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内部告発てんまつ記
原子力規制庁の場合
- 初版年月日
- 2018年3月
- 書店発売日
- 2018年2月26日
- 登録日
- 2018年2月8日
- 最終更新日
- 2018年8月30日
書評掲載情報
2018-04-15 | 東京新聞/中日新聞 朝刊 |
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紹介
原子力規制庁に横行する入札不正の内部告発てんまつ記
「これはマズイんじゃないか」と、私が呟いたのは、規制庁のHP(ホームページ)の調達情報欄で、「平成29年度核燃料輸送容器のスラップダウン落下試験に係る性能確認要素試験」という案件の入札仕様書を眺めていたとき、前年度の受注者の報告書で見かけた試験装置の図と全く同じものを見つけたからだった。(本書冒頭より)
目次
はじめに
1 不正の発端
2 不正の中身 その1 スラップダウン
3 不正の中身 その2 貯蔵のリスク情報
4 申告の行方
5 規制庁のヒトとカネ
6 申告の進展
7 規制庁の功罪
8 再稼働と子どもたち
9 内部告発の結末
あとがき
前書きなど
はじめに
原子力規制庁の技術基盤グループにおいて、入札の不正が横行していることに気づいたのは、2017年の7月のことである。そのうちの一件は、受注予定者が作った試験装置の図を入札仕様書に載せたもので、いわゆる発注者と受注者の間の出来レースであり、2件目は、受注予定者との打合せを入札期間内に行ったもので、いわゆる官製談合であり、どちらも公務員には厳しく禁じられている行為である。
1ヶ月後、私は原子力規制庁の申告調査委員会に内部告発を行った。本書はその事のてんまつを記したものである。
なぜ、技術基盤グループでは、そのような不正が横行しているのか。実は、技術基盤グループでは、その前身である原子力安全基盤機構の時代から、彼らの本来の業務である安全研究を外部の業者へ丸投げしており、その腐敗した体質が入札の不正の温床になっていたのである。
本書を書くことは、技術基盤グループにとどまらず、規制庁という組織全体についても、その「功罪」を見直すきっかけとなった。私は以前から、規制庁には見過ごすことのできない「罪」があると考えていたが、この機会に、それがどのような「罪」であるかを、「第8章 再稼働と子どもたち」に記した。
1953年のアイゼンハワー大統領演説「Atoms for Peace」を嚆矢とする日本の原子力開発は、その時に貸与された核物質の返却が始まり、いま、店仕舞いの時期を迎えている。
その間の開発の歴史は、もんじゅのナトリウム漏れ、ガラス固化体が作れない再処理工場、非常用電源が喪失した福島第一原発など、自滅の歴史であった。これは、開発側だけでなく、規制側の責任でもある。
今後も、規制側が自滅の歴史を歩むのか、その鼎の軽重が問われている。
上記内容は本書刊行時のものです。