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ぐうたら流 有機農業のコツ読本 西村 和雄(著) - 七つ森書館
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ぐうたら流 有機農業のコツ読本

発行:七つ森書館
四六判
276ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-8228-1891-3
Cコード
C2061
実用 単行本 農林業
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年2月
書店発売日
登録日
2017年12月11日
最終更新日
2018年3月9日
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紹介

 地球の生態系を維持するためには、「森林や草地が、普通に行っていることを基本として学び、それに少しわれわれの智慧をくわえて土壌を肥沃に維持する方法を考えればいいのだ」ということにほかなりません。永続可能な農業の基本は、再生可能な自然資源を巧く使う有機農業に尽きるのではないでしょうか。(「はじめに」より)
“面倒くさがり屋=ぐうたら”な京都大学農学博士が、有機農業のコツを伝授します!

目次

はじめに
 わかりにくい有機農業
 理科系は出世できない??
 有機農業の歴史
 有機農業の歴史
 有機農業の定義
 追加の説明

Ⅰ ぐうたら流 土を育てる
 1 日本の土壌について
    黒ボク(赤ボクもありますが)
    沖積土壌
    マサ土(真砂土)
    理想の土壌をつくる育土の技
    団粒構造とは?
    育土の秘訣
 2 植物の力を借りて土を育てよう~その1──マメ科の植物を使った育土について
    根粒菌の力を使って大成功!
    水が引かない水田で
    熱帯・亜熱帯のマメ科植物を播く
    マメ科植物の効果とは?
    マメ科植物を播いた効果は?
    べつのマメ科植物
    マメ科植物の使用後の感想と注意点
 3 植物の力を借りて土を育てよう~その2──イネ科の植物を使った育土について
    新しい土地を早く肥沃にしたい?
    大量の畜産排せつ物のうえにキングソルゴーを播種
    イネ科の植物を使ううえでの注意点
 4 土を育てるには時間がかかる?──土壌生物の引っ越し大作戦
    播き時に、ダイズかアズキを播く
    マメ科作物には、肥料も必要
    アズキの方がダイズより乾燥に強い
    トマト・ピーマン・トウガラシなどを植えるとき、ダイズを播種
    畦畔の土にいる土壌生物が畑に移動する
    “自然農法”が可能になる道が拓けます
    収穫が終わったあとの作物根は土の中に置いておく
    雨や雪に含まれるリンの量は、けっこう多い
    雑草ではなく、“野草”といいましょう
 5 草は草にかえし、木は木にかえす──有機物の分解時間について
    土壌生物が豊かになると土壌が膨軟にふくれあがった
    市販の完熟堆肥を使うときの注意
    人間のおもい込みがちな誤解
    有機物を堆肥にするときの原則が、「木は木に、草は草に……」
    有機物を堆肥にするためには栄養分が必要/炭素と窒素の比率(C/N比)

Ⅱ ぐうたら流 畑づくり
 1 メリットいっぱいの草マルチの効用と使い方
    野草をなくすには30年もかかる
    野草の生存戦略を知ること
    子葉が出たらすぐに抜く、つぎには地際から刈りとる
    刈り草で地面をおおう“草マルチ”をやってみましょう
    ヘアリーベッチを筋撒きしても良い
    草マルチの利点はたくさん!
 2 草の中で野菜がすくすく育つ⁈
    私の畑のやり方
    畑の石が沈んでゆく⁈
    畑の耕起は、苗を移植する時と根菜類を掘るときだけ
    草をおさえて作物を大きくする
    カマキリの卵と茶の花で積雪予測
    モグラ対策、鳥害対策
 3 ボカシ肥は自分で手作り
    ボカシ肥とは?
    ボカシ肥の作り方
    自分の畑の土着微生物を使う方法
    ボカシ肥を使うポイント
    C/N比をしっかり確かめましょう
 4 これぞ、ぐうたら流タネ播き「やんちゃ播き」
    何種類もの種をごちゃ混ぜにして播く
    私の畑で“やんちゃ播き”をやってみた
    野草は、早期発見・早期防除すること
 5 病虫害は防ぐのではなく、避けるべし
    どうすればうまく草をおさえられるのだろう?
    虫と病気、ケモノや鳥までやってきた
    作物を強くたくましく育てるしかない
    キャベツ畑のチョウを観察してわかったこと
    虫の防除方法

