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正法眼蔵第三 仏性 私釈 松岡 由香子(著) - 七つ森書館
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正法眼蔵第三 仏性 私釈 成仏以来に具足する法なり

発行:七つ森書館
A5判
496ページ
上製
定価 3,000円+税
ISBN
978-4-8228-1895-1
Cコード
C3015
専門 単行本 仏教
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2018年6月
書店発売日
登録日
2018年4月18日
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紹介

 道元禅師主著『正法眼蔵』の「仏性」について、道元自らの言葉と用例に拠る画期的な解釈。
 伝統的な解釈と現代の諸解釈を吟味して批判する。
 そして、著者独自の視点から道元が示そうとした真意を探る。

目次

はじめに

第1章 【悉有仏性】
 一節 一切衆生悉有仏性   釈迦牟尼仏言、一切衆生
 二節 是什麼物恁麼来    世尊道の一切衆生悉有仏性は
 三節 仏性に悉有せらるる有 しるべし、いま仏性に
 四節 先尼外道の我     仏性の言をききて
 五節 当観時節因縁     仏言、欲知仏性義
 六節 馬鳴・仏性海     第十二祖馬鳴尊者

第2章 【衆生無仏性】
 一節 四祖五祖問答     五祖大満禅師
 二節 五祖六祖問答     震旦第六祖曹渓山大鑑禅師
 三節 六祖・無常仏性    六祖示門人行昌云

第3章 【身現仏性】
 一節 龍樹・円月相     第十四祖龍樹尊者
 二節 提婆・身現相仏性   尊者の嫡嗣迦那提婆尊者
 三節 育王山画餅      予、雲遊のそのかみ

第4章 【諸祖師仏性問答】
 一節 塩官・有仏性     杭州塩官県斉安国師は
 二節 大潙・無仏性     大潙山大円禅師
 三節 百丈・仏有仏性    百丈山大智禅師示衆云
 四節 黄檗・明見仏性    黄檗在南泉茶堂内坐
 五節 趙州・仏性無仏性有  趙州真際大師に、ある僧とふ
 六節 長沙・蚯蚓両段    長沙景岑和尚の会に

あとがき

前書きなど

はじめに

■《仏性》巻について
 この巻には親筆本は存在しないが、懐奘の筆になる書写本がある。その奥書には、「仏性」と書かれたその上に「正法」と重ね書きされ、続けて「眼蔵仏性第三」と書かれて、続く「仁治二年辛丑十月十四日記在于観音導利興聖寳林寺」という句は棒線で消されて、その後に書かれている「同四年癸卯正月十九日書写了」はそのまま残っている。さらに別筆で「爾時仁治二年辛丑十月十四日在雍州観音導利興聖寳林寺示衆 再治御本之奥書也」とあって、さらに「正嘉二年以再治御本交合了」と記されている。
 これは永平四十一代江寂の識語によれば、懷弉が仁治四年に書写したこの本に対して、道元が自らの直筆本にさらに筆を加え添削した本(再治御本)を得た三代義介が、その添削を写して校合したものである。しかし瑠璃光寺本懷弉奥書に「所々散々、或イハ書キ消シ、或イハ書キ入レ、或イハ書キ直」されたと記されており、河村孝道はミセケチ部分や奥書も懐奘の筆であるとする。とりわけ本文の前の部分には非常に多くの添削が窺える。
 また、この添削によって、道元は元来は「十月十四日記」とあるように、これを示衆ではなく、書いて「仏性」と後題していたものを、再治の時に「示衆」に代え、『正法眼藏』の「第三」と記して七十五巻本に配したことが分かる。そのことも《仏性》の重視の証拠であり、おなじように推敲を重ねたと推測される《現成公案》と同様に、『正法眼蔵』の中でも道元がもっとも心を砕いて表現した最重要な巻であるといえる。
 その再治がいつであったのか、一度であったか数度にわたったかは、もはや知るよしもない。しかし、建長四年(道元五十三歳)に拾勒された《現成公案》が第一巻であり、それも再治されたものと見られるから、おそらく晩年まで《仏性》の再治が続いたのではなかろうか。また、これは『正法眼藏』の中で《行持》(私見によれば、宋での行脚時代のノートを元に書き足して編集したもので、書き下しではなかろう)に次ぐ長篇であることから、書き下しとしては一番長い巻といえる。

