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「日本国紀」は世紀の名著かトンデモ本か
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2019年4月4日
- 登録日
- 2019年6月8日
- 最終更新日
- 2019年6月8日
紹介
大ベストセラー『日本国紀』の正しい評価を、
古今東西の歴史に通暁した当代一の論客が、
「保守」「リベラル」「右」「左」といった立場にとらわれず、
冷静に、実証的に分析したもの。
目次
はじめに~『日本国紀』はどんな本なのか?
序 章 『日本国紀』は二十一世紀の『日本書紀』でなく『古事記』でしょう
~戦後史観の欺瞞から目を覚ますのには有益
第一章 天皇陛下は神武天皇の子孫でない? ~「万世一系」を否定してしまった謎
第二章 戦後史観に近い『日本国紀』の古代史 ~九州王朝説などにも共感を示す
第三章 韓国による古代史改竄に鉄槌 ~百済は日本の植民地だったとは過激
第四章 『逆説の日本史』に似た陰謀史観 ~推理作家的な謎解きの面白さと危うさ
第五章 日本はいつもいい国という楽天主義 ~江戸時代の負の側面に甘い
第六章 長州と尊王攘夷はお嫌いらしい ~明治維新は世界史的事件ではないのか
第七章 戦後日本は誇れる国でないらしい ~戦争で日本はまったく悪くなかった?
前書きなど
百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)は、歴史書として空前のベストセラーだそうだ。
「世紀の名著」と誉める人もいるし、「トンデモ本」扱いする人もいる。しかし、どちらにしても、これだけの読者が読み、読んだ人の多くが良かったと納得しているのは間違いないから、これからの日本人の歴史観にも大きな影響を与えると思う。
そうであれば、読んだ方にも、これから読もうか迷っている人にも、読む気はないが、どんなことが書いているかくらいは知っていたい人のためにも、その解説を、比較的、ニュートラルな立場から提供することに意義があると思う。
私の第一印象として感じたのは、まず、戦後史観で育って来た人にその歪みから覚醒のきっかけを与えるには良い本だということだ。太平洋戦争についての見方は少し偏っているが、全般的にはそれほど行き過ぎた愛国心が炸裂しているわけでない。そして、読みやすいし面白い。
その一方、これを日本史のバイブルのようにされていしまうと、いろんな意味で都合が悪い点が多いのも確かだ。
作家の書いたものの宿命で、面白いとか、たまたま共感した見方に流されているので、首尾一貫していないとか、可能性の指摘に過ぎないとか言うことが多い。
また、太平洋戦争について、日本はなにも悪くなくてアメリカが全部悪いといわんばかりのトーンは、日本人同士では盛り上がるだろうが、世界に向かって訴えるには説得力がない。日本だけが悪いのでないというくらいでないと、孤立してしまう。
戦後体制についても、現実の日本国家のとっている立ち位置と違いすぎて、世界に対して歴史認識を主張していく基礎になり得ないと思う。
『古事記』は、稗田阿礼という物知りが当時の日本人が思っていたことをそのままに吐露した物語だった。それに対して、『日本書紀』は文献などにも当たって、間違いや矛盾を正し、客観的な推測もし、それを踏まえて、日本の唐や新羅に対しての外交的な立場をよくする目的で編纂したものだ。そして、私の書いている歴史は、『日本書紀』と同様の立ち位置からのものだ。それに対して、百田氏の「日本国紀」は、むしろ、「古事記」に似たものでないのか。
本来この本は、「平成古事記」として優れた作品なのである。
戦後日本の歴史教育は、戦前の教育にたいするアンチテーゼが基調になっている。日本の歴史教育は、むしろ、狂おしいまでに過去否定の度を強めている。
そういう状況だから「日本国紀」を読めば、左巻きを、右巻きで中和させることになって、ちょうど良いかもしれない。ただ、大人が読むとしたら、日本の悪いところ、良くなかったところもバランス良く認識しておいた方が良いに決まっている。戦後史観にしたがって書かれた歴史を否定するのはいいが、独りよがりなジコチュウ史観も困るのだ。
『日本国紀』を歴史小説としてならいいが、通史としては体をなしていないともいえる。
版元から一言
百田本を読んだ人も読んでいない人も、まず手にとって読んでいただきたい。
この本は百田本の礼賛本でもなければ、一方的な批判本でもない。
極めて中立的な視点で実証的に百田本を論じている、ほとんど唯一の書である。
上記内容は本書刊行時のものです。