Ⅲ ぐうたら流 野菜栽培
 1 野菜栽培のコツは、野菜の生まれ故郷に聞け──原産地の環境を知ること
    カボチャのツルにトゲが生えているワケ
    葉や茎がツルツルなナスやネギは?
    “捨て育ち”作戦は大当たり!
    作物の原産地を知って、おだてて育てる
 2 輪作は有機農法でも欠かせない!──輪作することの意義と考え方
    なぜ連作障害がおきるのでしょう?
    輪作で連作障害をさける
    輪作のセオリは、まだ解明されていません
    畑に野草の種類が多くあると、土壌病害はおこりません
    遊び心が好きな方は、混作と間作を
 3 作物どうしにも相性がある
    作物が持つ個性の豊かさにおうじた土の育て方、栽培の仕方
    自然の中にこそ、有機農業のヒントがある
    日向が好きな作物と半日陰が好きな作物を同時につくる
    作物と育てる人との相性の良し悪し
    シェアハウスの同居人みたいな組み合わせの作物
 4 健やかに育てるための栄養バランス
    有機物は、“土の食べもの”
    健康で正常な、美味しい葉色はうすい緑色
    リンの過剰が引き金になり障害が発生
    鶏糞の多用はアブナイ
    リン資源をどのように使っていくか?
    土壌pHを簡単に調べる方法
    土壌の栄養バランスを考える
    窒素やリンの過剰投与がもたらすもの
    土壌分析でなにがわかるのだろう?
    土壌の酸度測定と加給態リン分析は、やってみること
    リンと窒素は、かなりの量が天から降ってくる
    日本列島は降水が多い
    その他の養分について

Ⅳ ぐうたら流 野菜別栽培のコツ
 1 春の菜園プラン
    ナス(ナス科)を育てるコツ
    トマト(ナス科)を育てるコツ
    トウガラシ・ピーマン類(ナス科)を育てるコツ
    スイカ・マクワウリ・カボチャ・キウリ(ウリ科)を育てるコツ
    トウモロコシ(イネ科)を育てるコツ
 2 秋の菜園プランの前に
    「秋の一日は春の十日」という言い伝え
    健康に育っている野菜の「土根性」!
    繰り返しますが、葉物野菜は葉色に気をつけましょう
    “胡麻化す”の意味とオリーブオイルの“胡麻化し”
    有機農業の土壌の温度は高めに維持されている
    葉菜類の葉を並べてみると……

 3 秋の菜園プラン
    ダイコン・カブ(アブラナ科)を育てるコツ
    キャベツ・ハクサイ(アブラナ科)を育てるコツ
    ニンジン(ユリ科)を育てるコツ
    ネギ類(ユリ科)を育てるコツ
    コマツナ(アブラナ科)を育てるコツ
    ホウレンソウ(ヒユ科)を育てるコツ
    ツケナを育てるコツ
    カブ(アブラナ科)を育てるコツ
    ソラマメ・エンドウを育てるコツ
    ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ(イモ類)を育てるコツ
4 有機農業の未来
    畜糞を大量に施用しておきた問題
    多量の窒素とリンを与えない方がいい、特に鶏糞はあぶない
    土壌の性質を見分ける簡単なテスト
    連環して複雑に絡み合っている生物の世界
    野草や作物に注視しながら農地を見てゆく
    有機農業は持続可能な世界をつくる

終 章 ウェルネスについて
 植物の根は、動物の腸を表裏ひっくり返した状態ではないだろうかか⁈
 連作障害を気にしないで、作物を健康に育てることができる
 有機栽培の最大の課題は“ウェルネス”です
 ウドンコ病のキウリに、牛乳が効いた⁈
 植物は、“考えている”のではないだろうか
 学問に、ジョーシキはいらない
 小腸の絨毛細胞のはたらきと微生物
 植物の根のはたらきと土壌の“ウェルネス”
 生物が共存する“環世界”という考え方
 人間は“環世界”の一員と考える

