数や量の識別ができるのか? /
記憶の長さ
第14章 カラスの遊び(黒沢令子・樋口広芳)
「遊び」とは―定義 / カラスの「遊び」事例 / カラスの遊びのカテゴリー / なぜ遊ぶのか? / カラスの遊び研究の課題
第15章 人とカラスの文化的共進化(John M. Marzluff・黒沢令子)
文化的共進化 / 人とカラスの文化的共進化 / 変わる人の自然観
引用・参考文献
索 引
上記内容は本書刊行時のものです。