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変貌と伝統の現代インド
アンベードカルと再定義されるダルマ
- 初版年月日
- 2018年3月23日
- 書店発売日
- 2018年4月13日
- 登録日
- 2018年3月2日
- 最終更新日
- 2018年3月6日
紹介
カースト絶滅を標榜したアンベードカルの思想とその活動。今も息づく伝統概念 “ダルマ”。新旧織りなす2つの思想を考察することで、激しく躍動する現代インドに一定のパースペクティブを投げかける。
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本書に収められている論考は、龍谷大学国際社会文化研究所において、二〇一三年度から二〇一四年度の二年間にわたり「現代インド変貌の諸相――マイノリティとマージナリティの視点から」というテーマのもとにすすめられた共同研究の成果の一部である。共同研究では、ますますダイナミックに躍動しつつある現代インド社会の実際の姿を、マイノリティとマージナリティの視点から捉えるとともに、それを支えている論理や原理が、伝統的なインド思想とどのように繋がり、また同時に相克する関係にあるのかということについて議論を重ね、考察をおこなった。共同研究に参画したのは、歴史学、文献学、文化人類学、宗教学、仏教学など、さまざまなディシプリンにもとづいて南アジア地域の歴史・文化・社会・政治・宗教を研究の対象としている研究者である。それぞれの研究者が、それぞれのディシプリンにもとづいて、現代インド社会の実際の姿を理解する視座を提供しようと試みている。
より具体的に言えば、第Ⅰ部では、現代インド社会における「下層民の台頭」に大きな影響を与えたアンベードカルの思想が、民主主義やカースト制度に対してどのような理解と態度をとったのかについて明らかにするとともに、アンベードカルの思想が独立以降のインドの地域社会でどのような役割を果たしてきたのかについて考察している。
(中略)
第Ⅱ部の各章では、アンベードカルの思想やその後のダリト運動の言説に見られる論理や、行動の背後には、インド社会の中で、長期にわたり歴史的に培われてきた伝統思想が存在しているという共通理解のもと、特にダルマあるいはダンマという概念に焦点を当てて、伝統的なインドの思想において、ダルマあるいはダンマという概念がどのような思想系譜を持っているのか、そしてそのような系譜がどのように現代のインド社会において継承されているのかが議論の中心となっている。すなわち、ダルマというインドの伝統的な概念は、歴史的にインド社会に生きる人々にとって、行動の重要な規準となってきたことが観察される。そして、現在のインド社会における下層民の一定の地位向上が、ダルマというインドの伝統思想、とりわけ宗教思想の変革と深く関連している。つまり、ダルマという伝統思想の再起用が、ダリト運動などの実践を支えているのである。
(「はじめに」より)
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龍谷大学国際社会文化研究所叢書21
目次
はじめに(嵩 満也)
Ⅰ 現代インド変貌の諸相――アンベードカルの思想とインド下層民の台頭
アンベードカルにおけるカースト絶滅の道とブッダのダンマ(嵩 満也)
宗教、民主主義に対するアンベードカルの見解(ゴウリ・ヴィシュワナータン)
インドの仏教とダリト解放運動(ガンシャム・シャー)
[COLUMN] 一九八〇年代におけるダリト・パンサー運動との出会いと交流(佐藤智水)
仏教とともに生きて――現代ウッタル・プラデーシュ州における仏教運動と仏教実践(舟橋健太)
インドにおける子どもの権利・貧困・エンパワーメント(中根智子)
[COLUMN] スリランカ仏教とカースト制――民族抗争の結果(中村尚司)
[COLUMN] 成長するインドICTサービス産業の担い手たち(鍬塚賢太郎)
Ⅱ 現代に生きるインドの伝統思想――ダルマと幸福を再定義する
古典期バラモン教におけるダルマの定義とその正当性の認識根拠(パトリック・オリヴェル)
ダルマの相続者(若原雄昭)
翻訳において失われたもの――植民地時代のヒンドゥー法の一元的処理(ヴェルナー・メンスキー)
普遍的法則としてのダルマ――仏教的パースペクティブ(桂 紹隆)
幸福(ウェルビーイング)探求の支えとしてのダルマ――秩序の再構築過程に着目して(田辺明生)
[COLUMN] ダルマの系譜(井狩彌介)
上記内容は本書刊行時のものです。