前書きなど

はじめに

 これから諄々と有機農業について説明してゆきますが、タイトルを「ぐうたら流」と冠したわけを説明しておきます。
 私は仕事がおそいので有名でしたが、1999年の暮れに致命的な癌がみつかり、寿命はあと2年といわれたのです。
 それが奇跡的に治癒して以来、私は生き方を変えたのです。
 イヤなことはせず、いやな酒は飲まずにゆっくり生きよう、そうおもい、ついでに有機農業がいつも批判される、手間がかかる、収量が低いなどの、不当な評価を改めてもらおうとおもったからです。

◆わかりにくい有機農業
 さて、有機農業っていったい何を指すのでしょうか? 
 じつは、定義がないのです。そこにこそ、有機農業がわかりにくいとか、どういう農法を指すのか?といった問いにたいして、解答が得られにくかった事情があったのです。定義──それは失礼ながら有機農業をこれまで支えてきた文科系の人たちには苦手な分野なのです。こんなことをいうと、抗議が飛んできそうですが、有機農業の世界では、理科系の人が、がんばっても見向きされなかったのです。

◆理科系は出世できない??
 有機農業におもしろいジンクスがあって、有機農業をめざしても理科系は出世できない(文科系はこの限りにあらず)のです。私は理科系ですが、このジンクスのとおり、出世できないままに大学の研究室の窓際で定年直前までのんびり勤めました。定年前に辞めた理由は、大学に飽きたというのが本音でしょうか。
 でも、窓際にいたのが幸いしたのか、北極圏から熱帯まで世界中で農の現場を見たり、指導したりすることができ、国内もすべての県をめぐっていろいろな土壌を見、作物や人との出会いを体験できました。
 いまは身体の故障もあって大好きな本とパソコンをあいてに、〝サンデー毎日〟ですが、これから私が有機農業に寄せるおもいや土壌、作物、そして人との出会いを語ることにしましょう。

◆有機農業の歴史
 長くなりますので、手短かにまとめておきます。
 1971年、農林中央金庫(農林中金)の理事であり、当時協同組合経営研究所の理事長であった一楽照男が呼び掛けて、日本有機農業研究会を結成したのが始まりでした。当時、名称としてorganic farming を翻訳して「有機農業」としたのです。これでいいだろうか? と黒澤酉蔵(現酪農学園大学、雪印乳業㈱の設立者)に聞いた時、彼が「『天地有機』という言葉があるから、それでいい」と、答えたと聞いています。黒澤は、田中正造の秘書をかってでた方でもあり、漢籍の素養がおありだったので、このように答えたのです。
 ちなみに、「天地有機」は、天地に機有のように、有と機の間に返り点をつけてよみます。こうして日本有機農業研究会ができました。
 種を播くのも機、収穫するのも機、この世界のすべてに機があるのだという意味でしょうか。これが有機農業という字の意味であって、「有機物を農地で使用するから有機農業なのだ」という意味では決してありません。
 じつは、私自身が有機物をおもに使って、農地の肥沃度を維持しているから「有機」という字がついているのだと、ずっと誤解していたのです。この点だけは、今でもよく誤解されがちなので説明しておきました。
 さて、さらに定義について考えてゆきます。有機農業とひとくちにいっても、実際の農法についてはさまざまな名がついています。この傾向は1971年の日本有機農業研究会の発会以来ずうーっと続いてきたといってもいいでしょう。
 ○○農法にはじまり、天地返し、電子農法から、個人名がそのままついた○○農法、××農法など、実に多彩です。こうしたさまざまな農法は、それぞれ個人のアイデアや得意技、際立った栽培法の特徴などを指しているために、特徴や個人の名を冠して付けられているのです。
 こうした農法をみていると、まさに現代科学から、トンデモ科学、そして錬金術に至るまで、すべて出そろっています。つまり有機農業の世界は、40年もたっているというのに、まだ戦国時代です。
 なぜ、ここまでややこしくなったのでしょう。その理由は有機農業に定義がないからにほかなりません。ならばいっそ定義をつくってしまい、すべて有機農業として話せるようにしたらどうかと考えたのです。さまざまな農法をまとめて有機農業を説明するには、まず耕地とか土壌の生態系を中心に据えることと、これから農業がどうあるべきかということもふくめて考えてみよう、そうおもったのです。