■執筆状況
 この巻が書かれた(あるいはなんらかの形で示衆された)仁治二年は、道元の四十二歳にあたる。三十七歳で深草に興聖寺を開き、懷弉を首座として本格的な僧堂の営みを始めてから五年、油が乗り切っている年代であり、またその春には日本達磨宗の覚晏門下の懐鑑、義介、義尹、義演、義準等の、後に主要な弟子になる人々が帰投している。
 新しい弟子達を意識してのことであろうか、夏には《法華転法華》を俗弟子に書き、《心不可得》を示し、九月《古鏡》《看経》を示衆し、十月にこの《仏性》と《行仏威儀》を書き、十一月には《仏教》《神通》 が示衆されている。翌年には十七巻もの示衆がなされた。それゆえこの頃は、道元がもっとも精彩を放った示衆(記)を多くなした時期である。そのうえ、この巻は一度書写させたものを、さらに晩年まで添削を続けたとみられ、その跡が懷奘書写本に種々認められる。

■訳について
 原文は難解ではあるが独特の格調高い日本語であり、訳が困難な造語もあるから、研究者にとっては現代語訳はないほうがよいと思う。しかもすでに多くの現代語訳がなされている。宗門の学者である水野弥穂子訳、仏教学者である玉城康四郎訳もよい訳であろうが、なお仏教用語・禅宗用語に馴染んでいない人には分かりにくい面がある。いっぽう石井恭二訳では、その弊は乗り越えられているものの、道元が関知しないサンスクリットへの読み替えや、自分の理解を読み込んだ哲学的用語を多用するため、道元の言葉との隔たりに大きな問題がある。そこで初心者のために、思い切った現代語訳をあらたに試みた。その際、本文にはなく解読の便のため付けたものは( )でくくった。
 他にも多くの『正法眼藏仏性』の現代語訳や部分訳がある(中村宗一全訳『正法眼蔵』第一巻所収、誠信書房、1991。高橋賢陳『全巻現代訳・正法眼蔵』上所収、理想社、1991。西嶋和夫現代語訳『正法眼蔵』第四巻所収、金沢文庫、1995など)が、現代への影響は少ないとみて、それらの参照は割愛した。

■古釈について
 曹洞宗では「辦・現・仏」といって、『辦道話』《現成公案》と共に《仏性》は多くの解釈、注釈がなされてきた。しかし、最も古く、しばしば諸解釈が参照している道元の弟子の詮慧の『聞書』とそれを弟子の経豪が編集した『御聴書抄』は、詮慧が道元に投ずる前に天台横川で出家し、顯密を学んだため、天台本覚法門の影響を受けており、とりわけ「本覚」と関係の深い「仏性」がこの巻の主題であるから、その解釈には注意を要する。『聞解』は江戸時代の宗門中興の学者である面山の弟子、斧山玄鈯の作である。『却退一字参』は、瞎道本光が本文を漢文に改め、さらに本文中に必要な語に註や典拠を付けた。『私記』は、『御聴書抄』や『一字参』を参考にまとめられた。『弁註並調絃』は江戸時代最初の『正法眼藏』注解であるが、見性禅的な理解をもつ点で注意を要する。『那一寳』は天桂から四世の法孫により書かれた。

著者プロフィール

松岡 由香子  (マツオカ ユカコ)  (

 1945年静岡県生まれ。京都大学文学部博士課程満期修了。日本キリスト教団牧師。
 現在、山水庵で日曜礼拝と月一回の坐禅会を行い、東京で年に二回、各二日間の眼蔵研究会の講義をしている。
 著書に『親鸞とパウロ』(筆名 真木由香子)(教文館、1988)、「古佛道元の思惟」(『研究報告』第三冊、花園大学禅文化研究所、1995)、「道元」(『大乗仏典 中国・日本篇23』)共著の現代語訳(中央公論社、1995)、『総ヒバクの危機──いのちを守りたい』(共著、游学社、2001)、『仏教になぜ浄土教がうまれたか』(ノンブル社、2013)、『正法眼蔵第一 現成公按 私釈』(東京図書出版、2017)など。

上記内容は本書刊行時のものです。