◆有機農業の定義
 土の中には、無数といっていいほどたくさんの生物がいます。
 バイオマス(生物量のこと)で比較してみましょう。
 地上の動物バイオマスは、人もふくめた哺乳動物から両生類・爬虫類などを合わせた量を1とすると、地中にいる動物(モグラ・ジネズミ・ミミズ・センチュウなど)のバイオマスは同じ面積で地上の10倍になるのです。これに加えて地中の微生物バイオマスは100倍にもなるそうです。人間なんて高が知れたもの。私たちが見えていないだけで(じつは見ていない)ものすごい量(数も種類も)の生物がうごめいているのです。そこで次のような定義を考えてみました。

 有機農業は、農地および農地を取り囲む生態系に賦存する自然資源(土壌中の生物・土壌および有機物と地上の生物など)を有効かつ効率よく利用することによって作物生産を可能にする農業形態である。その目的は、作物を健康にすることで作物自身の抵抗力をたかめ、あるいは生物起源の材料をつかって病虫害から作物を防御することを基本にし、農地生態系が自律的に機能するような栽培・圃場管理などの方策を構築して、持続可能な農業生産をしようとすることにある。したがって再生利用が可能な自然資源を存分に使いこなすことが求められる。

 ざっと、こんなことになるでしょうか。でも、むつかしいものですねえ。定義をしてしまうと、その定義に当てはまらない有機農業は除外されるかもしれません。だからあまり厳密にくくらないほうがいいでしょう。

◆追加の説明
 地中のバイオマスを支えている生態系を円滑に維持するような方法を身につければいいのだということ──すなわち、生態系を円滑に維持するためには、人工合成化学薬剤(農薬と化学肥料)の類いは生態系を攪乱する恐れがあるために、使用しないのだということ。これが基本です。
 では、どうやって生態系を維持するための養分やエネルギーを補給するのでしょう?
 その方法とは、「森林や草地が、普通に行っていることを基本として学び、それに少しわれわれの智慧をくわえて土壌を肥沃に維持する方法を考えればいいのだ」ということにほかなりません。
 そして、将来にわたってずっと続けることができる、永続可能な農業であること。
 そのための基本は、再生可能な自然資源(内容はのちほど説明)を巧く使うことに尽きるのではないでしょうか。
 こうした意味では、日本の自然資源はとっても豊かなのです。
 現代の科学技術は、石油・石炭のような再生不可能なエネルギー資源を使いまくって、炭酸ガスを大量に排出し、はては危険な放射性元素まで生み出すような技術が基本になっていますが、将来のことを考えて、再生不可能な資源をできるだけ使わずに、農業生産活動を続けるのが有機農業の基本となる考え方なのです。
 そんなこと不可能だよ!
 肥料も与えないで作物が育つわけがないじゃないか! 
 こんな反論が次々とやってきそうです。
 でも、考えてみてください。山の木も草も、川の土手の草でも、だれも肥料やってないのに、なぜ育っているのでしょうね? 
 そんなこともわからない方が,肥料もやらずに育つわけない! なんて文句をいうのは筋違いだとおもっています。

著者プロフィール

西村 和雄  (ニシムラ カズオ)  (

 1945年、京都市生まれ。京都大学農学部修士課程修了。
 同大学フィールド科学教育研究センター講師を経て、2007年、退職。専攻は、植物栄養学、植物地球化学。京都大学農学博士。現在、有機農業のアドバイザーとして全国を飛び回っている。

上記内容は本書刊行時のものです。